2013.10.18 Fri
中学1年生に60分で何を語れるか?
ある中学校で行われた「進路学習」の時間に、「芸術・芸能コース」の講師として呼ばれて話をしてきた。こういうことは初めてではないが、音楽家として招集されたのは実は初めてである。対象は中学1年生44人。それも23人と21人に分かれて2回同じ内容を話さなければならない。実はこれが一番難しい。ラスベガスのホテルのディナーショーのように、MCの一言一句を同じようにしゃべるスキルなど無い。伝える言葉は少々違ったが、伝える内容は同じになるよう気をつけた。もっともいざ自分のホームグラウンドの話をしようと思うと、何からどう話せば良いか、意外と解らないものだ。講義は1回60分。そこで以下のように組み立ててみた。
■自己紹介_5分
■自作曲「Best Regards」をピアノと鍵盤ハーモニカでデュオ演奏_5分
■音楽制作について_30分
DAWを使った音楽制作「実際にLogicを使った音楽制作手法を実演」
・先ほど生演奏した「Best Regards」のカラオケを作ってみる
・DAWででき上がったカラオケと生音(鍵盤ハーモニカ)のアンサンブル
自分にとっての音楽を演奏する意味とは_5分
・他者とのコミュニケーション
・自己を表現する際に留意すべきこと
■もう1曲デュオで演奏_3分
■質疑応答_10分
完璧である。この配分で過不足無くしゃべれるなら(笑)。まぁ概ねうまくいったと思っている。2回目は質問が多かったので若干こぼれたが。
中学1年生、13歳ならまだ自分の進路と言っても茫漠としたものだろう。従って直接的なアドバイスや相談ではなく、DAWを使っての「こんな音楽の作り方もあるよ」というレベルの話に絞ってみた。偉そうに書いているが、何も特別なことをやったわけではない。普段自分が音楽を作る過程(の作業レベルの部分)を切り取って実演してみただけである。それでも子どもたち(と敢えて書いてみる)には新鮮に映ったようだ。ミストーンをMIDIデータレベルで修正したり、ドラム、ハーモニー、ベースと言う順番でダビングしていくにつれ、ちゃんと曲らしくなっていく過程など、単純に面白かったようだ。
この60分で私が子どもたちに伝えたかったのは「とにかくやってみたらいいじゃん!」という単純な思いだ。自室で高度なレベルで音楽を完成させられ、しかもインターネットで世界中に発信できる世の中を私も彼らも生きている。実は彼らが生まれた13年前には、まだここまでの環境は無かった。Googleが先日15周年を迎えたのを知って驚いた。YouTubeは2005年の設立だそうだ。それに13年前、つまり西暦2000年には、今と比べればまだ日本の通信回線は細くて脆弱だった。それに比べて今現在のPC、DAW、回線、SNSの充実度は想像を絶すると言っても過言では無いレベルで発達している。環境は整っているのだから、あとはやるかやらないかだけではないか。
もちろん本当の意味で「音楽」を創ろうと思ったら、コトは簡単ではない。様々な音楽を聴くことはもちろん。技術的な鍛練を初めとした「自分のレベルを上げる努力」を怠ってはならない。面と向かって「じゃあそういう努力をやってるんですか?」と問われれば、私自身アヤシイものだ。最後の質疑応答の時間に「自分たちが今努力しておかなければならないことはなんですか?」と質問した生徒がいた。「死ぬほど音楽を聴いて、(楽器を演奏する人は)死ぬほど練習してください。どんな音楽でも聴いてください。寝オチするくらい夢中で楽器の練習をしてください」と言っておいた。45歳になった今の自分へのアジテーションでもある。そういう意味では彼らも私も大差無いのだ。
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| 音楽雑感 | 23:23 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