暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

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DCO戦争の思い出など

そもそもこのブログは個人的なことしか書いていないが、その中でも超絶に個人的な話なので「自分の役には立たないな」と思ったら即座に読み飛ばしていただきたいレベルのことを書く。

さて、私にとってRolandのシンセはなぜか縁遠い。シンセの音作りを学んだのも、後年自分所有の最初のシンセもKORGのもので、当時の自分の周囲には、何となくRoland派対KORG派という2軸対立のような空気があり、まさにその渦中にいたから、とも言える。自然とKORG派のつもりでいたのだ。

自分の最初のシンセ体験は多分中学1年生くらいの頃に、ヤマハ仙台店2Fに山ほど積まれていた国内外のシンセの中で、唯一自分にも買えるんじゃないか…と期待させたYAMAHA CS10である。CS15だともう高くてダメだー、な印象だった(笑)。だから隣にMINIMOOGが置いてあるのに、ほとんど触らなかった。自分には縁が無いと思い込んでいたのだ。大笑いである。ま、今もMOOGのシンセには縁が無いが。

自分の中のシンセのイメージは、こりゃもう断然坂本龍一や細野晴臣がステージで弾いているPOLYMOOGやProphet5でしかない(機種名も当時は全然わからなかった)。だからCS10を弾いてみてモノフォニックと知った時は愕然とした(笑)。唯一買えそうなシンセなのに、買ってもYMOみたいには弾けないんだ!がーん。その後歴史的(自分史という意味だが)機種、KORG MONO/POLYとPolysixが発売され、友人IがMONO/POLYを購入しヒーローになる(局地的に)。このMONO/POLYを私は何度か貸してもらい、シンセの音作りをマスターした。思えばMONO/POLYでシンセのイロハを学んだことはとてもラッキーだった。お手本のような構成のシンセだから。残念ながらPolysixの方は高額だったため(248,000円もした)、楽器屋の店頭でも触った経験は僅かしか無い。だがその時歴史は動いた!中学3年生の頃、国内でDCO戦争が勃発する。VCOは安定しない!これからはデジタルだ!と言う触れ込みでDigital Controled Oscilator、略してDCO搭載のシンセが20万円弱の価格帯で発売された。ここでKORGとRolandは真っ向勝負に出る。KORG POLY-61とRolnad JUNO-60である。結果的に私は高校の入学祝いという形でPOLY-61を入手し、ここでKORG党の入党が決定する。

korg_monopoly.jpg 
KORG MONO/POLY
4VCOだぜ!でもそんなに音は分厚くないぜ!


korg_polysix.gif
KORG Polysix
寺尾聰がベストテンで「シャドーシティ」を歌う時、
バックバンドの鍵盤奏者さんが
印象的な4分音符のコード弾きを
こいつで弾いていたなぁ。
ちなみにオリジナルはProphet10


poly61_1.jpg 
ステッカーチューンばりばりの
私のKORG POLY-61


poly61_2.jpg 
このネコのステッカーの出所を言える人は多いだろう
少し話を戻す。このDCO戦争の前段が実は複雑なのだ。Polysixは6音ポリ、2VCOで音色メモリー付き24万円。その頃RolandにはJUPITER-8という伝説の最高機種があり、そっちは最高機種に相応しく出音も素晴らしかったが価格が998,000円。ざっくり100万円ということでその意味でも完全にプロ仕様である。プロでも便利に使えるPolysixがJUPITER-8の1/3の価格で出てきたのだからRolandは焦ったんじゃなかろうか。そういうタイミングでリリースされたJUNO-6は基本的にはコンシュマー仕様ではあるが、シンセの音作りのおいしいところはちゃんと味わえるようになっていた。6音ポリ、先進のDCO制御だがオシレータは1基(サブオシレータはあった)で178,000円。だが惜しいかなメモリー機能が無かった。当時プロの現場ではキーボーディストが山のように鍵盤を並べるのが当然だった。海外のプログレバンドのヴィジュアルが相当影響していたと思うが、単純に当時の電子鍵盤楽器は今ほど器用じゃなかった。それぞれの機材のおいしい音はひとつふたつという感じで(あ、それは今もか?)、結果的に数で勝負するしか無かったのだが、そんな状況でもメモリー機能レスは大きなハンデであったろう。JUNO-6のメジャーアップデートと言えるのがJUNO-60である。

