暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

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本来の意味でリミックス

私は(リマスタリングはともかく)リミックスという行為自体にあまり興味がなく、これまでほとんどやったことがない。ただ自分の耳は幸い成長はしているようで、かつての自分の音源のミックスが後悔のかたまりのように思えることがある。リミックス=再度ミックスすること、という言葉本来の意味に立ち戻って、今の耳でかつての素材をミックスしなおしたらどうなるだろうか。挑戦してみることにした。

lapssione.jpg


挑戦してみるのは「やさしい風」。2011年にリリースした今のところ最新アルバム「La Passione」の中の1曲である。この曲をミックスしていた当時、低音域の制御にはなかなか自分なりの定番手法を見出せずに本当に苦労していた。いや、今も苦労している。バスドラムとベースの棲み分けは当時も今も最重要課題である。2011年ミックスでは低音域全体でぼわんぼわんしてしまうのを、全体的に100Hz以下をばっさりカットすることで回避していた。棲み分けもへったくれもない(笑)。今思えばそれは回避というよりは単なる逃げである(笑)。とは言えメロディを前面に出すという意味ではあながち的外れなアプローチではない。だが昨今のドンシャリ音源と比較すればまるで牧歌的な音作りであった。


演奏する立場から言えば、牧歌的など冗談じゃないというところで、ゲストミュージシャンのみなさんは本当に多大なエネルギーをこの曲につぎ込んでくれた。いや、もちろん「多大なエネルギーを注ぎ込んだ牧歌的な仕上がり」もありはありだが…。私が言いたいのは、この曲世界とそれを実現するために費やされた演奏者のエネルギーが、仕上がりとマッチしてないのではないか?という疑問があるということだ。そのずれを解消するのが今回のリミックスの目的である。

実際の作業としては実に地味で。コンプレッサーやリミッターを深くかける、EQで帯域整理を徹底するというごく真っ当な手法を重ねていく。改めて及川文和氏のドラムと佐藤弘基氏のウッドベースの棲み分けに挑戦するわけだが、マイクコレクションが貧弱な暁スタジオでは低音楽器の収録音に難点があるようだ。バスドラムもウッドベースも、いざ棲み分け作業を図ると、それぞれに欲しい帯域が少なめなのだ。無理をしない範囲でEQで調えコンプレッサーでゲインを稼ぐ。プラグインによるその手の作業はいとも簡単に「やりすぎ」レベルまで行ってしまう。すべての素材が膨満してしまった状態に至るまでわずか1〜2時間(笑)。いったん放置して次は引き算の作業である。

改めて素材の状態で聴きなおしてみると、この曲が実にシンプルなことがわかる。メロディもハーモニーもアレンジも。シンプルで風通しの良いアンサンブルの素材を、コンプでゲインを稼ぎ、EQで帯域を整理して詰め込むことが果たして良いことなのかどうか。重低音とトゥーマッチなレベル競争の音源と同じ土俵に上がることがこの曲にとって幸せなのかどうか、改めて考える機会になっている。
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| レコーディング | 21:34 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

クイーンのブライアン・メイのように機械を改造して、(たとえばギターの音作りにピックではなく硬貨を使うみたいな)マニアックな音作りと、多重録音法といったいい意味でアナログ的でヘンタイな手法でもすごくいい音ができるわけで。

アルファv6やフェラーリv8v12の音もウルサイけどイイ音、的なパラドクスも存在しますし。


ジャンルは違えど複雑なサウンドこそ合ドラで、どんどん音の虜になってしまいます。

音って魅力的だけど、これだ!という音に辿り着くまでが難しい。。。

| The Stig | 2015/06/05 14:52 | URL |

◇The Stig様
多分一生辿り着けないんだと思います。辿り着いたと思ったら終わりですよ、きっと(笑)。

| はっとりあきのり | 2015/06/05 21:16 | URL |















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