暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

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軽量シンセは正義か?

昨今、シンセ等のデジタル楽器はどんどん軽量化しており、61鍵モデルで数kgなんてモデルもざらに出回るようになった。KORG MONO/POLYをソフトケースでたすき掛けに背負い、バンド練習のため友人の家まで片道徒歩20分歩いて、肩に内出血の跡をつけた中学生の頃の私に教えてやりたい気持ちで胸がいっぱいだ。MONO/POLYは44鍵で12kgもあった。


2015年の現在、新品もしくは新古品として流通する軽量61鍵シンセの鍵盤はあまり良質とは言えない。少なくともヴェロシティ対応の鍵盤としてピアノやリズム系の音で「表現行為」に使えるものになっているとはとても思えない。それでも電子鍵盤楽器の選択肢は多い方が良いし、誰もが最高級品を購入できるわけでもないし、軽さとトレードオフでやむを得ぬという考え方にも一理ある。

先日某社のその手のシンセを2時間ほど弾く機会があったのだが、まぁひどい。これで練習してたら確実に下手になるな、というシロモノだった。ピアニシモとフォルテシモを受け付けてくれないと言うか、ヴェロシティ値で言うと0〜80、110〜127あたりが非常にコントロールしにくいものだった。それでもうまい人ならそれなりに弾けるのだろうか。私にはわからない。

と、安シンセをさんざんにこき下ろす私だが、自分のシンセをリハスタジオに持ち込んで、普段使う音色、実際にステージで使う音色でリハーサルをする重要性はよくわかっているつもりだ。そのことを優先するためにこのような安価なデジタルシンセを使うことは絶対に責めない。基本的にクルマで移動する私ですら、重いシンセを持ち運ぶのはうんざりだ。若いミュージシャンの中にはクルマを持っていない人だって珍しくないだろうし、住む環境によっては公共交通で移動せざるを得ないという人だって多いだろう。そんな場合に重さ数kgという事実は絶対正義だと思われる。

さすがに数kgでは無かろうが、まともな鍵盤アクションと鍵盤数で、なおかつ軽いというMIDIコントローラーも出現している。光明はあるのだ。またいちいち重い自分のメインシンセを持ち歩かずとも、スタジオや会場の備え付け機材としてシンセを借りてしまうというのもひとつの解決策ではあるが、一見さんの楽器で自信満々に弾けるという人はまれであろう。出している音色に責任を持てないという状況は、電子楽器奏者としてアイデンティティを疑われても仕方ない。自分で作った音(もしくは普段からコントロールしている音)で演奏するのは最低限の仕事であり、そのために電子鍵盤楽器奏者は機材運搬地獄を乗り越えなくてはならない。とは言うものの、スタジオでセッティングが終わる頃には腕も指も疲れてしまっていて…では本末転倒である。せめぎ合いは終わらない。
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