暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

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Room401制作リポート3

Room401という曲の制作過程をリポートする第3段。曲中の大きなパーツ(AメロとかBメロとか)はほぼ見えた。あとは曲がどのように構成されるか、を考えるわけだ。しかし大きなパーツをざっくり並べて聴いてみると、細かいところが気になってくる。今回具体的に気になったのはメロディの後ろでハーモニーを担う楽器はエレピで良いのか、またヴォイッシングはこれでいいのか。

<ステップ6 仮メロディを入力する>
本当はハーモニーを担う楽器だのヴォイッシングの件は曲の構成が全部見えてから、アタマから終わりまで通して弾く時に気にしても間に合う問題だと思うが、気になっちゃうのでしょーがない。メロディとケンカしないヴォイッシングを考えるために、仮メロディを入力してしまう。鍵盤走者服部がピアニスト田中緑嬢に作る曲なのに、この曲のメロディはアコースティックギターが担当する(笑)。でも今ギターにマイクを立てて演奏するのは労力も時間もかかりすぎるので、プラグインサンプラーexs24をもうひとつ立ち上げて鉄弦アコースティックギターのプログラムを選択。改めて聴いてみると、ずいぶんゴリゴリした粗っぽいサンプルだ。後処理の腕の見せ所かもしれないが今はとりあえず鳴ってりゃどうでもいい(笑)。16分音符のヘンなシンコペーションの連続で作った本人ですら弾きづらい。弾き終わったらちょこちょことヴェロシティ値を修正してEQ後コンプレッサーをかける。まぁいいや。

<ステップ7 ヴォイッシングを考える>
実はメロディをアコギでやろうと考えたのはこの作業に入ってからで、一昨日くらいまではピアノで演奏しようと思っていた(だってほら、鍵盤奏者の会話から生まれた曲だし)。しかしメロディと伴奏のことをつらつらと考えていたら、生ピアノの音でガツーンとコードを弾いて、生ギターでクールに(笑)メロディを弾くというイメージが。ということで生ピアノで伴奏するぞ、と。またまたexs24でも良いのだが、きちんと処理するとYAMAHA S90XSのピアノのプログラムはかなり自分好みに録れるので、S90XSに登場してもらうことにした。S6ってピアノサンプルのやつ。伴奏の指の形とメロディがケンカしないところを探りつつ、3回くらい録りなおす。良さそうなところが見つかって一段落。

<ステップ8 Bメロも弾く>
アレンジの観点。AメロとBメロのコントラストを鮮やかにしたいので、Bメロは生ピアノでメロディを取ることにする。いざ最初の頃に録ったエレピによる伴奏を再度生かしたら(消さないでミュートだけしておいたのだ)、この切り替えも中々有効だ。エレピに伴奏させつつ生ピアノがメロディを弾くことにした。やっぱりシンコペーションが難しくて何度もリテイク。

<ステップ9 ドラムのフィルをもっと>
ここまでパーツが出そろうと要所要所でドラムがフィルを入れないのが歯がゆくなってくる。いくつかフィルを入力する。続く!

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「Room401」制作リポート2

Room401というオリジナル曲の制作過程をリポートするシリーズ第2段。イントロ〜Aメロ〜Bメロ〜Aメロ戻りまではスケッチ終了。特に断り無く「スケッチ」と表記しているが、DAWを使用した音楽制作のごく初期の作業を私は絵を描く際のスケッチのようなものと捉えている。素早く対象(曲)の本質を捕らえ、作者なりに理解するためのエスキースであると考える。もっともどこまでがスケッチでどこからがポストプロダクションなのか、昨今の音楽制作ではますますその境目は曖昧なのだが。

<ステップ4 イントロを肉付け>
とりあえず曲全体のサイズを明らかにするよりも、曲のパーツごとのディテイルを明らかにしたくなってきた。とりあえずイントロに加えたいフレーズを入力してしまう。金属系の音色が良いのだが棚引いて消えるふわっとした音色も同時に鳴っていてほしい。最終的にふわっとした音色はハードウェアアナログシンセで弾き直すかもしれないが、手っ取り早く金属系もパッド系もプラグインシンセで。せっかくの独立した音源をそれぞれ入力してのレイヤーサウンドなので、デュレイションはそれぞれに工夫した。具体的には金属系はさっさと退場、パッド系のトップノートをぎりぎりまで伸ばす。

例えばこの「音をどこまで伸ばし、どこで切るか」ということは演奏上もアレンジ上も大変重要な問題である。ライヴでは無意識にやってることだが、ことレコーディングだと急に頭を悩ませることがある。できるだけライヴとレコーディングの境界線無く演奏できるようにしていきたいものだ。もっともシンセサイザーの場合、音の切れ方(発音の停止)そのものまでプログラムという作業に含まれるのでやっかいだ。きちんと設計して演奏し、音色を差し替えたら結局弾き直し、なんてことは茶飯事である。この「いつでもどこからでも以前のプロセスに立ち戻れる」のはDAWを使った音楽制作の最大の利点であり問題点である。テープメディアの頃は「弾き直し」にものすごく抵抗があったものだ(笑)。

