暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

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【試奏記】Dave Smith Instruments Prophet 6

島村楽器仙台E-Beans店でヘンタイ系シンセをまとめて試奏してきた。そもそもなぜ当該店を訪れたかというと、このシンセが展示されているはずだ…!という期待があったからである。本当は真打ちとしてこの一連の試奏記のラストに発表しようと思っていたのだが、試奏した順番によってこの日試奏したシンセの印象が変化したので、あくまで試奏順にアップしようと思う。その変化とは、初めて触った時は「すげー!いいぜ!!」と思ったものも、こいつを弾いた後では…というような心境の変化だ。そう、こいつとはDave Smith InstrumentsProphet-6である。

p6_2.jpg


この日のまとめ試奏の他のレポートは以下のとおり。
【試奏記】Roland JD-XA
【試奏記】studiologic Sledge2.0
【試奏記】YAMAHA reface CP
【試奏記】KORG KRONOS(new)


本エントリーに記録したレポートでは、基本的に足下に置かれたキーボードアンプにモノラル接続された状態で試奏した。ヘッドフォンやスタジオモニターでじっくり腰を据えて聞き取ったわけではないことを、ご了承いただきたい。

p6_1.jpg


と言うことで繰り返し書くが、この日の試奏大会はこいつが大本命。Prophetシリーズが悪かろうはずがない。かつてProphet'08を試奏した際(現代のセレブアナログシンセ・Prophet'08を試奏した!)にはシンセ界のロールスロイスもしくはベントレー(つまり最上級品)と評したが、5に続く6、しかも言うまでもなく往年のSCI Prophet 5の現代版と言うことで、アドレナリンを大噴出させながら実機の前に進んだが…。

Prophet 6、小さいのである。驚いた。筐体サイズはProphet 5どころかイメージとしては私が愛用するRoland JP-8000に近い。

  横幅   奥行き  高さ 
P6 813mm * 323mm * 117mm
JP 925mm * 349mm * 113mm

いやいやいやいやいやいや。JP-8000の方がでかいのである。これは相当肩透かしだった。小さなパネル面積に5よりも増えたツマミを配置する関係からか、ヴォリュームノブは、見た目は同じで縮尺が小さいものが搭載されている。08のノブの感触にベタ惚れだった私は、この1点だけでも大きな減点要素となる。いや、ノブの抵抗感自体は素晴らしい。ダウンサイジング、効率化。本来良いことのはずだが、前時代工業製品の象徴たるアナログシンセにそういう要素を持ち込まれるとしっくりこない。はっきり言えば、直感的に、デイヴさんちのシンセをいじっている気がしないのである。特徴的なボタンスイッチ類はそのままなのだけど。まぁこの件は買えない人がきゃんきゃん吠えても文字数の無駄だ。すみません。

で、肝心の音はどうか。やはりそこはデイヴさん、素晴らしい音圧だ。プログラムを初期化(フィルターを最大に開いてENVを0.10.10.0にしてオシレーターのボリュームを最大にして…)した、言わばオシレーターの素の音と、そこから乱暴にプログラムモードに入って適当にプログラムをいくつか選んで弾いてみても、音量変化がほとんど感じられないのである。プログラムごとのAMPセクションで最適化されている可能性はあるが、エフェクトやフィルタースルーのオシレーター素の出音と、あれこれ加工済みのプリセットプログラムとの音量差を感じないとは、恐るべき基礎体力と言わざるを得ない。出てくる音が軒並み本当にキメが細かい。

だがこうなると、エディットする側のスキルが如実に反映されもする。適当にやっても良い音にはならないのだ。と言うのもProphet 6、加工過程がとても複雑だ。ふたつのVCOには完全独立のヴォリュームを備えたミキサーがあり(100:100で鳴らして、このモジュレーションとデチューン幅をいじってるだけで「うっわ!こりゃ良いシンセだ!」と感動できることを請け合う。例えばPWMの変化など、ノブを回すと本当に感動的なほど滑らかに、かつ十分変化する)、加えてHPFとLPFも切り替え式ではなく独立。だからBPFにもなる。ポリモジュレーションを含めてLFOも当然良い。派手にかけた時より、控えめに、「これ、かかってる?」程度の変調時の方が凄みを感じる。ゼロからほんのちょっとノブを回しても、ちゃんと変化が聴き分けられる。ただその分すべてのエディット要素をバランスよく調整しなければ、望む音に近づけないのも事実。どれかひとつのノブを派手に回せば目まぐるしく音色が変化して、聴いたことあるかっこいい音色になっとる…なんてラクチンはさせてくれないのだ

そんなわけで、6は「誰が買っても即戦力に!」みたいな、90〜00年代に蔓延したPCMシンセのようなものではない。回路図と材の特性を理解すればするほど冴えてくるタイプのシンセだと思う。実は私はオリジナルたるProphet 5を触ったことがなく、オシレーターのミックスとかフィルターの独特のルールなどをこの時まで知らなかった。短時間の試奏ではどこまで理解できたか自信がもてない。LPFとHPFを同時にそれぞれエディットできるだけでも驚いてしまった。JD-XAにもフィルターにそういうモードはあったが、LとHそれぞれにツマミがあるのは実に正しいし、このフィルターの効きを様々に試すだけでも小一時間遊べるのではないかと思う。とは言えそんな理解度だから、坂本龍一サウンドのマネなんてところまで行けなかった。6になって2系統のデジタルエフェクタを搭載しているが、そいつをOFFっても「イイモノ感」はまったく変わらない。ドライで聴いていて気分が盛り上がるシンセなんてそうはない。だからこそ61鍵盤でフルサイズにしてくれていれば…という恨み節も出てきてしまう(鍵盤のアクション自体は文句の付けようがない)。どちらを買うかと問われれば08と答えてしまいそうだ。
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