roland_juno6.jpg
Roland JUNO-6 
ソリーナのマネをさせるとかなり良いセン


roland_juno60.jpg 
Roland JUNO-60
音色メモリ機能以外はほぼ6と同じ

JUNO-60とそれに対抗する形でリリースされたPOLY-61は、結果的にシンセの価格帯を一気に10万円台まで引き下げた。時に日本は空前のバンドブーム。今思えば楽器メーカーは特需だったことだろう。基本的に人気の楽器は今も昔もギターであるが、シンセも立派に花形楽器だった。流石に中学生でシンセを持っているヤツなど一握りの人間だったが(前述の友人Iなど)、私も中学最後の文化祭でエレクトーンの上にMONO/POLYを置いて、ASAYAKEなど演奏などしたものだ。面白かったなぁ。

さてなぜ私がPOLY-61を選んだかと言うと、JUNOシリーズよりも「音が太い」と思ったからだ。今思えばどちらも似たり寄ったりの音圧だが、オシレータの数は多い程音は分厚い!という頭の悪いロジックが普通に蔓延している時期でもあった。今思えばPOLY-61は確かに中域に特徴があるが、それが即「音が太い」という意味では無い。今ならわかる。その観点で見てみると、JUNOシリーズは高域に特徴があって、要はJUNOはヒーヒーシャーシャー言う音が得意だったのだ。それもそのはず、POLY-61はLPFだったがJUNOシリーズはHPF。両者のキャラクターの違いはフィルターのキャラの違いであり、出音から受ける印象の違いも至極真っ当な結果だったのだ。今ならそれを理由にどっちも買っとけ!となるのだが(笑)、MOOGこそ至高のシンセ!みたいな頭でっかちだった私は、「シンセは音が太くてナンボ」というところで思考停止しており、キーボードマガジンなどの「2DCOで音が太い!」的な機材レビューに洗脳され、POLY-61の購入に至ったのである(と言うか、前述の通り高校入学祝いだったのだから、正確には自分で購入したわけではない。おばあちゃんありがとう)。

以来「Rolandは音が薄い」という間違ったイメージが染みついてしまい、JUNO-60の後継傑作機種JUNO-106も「やっぱ1DCOとかって無いわー。せめてオシレータは2つ積んでてもらわないと」みたいなイヤなヤツになっていたのである。もっとも私がPOLY-61を入手した頃、世間ではすでに究極の後出しジャンケンYAMAHA DX-7のことで話が持ち切りであり、DCOのシンセなんざ時代遅れ的なムード一色になっていくのだった。実際FM音源の金属音は衝撃的で、リングモジュレータをあっという間に時代遅れにしてしまい、シンセの音色の評価軸をものすごい力技で変えてしまった。3次元から4次元になったような衝撃だった。そのDXシリーズの勢いを止めるには、プレイバックサンプラー的なPCMシンセの金字塔KORG M1まで待たねばならないのだから、YAMAHAがいかに大もうけしたかがわかろうというものだ。

roland_juno106.jpg 
Roland JUNO-106
こいつのホワイトノイズは中々味がある


korg_m1.gif 
KORG M1
2台持っていた時期もある。
今はM1REXのみ所有しているが、
こいつの鍵盤は実直で信頼できるものだった

JUNO-106もJP-8000も所有するようになった今、Rolandシンセは音が薄いなどとは毛ほども思わない。そして太い音を出すシンセが実に希少であることも良く理解できた。今はただ、RolandであれKORGであれ、安価で粗雑な鍵盤のシンセを出さないで欲しいと願うのみである。

※KORG社のシンセサイザーの画像はすべてKORGウェブサイトより(POLY-61を除く)引用。
※Roland社のシンセサイザーの画像はすべてproun.netのヴィンテージ・シンセ・ギャラリーより引用。
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