<ステップ5 リズムセクションの手直し>
エレピのハーモニーとイントロのパッドなどが鳴り始めると、そこそこ曲の厚みも増してくる。すると気になってくるのがドラムの「他人事感」(笑)である。そりゃそうだ。音程のあるパーツがまったく鳴っていない状態で打ち込んだドラムなのだから。またこの曲は生ドラムっぽい「てきとー感」が重要になってくる。数小節の繰り返し的な「律義さ」は曲の温度を悪い方に下げることになる。さてこれをどうしよう。キックとベースのコンビネーションはざっくり打ち込んだ状態でもそんなに悪くない。ハイハットとタンバリンがケンカしているように思えたのでパンニングと音量調整で分離させる。とたんにスネアがくっきり聞こえるようになった。

私が愛用するAddictiveDrumsというプラグインドラム音源の音色的クセなのかもしれないが、やや中域がトゥーマッチな印象があり、この状態にキット全体に不用意なコンプレッサー処理などしようものならスネアが遠くに行ってしまうことが多い。実は生ドラムを録音してもこういう状況になることがあり、逆に言うとaddictive drumsには生ドラムの音質調整の知識・技術がそのまま転用できるのだ。とは言え曲調やいっしょに鳴っている楽器との兼ねあいがあるので、いつもと同じEQカーブにすれば楽勝!みたいなことでは決して無い。ともあれスネアが前に出てこない状況を打破すべくセット全体の中域を広い範囲でややカットし、スネア単体のEQは単純にハイ上げしてみたところ、まぁ許せる状態にまでなった。

この状態でどうしても必要なフィルなどをいくつか打ち込んで何度も頭から曲を聴いてみる。これでようやくドラマが生まれたような気がする。DAWを使うようになって以降、20年近くかけてゆっくりと音楽制作にかけられる集中力や想像力が衰えてきている(老化じゃない!と思う)。ここまでパーツを揃えてやらないと全体の構成をイメージできにくくなってきた。負け惜しみで言うが、ここまでくれば全体を把握するのは早い。必要な音色や音数もだんだん見えてくる(聴こえてくる)。ここからが腕の見せ所である。というところで次回に続く。

| レコーディング | 20:06 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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「Room401」制作リポート1

渇望していたオーディオインターフェイスMetric Halo Mobile I/O 2882がようやく手に入ったというのに、これと言った制作予定も無いのが玉に瑕。音質とルーティングのチェックも兼ねて何か作ってみようとMacに向かう。今年の旧暦正月、ミュージシャン仲間との新年会でピアニスト田中緑嬢と作曲の約束をしていた「Room401」にいよいよ手を付けるべき時が来たのだ。

この曲のタイトルはラリー・カールトンのroom335のパロディである。もちろん動機も音楽的モティーフも全く異なるが、「カッコいいインストナンバー」というカテゴリーは同じである(志だけは高い)。Aメロはすでに頭の中にあって、折りあればピアノでつらつらと弾いていた。ハーモニーもできているし、ドラムやベースも何となく頭の中で鳴ってはいる。そんな状態を長いこと過ごし、先日Aメロ以降の展開もようやく着想を得た。このエントリーでは非常にあやふやなままの曲をどのようにスケッチしていくか書いてみる。

<ステップ1 ガイドとなるリズムの打ち込み>
作家によって千差万別だと思うが、私の場合は何はともあれリズムである。とにかくこの段階ではクリックに毛の生えたようなものでもいいから、ハーモニーとメロディをスケッチできるだけのものを打ち込む。具体的にはプラグインドラム音源addictive drumsを使って3点セット、すなわちキック、スネア、ハイハットで2〜4小節程度のパターンを作ってしまう。この時注意すべきはキック。手順としてドラムの後に打ち込むことになるベースとのコンビネーションを考慮する必要がある。ベースとキックのコンビネーションはアレンジ過程の最後の最後まで悩んでもいいくらい重要な要素なので、このラフな打ち込みの段階でキックの音数を多くしてしまうと結局は間引く手間が増える。頭の中に鳴っているメロディの本当に大事なシンコペーションくらいは意識して揃えても良いが、ドラム単体でカッコよく聞こえるような工夫はこの段階ではあまりしない。

今回のRoom401ではこの段階でタンバリンのシェイクとコンガのループをStylus RMXで加えている。シンプルなドラムパターンによるグルーヴに程よく幅が生まれて気分も出ると言うものだ。

<ステップ2 ハーモニーの打ち込み>
次にハーモニー。生ピアノがいいのかエレピがいいのか、はたまたシンセパッドがいいのかこの段階では判然としないので、もっとも手っ取り早く音が出て再現性も高いプラグイン音源evp88のローヅを使う。後々入力するベースとケンカしないようにヴォイッシングには注意が必要だが、この段階ではとにかく曲の全貌を見渡すことを最優先に演奏する。

