2013.08.10 Sat
現代のセレブアナログシンセ・Prophet'08を試奏した!
時間潰しのつもりで立ち寄った(失礼)島村楽器仙台イービーンズ店にて、まさかのトンデモシンセに邂逅できた。試奏できたのは15分程度だったが、ものすごく感動した。ちょい乗りならぬちょい弾き試奏の感想文だが、書かずにはいられない。おつきあいいただきたい。
そのシンセとはDave Smith InstulmentsのProphet'08である。結論から書くが、こいつはシンセサイザー界のロールスロイス、もしくはベントレーである。本当のセレブリティのための超高級車を真っ先に思い出す至高の出来であり、「楽器」である。電子楽器の権化シンセサイザーで「これは楽器だ!」と直感できるものは少ない。だがProphet"08の場合は直感できてしまうのである。今回は「音」と「ユーザーインターフェイス」というふたつの観点から書く。モニターはベリンガーのパワードスピーカーが目の前に一発という環境。
1.音について
同社のフラッグシップモデルであるProphet 12と違い、'08は純アナログシンセである。結局このジャンルは技術としては完成しているので、使用する部品精度で差が付くと思っている。いくつかプログラムを選んで弾いて(聴いて)みると、「組み付け精度が高い」とか「緻密」とか、電子音の向こうに並々ならぬ技術力の高さが垣間見える。とにかく音の密度が濃い。ぜひスペクトラムアナライザーなどを通して目でも見てみたいものだ。小さなボリュームで聴いていても波形のビビリまでわかるような気がする。これならオケの中でもしっかり存在感を示せるだろう。我々がKORG M1以来さんざん聴いてきたPCMシンセが出す音の「密度」とは、サンプリング技術とDAコンバータの性能に左右される再生音だった。それらPCMシンセにも良品はあるし、「楽器」と直感できるものもある。が、Prophet'08の出音は「今、機械がオシレーターを発振させている!」「ジェネレーターが仕事をしている!」と実感できるものなのである。これはPCMでは味わえない感覚であり、大勢のシンセ弾きが久しく忘れていたと思われる歓びである。
いや、技術力に関して言えばメイドインジャパンはどこにも引けを取らない。だが国産シンセの音を霞ませてしまうProphet'08の出音を性格付ける要因は、実はもうひとつあると思っている。それはチューニングだ。音程のことではない。最終調整のことだ。部品の選別や回路構成など、技術者が組み立てる前から構想できる部分はとても多いと思うし、シンセは機械なのだからその構想どおりに発音すべきだとは思う。しかしProphet'08の音を聴いていると、スピーカーやヘッドフォンで「耳を頼りに」調整された印象がある。結局理論値よりも感覚として気持ち良いかが、ちゃんと考慮されている印象があるのだ。Prophet'08を楽器足らしめている少なからぬ要因は、多分この部分なのではないか。そして香水や清涼飲料と同じで、特殊な才能を持った人間だけが行える領域によって決定づけられると思うのだ。
2.ユーザーインターフェイスについて
具体的に鍵盤の弾き心地が抜群に気持ち良い。これを弾いてしまうと国産の安シンセのライトウェイト鍵盤など遊びだらけで「指の毒」だ。反力、落ちる量、発音のタイミング等々、どれも難癖の付けようが無い。シンセパッドからピアノっぽい音やベル系の音、アタックのきついザクザクした音まで、鍵盤を落とす速度と発音するタイミングが実に気持ち良い。これはアナログ・デジタル関係なく楽器らしいシンセに共通の美点である。
アナログシンセのシンボルとも言えるつまみ類の操作感も素晴しい。つまみの回転抵抗が生理的に気持ち良いだけでなく、パラメーターの変化速度も同様に気持ち良い。もちろんこれらがシンクロしているからこそでもある。
他にも細部に至るまで詰めているなぁと思うのは、パネルプリントのフォントが実に見やすく美しい点である。また面白いと思ったのは、発音しているオシレーターを8つのランプが点灯してリアルタイムに示してくれる機能だ。8音ポリって意外と演奏にシビアにならざるを得ない。同時に8音で如何に効果的にボイシングするか、フレージングするか、という演奏者としての知恵を使う楽しみも味わえる。
