2015.05.17 Sun
今こそMIDIマスターキーボード
音源もエフェクターも全部ソフトウェアで内蔵できるDAWが普及して以来、外部インターフェイス機器の様相はかなり変わった。MIDIもオーディオも、ポート数は少ないもののどちらも備えているものがほとんどである。だがかつての専用機に比べれば「廉価版」的な製品が多くなった。MIDIコントローラーの接続先の機器にしても、楽器にせよエフェクターにせよ、80〜90年代にはひとつひとつをハードウェアで購入するしかなかった(Macと直結なんざ夢のまた夢)。次々と部屋やラックのスペースを侵食していった楽器やエフェクターが、今やラップトップコンピュータの中にたくさん入っていて持ち歩ける2015年。あの頃湯水のごとく楽器や周辺機器にお金をつぎ込む生活を送っていた私のような年代の者には驚きという他ない。
スタジオにでーんとマスターキーボードが置いてあって
音源ラックが隣にあって…。
ただ一方で「筐体」を失ったことによる弊害もあるように思う。楽器として使いたい機種が少ないのだ。現代のMIDIコントローラーを、USB接続前提のコンピュータ周辺機器と見れば、その低価格化、コンパクト化という現状は当然とも言える。楽器は大きくて重いことがステイタスだが、コンピュータ周辺機器のプライオリティは真逆である。ただ結果的にその風潮が高級かつ高機能なMIDIコントローラーの出現を阻んでいるのではないか、という疑問は持っている。
昨今の安価でプラスティッキーなMIDIコントローラー隆盛は良い事だと思う。いや、非常にうらやましい。ただ「安価な」製品しかないことには少々危惧も覚える。実際プレイヤーのきちんとした鍵盤演奏を入力するには、61鍵以上のしっかりしたアクションの鍵盤が必要になる。だが数万円の25鍵程度のUSBオーディオインターフェイスを兼用するようなモデルと、リアルなピアノタッチを搭載したハイエンドMIDIマスターキーボードとの間を埋める製品がものすごく少ない。
その背景には録音機や楽器がヴァーチャルで済んでしまう事実も影響しているように思う。実体験としての楽器の大きさや重さという要素は、楽器演奏にとってとても重要なのだ。よくある話だが、同じピアノの音色で演奏するにしても、鍵盤アクションがピアノタッチなのかオルガンタッチなのかで弾き手の心情は変わる。心情が変わるということはフレージングが変わるということでもある。
もっとも誰もがピアノアクションの鍵盤を弾きこなせるわけでもないし、ドラムの打ち込みならペコペコ鍵盤の方が楽、なんて人もいるだろう。すべてのMIDIコントローラーが高級品であるべきと言っているのではない。安価な数万円台の製品に満足できなくなった時に、もうちょっと良いヤツが欲しくなった時に、そういう欲求にぴったりのMIDIコントローラーが市場にあまり無いことが残念なのだ。AppleがMain Stageをリリースしたように、CPUはリアルタイム演奏に耐えられるだけの性能を持つに至り、複数のシンセやエレピをラップトップコンピュータの形でステージに持ち込めるようになったというのに、肝心の身体インターフェイスたるMIDIマスターキーボード(敢えてこう呼びたい)の選択肢が少ないのは残念だ。
| 機材 | 22:39 | comments:5 | trackbacks:0 | TOP↑
こんにちは。
そのの機械違いで恐縮ですが、先日新しいMacBookを買ったらUSBの形状が違くて焦りました。
USB-Cとかいう新しい規格のタイプです。
そのポートがひとつだけ。
アダプターも純正は「やっぱり」高いし、社外品は新しいためかほぼ出てないですね。
ま、アップルお決まりの切り捨てですから、驚きまではしてないですけど(笑)
| The Stig | 2015/06/01 13:08 | URL |