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暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

2010年02月 | ARCHIVE-SELECT | 2010年04月

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違う意味で難しい

しかしそれにしても、サンプリングによるRhodesを鳴らすのは難しい。

2010年現在、レコーディングに於ける本物じゃないRhodes(=サンプリング音源)を「本物らしく録音すること」はそれほど難しいことではないと思っている。なぜかというと各楽器メーカーのサンプル品質と発音品質が著しく向上したからだ。もちろんただラインでつないでPT回せばそれでOKかというと決してそうでもないだろうが、きちんと工夫を凝らして録音・処理すれば本物と聞き間違うような音で録れると思う。

難しいのは生で演奏する場合だ。例えば私も大好きなスーツケースというタイプは、そもそもスピーカーキャビネットがセットになっている。つまり、生ピアノと同じく弾き手の耳に届くためのプロセスとして、ちゃんと空気を震わせているわけだ。ステージピアノタイプはどうなのかって?いや、まぁ、それは(笑)。しかし空気を震わせるという要素は、金属のバーをぶっ叩くという、Rhodesの野蛮な発音機構と相まって非常に重要だと思う。

SRオペレータからすれば、そりゃラインでもらえた方がミックスは楽だろうし、気持ちはよ~く解る。しかし「楽器」ならばまず最初に空気を振るわせるべきだと私などは思う。微妙な話、弾き手としては、ライン送り>モニタースピーカーという経路よりも、アンプ鳴らし>マイクで収音>必要ならモニタースピーカーで補強という経路の方がしっくりくる。え?オレだけ?

前置きが長いのが私の文章の特徴だが、さてではなぜ生演奏環境でサンプリングRhodesを鳴らすのが難しいかというと、多くのサンプルが加工済みっぽい音質だからなのである。素のRhodesの(はい、ここでみなさん電源を入れる前のRhodesを弾いた時の、あの音を思い出してください)あのまろやかで、ころころと流れるような、でも芯のある、意外とお行儀が悪い感じのあの音は、レコーディングに於ける様々なプロセスを経由して、私たちが良く知る、あの愛すべきサウンドになっていく。PCM系シンセに収められた「Vintage EP」などと名付けられたプリセットサウンドがそういう音になっているのはある意味当然である。弾いたことが無い人はレコーディングというプロセスを経た音がRhodesだと思っているわけだから。だが生Rhodesの音を知っていると、そういうサンプルRhodesの音での演奏を聴いている内に「なんだか大人しすぎないスかぁ~?」と思えてくるのも事実なのだ。

元波形と同じく、シンセ内臓のイフェクト類も非常に高音質、高品質化した。確かにシンセのプリセットプログラムだけでもRhodesらしく弾くことは可能だ。本物らしいかどうかという話と同時に、しかしそれは誰でもそのクオリティを手に入れているということでもある。差別化したければやはり本物のRhodesを手に入れることはもちろん、シンセであってもdynacompやSmallStoneなどの定番イフェクトを試してみるべきだろうし、マッチングの良いアンプを探してみるのも良いだろう。話はそれからだ。

しかし、しかし、しかし。本当に重要なのは、あの音を生かすヴォイッシングで弾けるかどうか、なんだよな~!難しい!
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