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暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

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ハイ・レゾリューションはつらいよ(追記あり)

暁スタジオの録音フォーマットの限界値、96kHz/24bitで作業したら思いがけずトラブルに見舞われた!症状と原因究明の考察を書いてみる。


エモーショナルな生演奏を高音質で届ける、いわゆるハイ・レゾリューション音源作品を野心的にリリースするユニット「Beagle Kick」さんのある作品に鍵盤ハーモニカで参加することになった。プレイヤーとしてやりがいがあるのは当然のこととして、今回エンジニア的にも大変興味深い条件が付いていた。

192kHz/Float32bit

で録音しなければならないのである。

ネット用回線速度が速くなってきたので、ダウンロードやストリーミングと言った「ネット配信」で高解像度音源のリリースにチャレンジする人が増えてきた。作り手としては、そりゃ高音質で聴いていただきたいし、私個人もこの動きは大賛成である。192/32というフォーマットは、2015年の3月においては、最大限に高音質デジタルレコーディングであると言える。

BKrec_6.jpg
がんばってます

ところが!暁スタジオの機材の限界値は96kHz/24bit。幸いこの条件は承諾いただけたのだが、いざ録音を始めてみたら、テイクを重ねるに従いLogicPro9の挙動がおかしくなってきた。まるで「ビットクラッシャー」系のエフェクトをかけたように、音が歪むのである。注意深く聴くと、トラック全部(今回は伴奏、生ドラム、ベースなど、最低限のマルチトラックデータをいただいた)が歪んでいたり、録音中のハーモニカのトラックだけが歪んでいたり、症状が一定しない。またアレンジメント画面の曲進行と出てくる音が一致していない。

結論から言うと原因は特定できていない。作業中2度ほど「ディスクが遅い!」というアラートが出たことを鑑み、以下の検証を行った。

1)Logicの再起動 → 改善せず
2)オーディオインターフェイスの再起動 → 回復するものの数回再生を繰り返すと再発
3)録音用HDDのメンテ → 改善せず

3)について書くと、つまり断片化を疑った。そこで時間はかかるがシンプルな方法を試す。すなわち録音用HDDの全データを一時的に退避させて、録音用HDDをフォーマットしなおす(ゼロデータも書き込む)。しかる後に退避していたデータを戻す。恐らくこれで断片化は解消されたと思うが、結果的には改善しなかった。

と言うことで、あと考えられるのは

4)HDDそのものの読み取り速度が遅いこと
5)CPUの処理過負荷
6)コンピュータからインターフェイスへのデータ転送時のデータ落ち

などが考えられる。5)の過負荷とはLogicPro9の録音支援機能である「テイクコンピング機能」が疑わしい。テイクコンピングの詳細はリンク先を見てもらうとして、簡単に言えばひとつのトラックに複数のテイクトラックを自動作成し、複数の仮想トラックにまたがったOK部分を自動再生していく機能である。詳しい処理はわからないのだが、単純に考えてテイクを重ねれば重ねるほど処理する仮想トラックが増える=処理負荷が増えるのだろう。この時に4)のディスクからのデータ転送遅延か、Logic側の処理速度に瞬間的に過負荷がかかり、正しく録音・再生できない現象が起こる可能性を疑った。これに気付いてパンチインダビングは独立した別トラックに行ったが、一時的に復活するものの根治には至らなかった。ベーシックなOKテイクがそもそもコンピングを使用していたので、アレンジメントから当該トラックの削除をためらってしまったので正しい検証になっていないかもしれない。でもミュートはしてみた。してみたけど改善しなかった。あとは「フリーズ機能」でCPU負荷を減らす方法が考えられたが、あきらめてしまった。

cpu.png
ずぅっとこれを見てばかりもいられない

takecomp.png
結局コンピングしたトラックからフレーズを別トラックにバラし、
モノラルファイルにバウンスした。
白い拡大されたトラックがそれで、
耳で聴いてチェックしているところ

なぜなら厳然とした締め切りがある。またせっかく曲が身体に馴染んできたのに、原因究明に時間をかけてその感覚を逃がしてしまうのは致命的である。止むなく上記1)2)を繰り返しつつ、正常再生できる数回のチャンスにかけて(笑)必至で演奏した次第である。とても他人様の録音時には行えない対処である(そもそもこんなのは対処じゃない)。結果的にOKをいただけたが、このトラブルには辟易した。当面暁スタジオでは48kHz/24bitで作業することとする。あまり高音質での収録になると、定在ノイズもしっかり記録されちゃうというリスクもあるので…。

※【追記】2015.03.23. I/Oバッファサイズをたっぷり多めに取ることで解決した。こちらをごらんいただきたい。
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