2015.07.15 Wed
ミュージシャンと地域がつながるところ
好き勝手に生きているように見えるミュージシャンを含めたアーティストだって、社会との関連なしに生きていくことはできない。ミュージシャンは人前で演奏することでミュージシャンになれる。だが前世紀の最後の30年くらいから演奏を届ける方法は大幅に多様化した。具体的には自宅で多重録音ができるようになり、作品や演奏を世の中に出していくハードルは下がる一方である。その手法が多様化したことで、必然的にミュージシャンが社会と交わる手法もまた多様化した。ミュージシャンの本質そのものが多様化したと言ってもいい。インターネットの普及がさらにそれを加速させたとも思う。
その結果、正体のわからない音源が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)するようになり、本当に音楽に飢えている人びとは「やっぱり音楽は生演奏がいちばん!」と気付き始めている。言わば「状況の先祖返り」が起こりつつあるのだ。私自身もそのことに実感を深めていて、その思考は徐々に「伝播の規模=全世界へ自分の音楽を届ける」ではなく「伝播の深度=狭い範囲でもいいから誰かに真っ正面から受け止めてもらえる方法」という方向にシフトしつつある。自分の送った音が誰かに伝わり、その反応をもらってこちらも変化していく…という現場をたくさん体験したくなってきた。
その方向に邁進するなら、これまでは「ライヴをひたすらたくさんやる」ということに帰着していたかもしれないが、前述の通り今は自宅でもレコーディングができる。また誰もがひとりでライヴのステージに立てるわけでもない。実際インターネットによる広がりは自分の住む場所、ローカルへの伝わりという意味では希薄だし遠くに飛び過ぎる。2015年の今、ミュージシャンとローカルがつながるひとつの試行として私が考えているのは、「ご近所に開かれたレコーディングスタジオ」である。毎日学校と同じように朝から夕方まで駄菓子屋の店先よろしく、戸を開け放った音楽制作の場があって、いつも自分がそこで曲作り(多重録音)をしているのだ。興味のある人はのぞいて行ってもいいし、参加してくれてもいい。下校途中の小学生が遊んで行ってもいい。3軒先にギターのうまい人がいるかもしれない。自宅では弾けないからと言ってそのスタジオでピアノを小一時間弾いていく主婦の人がいてもいい。こういう場を開いておくことも、ミュージシャンが社会や地域と関わる方法のひとつだと思う。この場合音楽やレコーディング作業は誰かとのコミュニケーションツールという側面も持つ。毎日楽しそうだ。
そんなこと本当にできるのか?いつになったら実現するのか?と思っていたのだが、なんとそれを実現してしまったミュージシャンがいる。岩手県花巻市にお住まいのGON TAKAHASHIさんである。GONさんは花巻市郊外にギャラリー兼スタジオ兼事務所である「田舎labo」を開いた。もう2年になるという。また私の周囲のミュージシャンの中にはGONさんを知る人が何人かいて、とってもいい人だよ〜と言う。いちど遊びに行ってみたいと切望していたのだが、ようやくそれがかなった。
倉庫のリノベーション…というと話は簡単だが、そういうスペースを居心地良いものにするのは並大抵ではない。市内近県作家作品の委託販売、折々のイベント、ミュージシャンとしての楽器のスペースなど、雑然としているからこそ落ち着ける空間。花巻市内からクルマで10分程度の距離なのに森の中といった風情で実に快適だ。冬は積雪も多く大変そうだが、そういう四季のあれこれもまたこの田舎laboの魅力となっている。そうなのだ。花巻にあること、それ自体が魅力なのだ。はっきり言って田舎laboが六本木にあってもしょーがないのだ。仙台から2時間かけて(クルマで高速道路を使った)訪れること自体もまた楽し。
GONさんと奥様と他愛のない話をしつつ、好きなことを仕事にするってのはこういうことを言うのか…と思わずにいられなかった。もちろんご苦労もあるだろうが、すべてをコントロールできる喜びや、人と人のハブになっている喜びみたいなものがじんわりと伝わってくる1時間だった。田舎laboと同じことをしたいわけではないのだが、「すべてを自分でコントロールできる」「人と人のハブになる」という2点は、自分の野望のコアにきちんと持っていたいと思った。田舎labo、ぜひ一度訪れてみてほしい。
その方向に邁進するなら、これまでは「ライヴをひたすらたくさんやる」ということに帰着していたかもしれないが、前述の通り今は自宅でもレコーディングができる。また誰もがひとりでライヴのステージに立てるわけでもない。実際インターネットによる広がりは自分の住む場所、ローカルへの伝わりという意味では希薄だし遠くに飛び過ぎる。2015年の今、ミュージシャンとローカルがつながるひとつの試行として私が考えているのは、「ご近所に開かれたレコーディングスタジオ」である。毎日学校と同じように朝から夕方まで駄菓子屋の店先よろしく、戸を開け放った音楽制作の場があって、いつも自分がそこで曲作り(多重録音)をしているのだ。興味のある人はのぞいて行ってもいいし、参加してくれてもいい。下校途中の小学生が遊んで行ってもいい。3軒先にギターのうまい人がいるかもしれない。自宅では弾けないからと言ってそのスタジオでピアノを小一時間弾いていく主婦の人がいてもいい。こういう場を開いておくことも、ミュージシャンが社会や地域と関わる方法のひとつだと思う。この場合音楽やレコーディング作業は誰かとのコミュニケーションツールという側面も持つ。毎日楽しそうだ。
そんなこと本当にできるのか?いつになったら実現するのか?と思っていたのだが、なんとそれを実現してしまったミュージシャンがいる。岩手県花巻市にお住まいのGON TAKAHASHIさんである。GONさんは花巻市郊外にギャラリー兼スタジオ兼事務所である「田舎labo」を開いた。もう2年になるという。また私の周囲のミュージシャンの中にはGONさんを知る人が何人かいて、とってもいい人だよ〜と言う。いちど遊びに行ってみたいと切望していたのだが、ようやくそれがかなった。
倉庫のリノベーション…というと話は簡単だが、そういうスペースを居心地良いものにするのは並大抵ではない。市内近県作家作品の委託販売、折々のイベント、ミュージシャンとしての楽器のスペースなど、雑然としているからこそ落ち着ける空間。花巻市内からクルマで10分程度の距離なのに森の中といった風情で実に快適だ。冬は積雪も多く大変そうだが、そういう四季のあれこれもまたこの田舎laboの魅力となっている。そうなのだ。花巻にあること、それ自体が魅力なのだ。はっきり言って田舎laboが六本木にあってもしょーがないのだ。仙台から2時間かけて(クルマで高速道路を使った)訪れること自体もまた楽し。
GONさんと奥様と他愛のない話をしつつ、好きなことを仕事にするってのはこういうことを言うのか…と思わずにいられなかった。もちろんご苦労もあるだろうが、すべてをコントロールできる喜びや、人と人のハブになっている喜びみたいなものがじんわりと伝わってくる1時間だった。田舎laboと同じことをしたいわけではないのだが、「すべてを自分でコントロールできる」「人と人のハブになる」という2点は、自分の野望のコアにきちんと持っていたいと思った。田舎labo、ぜひ一度訪れてみてほしい。
L:服部 R:GONさん
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