<ステップ3 ベースの打ち込み>
さてベースに移る。この曲はリフと言うほどではないが、曲の印象をある程度決める役割をベースは果たすはずなので、それなりに慎重に打ち込む。この時優先すべきはベースのフレーズで、キックとうまくかみ合わない箇所があればキックを削って行く。漠然とスラップベースが欲しいと思っていたので、最終的に自分で生ベースを弾き直すことを考慮してプラグイン音源のアナログシンセで適当なベースプログラムで弾いてみたが、これが見事にハズレ(笑)。結局プラグインサンプラーexs24のスラップベースサンプルで弾き直す羽目に…。

ここまでのデータは実は曲全体ではなく、最低限考えられるイントロ、Aメロと合計してもせいぜい16〜32小節くらいである。またメロディも入れていない。リズムセクションとハーモニーだけで何となく全体が見えてしまったからだ。そうこうするうちにようやくBメロ的な展開も見えたので、ドラムとパーカッションループだけをコピー&ペーストで延長し、Bメロのハーモニー、ベースを入力する。これでなんとなく曲の骨組みは見えたことになる。次回は肉付けをしていく過程を書いてみる。

| レコーディング | 21:46 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

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5月19日・旅団ライヴ

旅団、ライヴやるんです。
Live_Info_20120519.jpg 
メンバーでもバンド名を読み間違う人がいたので
ローマ字でふりがな振っておきました

2012年5月19日(土)

Jazz inn Relaxin'
宮城県仙台市青葉区一番町2-7-3
サンモール日泉ビル4F
TEL:022-223-1106

Start 20:00
MC ¥2,500(with 1Drink)
2ステージ

今回は都合で高橋督(Key)と斎藤寛(Per)が参加できず。そこで「仙台音楽界の隠し凶器」こと水沼慎一郎とアンビエントな音を出させたら仙台一のDJ、DJ Korter君をゲストにお迎えします。

及川文和(Dr)
森木啓太(Bs)
佐久間康丞(Gt)
服部暁典(Harm)
with
水沼慎一郎(Pf)
DJ Korter(Turntables)

皆様こぞってご来場を。お待ちしております。

| ライヴ | 23:07 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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新しい音楽

元来好きなものをとことん愛好する性質であり、新しいものにはどちらかと言うと懐疑的な態度をとる服部。しかしこと音楽に関してはそれじゃまずいだろという気になるほど、新しい音楽を聴かない生活が続いている。

自分なりにその理由を考えてみるがはっきりはしない。少なくともヒットチャートものをつまみ食いする程度では、ダンス系音楽に新しい要素はほとんど無い。最近思うのは「結局のところ印象的なリフがあればダンスはOK」。LMFAOなんかが聴いてて楽しいのは秀逸なリフがあるからだ。それってつまりディープパープルやツェッペリンと同じなわけで、そういう意味で60年代と本質的には大差無いなぁなどとも思う。


これ、好きだなぁ

ダンスやロックと言った相当定型化されているジャンルはそれもアリだろうし、聴き手もそれを求めている。ダンス系とは正反対に位置するであろうアメリカの歌い上げ系チャート(そんな名前のチャートは無いが、服部が勝手にそう思っているバラッドや変形したカントリーなど)も、やはりそのジャンルでの定番パフォーマンスが多い。歪(いびつ)だったり飛び道具的だったりするアイデアにわっと飛びつくことはあっても、結局は定番のものに回帰するように思える。

定番とはつまり、コンテンポラリー音楽のフィールドではメロディとハーモニーとグルーヴの3つであり、これはコンテンポラリーがコンテンポラリーである限り不変ではないかとすら思える。突き詰めれば本当に大事なのはその3つしか無いのだ。

以上のようなありきたりな結論に至ったのは、たまたま見ていたテレビ番組「アメリカン・アイドル(のシーズン11)」の影響だと思う(リンク先はネタバレがあるので数週遅れの日本版を楽しみに見ている人は見てはいけません)。全米オーディションを経て投票による優勝を目指すアメリカ版「スター誕生」なのだが、出てくるアマチュアシンガーがとにかくべらぼうに歌がうまい。半年かけて一人の優勝者を決めるために毎週趣向をこらした課題をこなすのだが、特に興味深かったのはスティーヴィー・ワンダーの曲が課題だった週。「Knocks me off my feet」や「Superstition」みたいなエバーグリーンなナンバーをオーソドックスに、あるいはぴりりとひねりを効かせてパフォーマンスするわけだが(この場合本当に偉いのはアレンジして演奏しているハウスバンドの方だが)、歌い手が替わっても、演奏する楽器が替わっても、スティーヴィーの曲の美しさや躍動感は変わらない。むしろその普遍性が際立つのには驚くしかない。メロディとハーモニーとグルーヴの勝利である。英語がわかれば本当はこれに歌詞という要素も加わるのだろう。


Jermain Jonesさんによる「Knocks me off my feet」


Phillip Phillipsさんによる「Superstition」

こういうケースを体験すると、改めてコンテンポラリー音楽のライブラリが膨大になっていることを感じずにいられない。そしてまだまだ「未知の気持ちよさ」が埋蔵されていると信じたくなる。定番をきちんと理解した上で、私はそういう音楽を作る人になりたい。まだまだ修業中である。

| 音楽雑感 | 20:34 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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