とは言えひとつだけ腑に落ちない点があった。それはピッチベンドとモジュレーションのホイール設置位置である。画像を参照いただきたいが、実際に操作する際に意図せず低音部の鍵盤に腕が触ってしまい、ん?なんで低い音が鳴ってんの??という瞬間が15分で2度あった。デイヴ・スミス大先生がここの部分だけ考えなしに配置したとも思えないが、見た目通りやや使いにくい。ただし両ホイールの操作感は言わずもがな、実に気持ち良いものだ。
島村楽器仙台イービーンズ店ではこの個体が231,000円。絶対値としては決して安くないが、死ぬまで使えると思えば大バーゲン価格だ。はっきり言ってこのエントリーを読んだ誰かが自分より早くこの個体を買ってしまうのでは…?と思い、アップするのは少々迷った(笑)。まぁでも自分はデジ・アナハイブリッドのProphet12を買うだろう。いや、S90XSがあるんだから、純アナログこそ持っているべきか…???と心は乱れるのである。いやはやともかく、買う買わないはひとまず置いて、素晴しいシンセサイザー?Motifがあれば取り合えず大丈夫でしょ。いやいや、JUPITER-80しかないじゃん!おまえらわかってないなぁ、NordLeadだよ!等と言う御仁にこそProphet'08を弾いてもらいたい。レクサスだけが高級車ではない。メルセデスの…、いや、さらにその上を行く由緒正しい工業製品のセレブリティと呼べるシンセが、確かに存在するのだ…!ということを、指先と耳で感じ取れるはずだ。
※島村楽器イービーンズ店は試奏にすごく協力的なお店だ。たまたま対応してくださったのは店長さんだと思うが、この人の気配りはこれまでも素晴しかった。楽器を買うならこういう人から買いたい。こういう店員さんが私の知る限りあと4人ほど仙台にはいる。ネット購入で最安値を自慢するのもいいが、きちんと楽器を使いたい人は信頼できるお店と店員さんを見つけるところから始めて、フェイストゥフェイスで購入すべきだと思う。
そのシンセとはDave Smith InstulmentsのProphet'08である。結論から書くが、こいつはシンセサイザー界のロールスロイス、もしくはベントレーである。本当のセレブリティのための超高級車を真っ先に思い出す至高の出来であり、「楽器」である。電子楽器の権化シンセサイザーで「これは楽器だ!」と直感できるものは少ない。だがProphet"08の場合は直感できてしまうのである。今回は「音」と「ユーザーインターフェイス」というふたつの観点から書く。モニターはベリンガーのパワードスピーカーが目の前に一発という環境。
1.音について
同社のフラッグシップモデルであるProphet 12と違い、'08は純アナログシンセである。結局このジャンルは技術としては完成しているので、使用する部品精度で差が付くと思っている。いくつかプログラムを選んで弾いて(聴いて)みると、「組み付け精度が高い」とか「緻密」とか、電子音の向こうに並々ならぬ技術力の高さが垣間見える。とにかく音の密度が濃い。ぜひスペクトラムアナライザーなどを通して目でも見てみたいものだ。小さなボリュームで聴いていても波形のビビリまでわかるような気がする。これならオケの中でもしっかり存在感を示せるだろう。我々がKORG M1以来さんざん聴いてきたPCMシンセが出す音の「密度」とは、サンプリング技術とDAコンバータの性能に左右される再生音だった。それらPCMシンセにも良品はあるし、「楽器」と直感できるものもある。が、Prophet'08の出音は「今、機械がオシレーターを発振させている!」「ジェネレーターが仕事をしている!」と実感できるものなのである。これはPCMでは味わえない感覚であり、大勢のシンセ弾きが久しく忘れていたと思われる歓びである。
