暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

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7万円の分水嶺・YAMAHA S90XSのUSBポートは修理できるか?#1

筆者のメインマスター鍵盤、YAMAHA S90XS。クルマで言えば国産車の最高峰ブランドであるレクサスみたいなもので、全方位的に優秀な万能シンセである。筆者は「ヘンだがハマるとずば抜けた存在感を発揮するシンセ」こそ良いシンセだと思っているが、現実的にはそういうシンセだけではこなせないライヴ現場もある。「高品位88鍵盤」「汎用性の高い高音質の音源」という2点で絞っていくと、S90XSは前述の通り良いシンセである。

ひとつだけ(ホントは他にもある)納得できないのは、本体での音色エディット機能には制限がかけられていることである。フィルターやEGのアタックやリリースと言った「演奏している最中にも操作する可能性が高いパラメータ」には本体上でアクセスできるのだが、深部のエディットはUSB接続したコンピュータ上の専用エディターで行うしかない。古のDX7などではMac上で動作するエディターソフトに涙を流しながら感謝したものだが、最初からその方法を前提とされると逆に不満を覚えるのだから、人間とはわがままな生き物である。私は古い人間だから、本体上でエディットできないパラメータがあること自体に違和感がある。どんなに階層が深くなろうとも、本体だけでフルエディットできる方が良い。

「良い」と断言するには理由があって、その命綱たるS90XSのUSB端子が不調に陥り、エディットができない状況に今いるからである。

まぁ前述のとおり深度の浅いエディットなら本体上でもある程度はできるため、シンプルなライヴで使う分には何とかなっている。またDAWへの入力はMIDI接続すれば最低限のことはできる。しかし「何とかなっている」ので放置されているとも言える。もうひとつ修理を躊躇している理由は費用がバカ高いのである。工賃込みで7万円くらいかかるらしい。それなら別の楽器を買いますよ。

とは言え不便は不便である。そこに登場したのがKさんである。彼は技術者でありキーボーディストでありギタリストである。しかもかつて某楽器メーカーの修理部門で働いていた剛の者である。S90XSのことを話したら「見てみましょうか?」とおっしゃってくださった。7万円の分水嶺である。恥も外聞もなくお願いすることにした。

忙しいKさんがスケジュールを合わせてくださり暁スタジオに降臨。さっそく蓋を開けてみた。

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大量のネジを回し基板に到達。USB端子が付いている基板はDM基盤と言い、要は心臓部であった。

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取り付けている基板そのもの、ハンダの接合部分などに異常は見られない。導通をチェックすると驚いたことに問題無いのである。念のためUSBケーブルを挿し、接合点とケーブル先との導通もチェックしたが、やはり問題は無かった。半信半疑で接点復活剤を塗布し、仮閉め。S90XSをチェックモードで起動し、基板認識チェックを行った上でUSBポートチェックを実行。期待は高まったがS90XSの液晶パネルには無情にも「NG」の文字が…。

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テストモードのUSB To HOST端子チェックページ

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チェック中でーす

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ダメでーす
結論から言うと、この夜に復活は成らなかった。USBケーブルを換えてのチェックや、通常接続するMac ProだけでなくMacBook Proのシステムにも接続してみたが、S90XSはビタ一文認識されなかった。ここまで来ると残る要因は基板上でUSB関係を制御している128pinのICチップと考えざるを得ず、正規の修理では特定の基板の特定のチップ交換なんて作業はやってくれないので、我々に残されたのは基板丸々交換=7万円という悪夢のストーリーしか無い…。

「いや、かくなる上は、ですね…」。Kさんによると、USB端子の導通チェックをした時に1箇所だけ電圧が弱い接点があったと言う。もしかしてUSB端子そのものが粗悪な可能性がある。ダメ元でこれを交換してみましょう…とおっしゃってくださった。現在部品を探してくださっている。

失意の内に帰宅したKさんからすぐに電話があり、「差し支えなければS90XSを初期化してみてください」と。なんとマメな方か…。感動しつつ初期化したものの、状況は改善せず。次回作業日は未定なれど、刮目してリポートを待て!

※で、どうなった?USB端子そのものを交換すると言う禁じ手を決行するリポートはこちら
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