花巻在住のキーボーディストにして
田舎laboオーナー高橋ごんさんは、平行して行っているいくつかのバンド活動の他に、打ち込みトラックを流しつつ即興的な歌詞を乗せて歌う「弾き語りファンク」の達人であった。だがファンクというジャンルが人間由来のグルーヴと不可分である以上、生バンドで、随意な構成で、自作を展開したいと思うのはある意味当然なのだった。GON and The Family Soulは、そんなファンクガイ高橋ごんさんの僕(しもべ)バンドなのだった。
会場となった戸塚森森林公園
もっとも集められたのは盛岡や北上など岩手県で活躍する手練れたちばかりだから、10やってくださいと言われれば15とか20返す面々。ごんさんとはSNSなどを通じて、主に機材面や音楽概念の「会話」をしたことは何度もあった。そして音楽的バックグランドや、熱量が近いことはなんとなく感じていた。なので、今回の「バンドやるからやりたい人はメッセージください」というSNS上の書き込みを見て、どんな人とやるのかまったくわからないのに、仙台在住ながら手を上げたのだった。
野外ステージ全景
リハ風景1回だけ参加できたリハーサルで音を出してみて、上記のこと、つまり「10を求めれば20を返す」とか「熱量が近い」を生で確認したわけだが、音楽的にチャレンジングなことをしたわけでは決してない。ファンクという音楽は、ピュアにやろうとすればするほどシンプルになっていく。音楽を演奏し慣れると、シンプルなことをひたすら繰り返すことに飽きる…というか、技癢(ぎよう:自分の技量を見せたくて、うずうずすること 大辞泉より)を押さえ切れないというか、とにかく何かアイデアを加えて複雑な方へ持って行きたくなってしまう。その段階を超えて、ひたすら同じパターンを繰り返す、あるいはメンバーやリスナーが気付くか気付かないかわからない程度にスパイスを振りかけ、すぐに何事も無かったかのように元の演奏に戻るようなことをやっていると、何やらある種のゾーンに入る感覚がある。
会場で販売していた「きたかみ牛100% Bigハンバーガー」600円で腹ごしらえ。
これね、トマトがバーガーの最下段にあることに注目。
食べやすいのよ、結果的に、この方がひとりの演奏者としてはそれはそれで意味があることだが、リスナーにとってはそんなことはどうでも良いことだ。楽しいか楽しくないかのふたつにひとつである。ごんさんのすごいところは、ともすればミュージシャンのマスターベーションになりそうなシンプルな演奏を、エンターテイメントとして客席に届ける役目を多いに果たしているところだ。またメンバーが「言葉を楽器として操っている」という意味のことをコメントしていたが、ファンクグルーヴに乗りにくい日本語を、無理やりにだがグルーヴさせていたところも、やはりすごい。弾き語りのキャリアは伊達じゃない。
さぁ、演奏するよ!という時にご覧の豪雨。
でもお客様はシャワーでも浴びてるかのごとく、
雨の中ノリノリ(死語)だった。
そして2曲目の途中、夏の青空にまさかの激変バンドメンバーも、ミュージシャンシップ溢れるナイスな人々ばかりだった。初めてお手合わせさせていただいたが、つまるところ、「別にオレが今弾かなくても全然OKじゃん」と思える音ばかりだった。そういうメンバーの中で音を出していると、ふと、誰に向けたわけでもない、つぶやくように弾いたフレーズに反応してくれるメンバーがいたりして、音楽のワンピースに自分がなっていることを実感できる。そういう安心感と、ごんさんを通じて客席とも気が流れ合っている感覚がいたる場面で実感できる。冒頭で書いた「楽しいと思える」理由は、その多幸感にあるのだった。とどのつまり、音を介して誰かと理解し合えている、ユナイトできていることにしか、私は音楽の意味を感じられないのだった。
かっちゃんさん、くどうさん、まっつくん、おーみさん、ねこさん、ちばさん、そしてごんさん。このライヴの終演は終わりじゃなくて始まりだぜ!と言っておく(笑)。イベントの主宰者、関係者のみなさまにも感謝。土砂降りの中腕を振り上げてくれたお客様、ありがとうございました。
あーたのしかった。