いや、技術力に関して言えばメイドインジャパンはどこにも引けを取らない。だが国産シンセの音を霞ませてしまうProphet'08の出音を性格付ける要因は、実はもうひとつあると思っている。それはチューニングだ。音程のことではない。最終調整のことだ。部品の選別や回路構成など、技術者が組み立てる前から構想できる部分はとても多いと思うし、シンセは機械なのだからその構想どおりに発音すべきだとは思う。しかしProphet'08の音を聴いていると、スピーカーやヘッドフォンで「耳を頼りに」調整された印象がある。結局理論値よりも感覚として気持ち良いかが、ちゃんと考慮されている印象があるのだ。Prophet'08を楽器足らしめている少なからぬ要因は、多分この部分なのではないか。そして香水や清涼飲料と同じで、特殊な才能を持った人間だけが行える領域によって決定づけられると思うのだ。
2.ユーザーインターフェイスについて
具体的に鍵盤の弾き心地が抜群に気持ち良い。これを弾いてしまうと国産の安シンセのライトウェイト鍵盤など遊びだらけで「指の毒」だ。反力、落ちる量、発音のタイミング等々、どれも難癖の付けようが無い。シンセパッドからピアノっぽい音やベル系の音、アタックのきついザクザクした音まで、鍵盤を落とす速度と発音するタイミングが実に気持ち良い。これはアナログ・デジタル関係なく楽器らしいシンセに共通の美点である。
アナログシンセのシンボルとも言えるつまみ類の操作感も素晴しい。つまみの回転抵抗が生理的に気持ち良いだけでなく、パラメーターの変化速度も同様に気持ち良い。もちろんこれらがシンクロしているからこそでもある。
他にも細部に至るまで詰めているなぁと思うのは、パネルプリントのフォントが実に見やすく美しい点である。また面白いと思ったのは、発音しているオシレーターを8つのランプが点灯してリアルタイムに示してくれる機能だ。8音ポリって意外と演奏にシビアにならざるを得ない。同時に8音で如何に効果的にボイシングするか、フレージングするか、という演奏者としての知恵を使う楽しみも味わえる。
とは言えひとつだけ腑に落ちない点があった。それはピッチベンドとモジュレーションのホイール設置位置である。画像を参照いただきたいが、実際に操作する際に意図せず低音部の鍵盤に腕が触ってしまい、ん?なんで低い音が鳴ってんの??という瞬間が15分で2度あった。デイヴ・スミス大先生がここの部分だけ考えなしに配置したとも思えないが、見た目通りやや使いにくい。ただし両ホイールの操作感は言わずもがな、実に気持ち良いものだ。
島村楽器仙台イービーンズ店ではこの個体が231,000円。絶対値としては決して安くないが、死ぬまで使えると思えば大バーゲン価格だ。はっきり言ってこのエントリーを読んだ誰かが自分より早くこの個体を買ってしまうのでは…?と思い、アップするのは少々迷った(笑)。まぁでも自分はデジ・アナハイブリッドのProphet12を買うだろう。いや、S90XSがあるんだから、純アナログこそ持っているべきか…???と心は乱れるのである。いやはやともかく、買う買わないはひとまず置いて、素晴しいシンセサイザー?Motifがあれば取り合えず大丈夫でしょ。いやいや、JUPITER-80しかないじゃん!おまえらわかってないなぁ、NordLeadだよ!等と言う御仁にこそProphet'08を弾いてもらいたい。レクサスだけが高級車ではない。メルセデスの…、いや、さらにその上を行く由緒正しい工業製品のセレブリティと呼べるシンセが、確かに存在するのだ…!ということを、指先と耳で感じ取れるはずだ。
※島村楽器イービーンズ店は試奏にすごく協力的なお店だ。たまたま対応してくださったのは店長さんだと思うが、この人の気配りはこれまでも素晴しかった。楽器を買うならこういう人から買いたい。こういう店員さんが私の知る限りあと4人ほど仙台にはいる。ネット購入で最安値を自慢するのもいいが、きちんと楽器を使いたい人は信頼できるお店と店員さんを見つけるところから始めて、フェイストゥフェイスで購入すべきだと思う。
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