暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

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音源ください!

あなたがミュージシャンだとして、間近に迫ったライヴで、聞いた事の無い曲を演奏するとして。それが市販の曲だとしたら「音源ください」と言うだろうか。それとも譜面だけを頼りにその曲を読解していくだろうか。


私は長い間、メンバーに音源を渡さない派だった。1枚のリードシート(メロディとコードネームが書かれている、ジャズによくあるシンプルな記譜方)を頼りに、その場にいるミュージシャンの知恵と経験を重ね合わせて曲を昇華していく過程が大好きだから…というか、それ以外に曲を完成させる手法を知らないとすら言える。そういう手法に慣れてしまうと、実音を耳で確認すること自体が想像力を小さなものにしてしまう恐れがある。「音源の再現」に私は興味が無い。

そんな手法に固執できるのも私の周囲にいるミュージシャンの音楽力が高いからである。私はそういう力量の高いミュージシャン諸氏にぶら下がってでも付いて行く努力のおかげで、今に至っていると思っている。なんと幸運なことだろう。そういうわけで、私はメンバーに音源を渡して説明することはしなかった。頼まれてもはぐらかしていたりもした。積極的に音源を渡さないようにしていたのだ。しかしここ数年、そんな意識に変化が起こってきた。音源を渡して予習してきてもらった方が、より深い解釈に至れることもあることがわかってきたのだ。

考えてみれば、力のあるミュージシャンなら、音源と自分たちの出す音の差異を受け止め、補完し、より良い解釈を生み出そうと最大限に努力するのは当たり前だ。そういう力量なり意識のある人が、事前に音源を聴く/聴かない程度のことで仕上がりに差が出るわけもない。私はこれまで、過剰に心配してきたのだろう。

もっと単純に言って、ミュージシャン個人個人の音楽へのアプローチの違いであるとも言える。耳で聴いて曲を理解した上で、その曲の中の自分の立ち位置を構築するアプローチには、音源が無いよりはあった方が到達時間が短くて済む。私のような読譜力のない人間は、リードシート1枚の行間を読むと言っても何程の事もない。気が付くと毎回同じアプローチをしている場合も多々ある(それを個性と呼べば呼べるけれど…)。それならいっそ手本としてでも、より離れるための反面教師的材料としても、音源があった方が効率が良いということは言えるだろう。

そんな過去を経て、今の私は求められればホイホイと音源をお渡しする。音源以上の演奏ができることを祈って。もっとも頭の中にしか存在しない曲の場合は無理だけど…。
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| 音楽雑感 | 22:07 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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