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暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

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【試奏記】KORG KRONOS(new)

仙台における電子鍵盤楽器パラダイスのひとつ、島村楽器仙台E-Beans店でヘンタイ系シンセをまとめて試奏してきた。試奏した順番に試奏記をエントリーしている。このブログはいくつかのSNSにもリンクしているのだが、特にFacebookでのrefaceへの反応の多さには軽く驚いている。つまり純粋シンセサイザーであるProprhet 6よりもお手軽(だが高音質)音源refaceへの評価の方が高いのが2016年なのだ。もちろん音楽を作るのに資するならシンセだろうがサンプラーだろうが、ハードウェアだろうがソフトウェアだろうが関係ない。だが再生専用サンプラーが「シンセサイザー」のタグを付けて売られている現状を、仕方ないことは認めつつ、「そーじゃねーよ」とは思っている。

そんな心の中のモヤモヤを吹き飛ばしたのが、今回試奏記を起こすKORG KRONOSである。再生専用サンプラーを極限まで突き詰めれば、それはやはり楽器になり得るのだ、というrefaceと同じ結論をまずは書いておこうと思う。

kronos.jpg


※店頭の製品には「KRONOS2」と表示されていたように思うが、KORGのサイトを見てもそういう表記は見られない(新しいKRONOSとなっている)。ここでは公式サイトに合わせて「KRONOS」と表記する。マイナーチェンジされたKRONOSのことである。

この日のまとめ試奏の他のレポートは以下のとおり。
【試奏記】Roland JD-XA
【試奏記】studiologic Sledge2.0
【試奏記】Dave Smith Instruments Prophet 6
【試奏記】YAMAHA reface CP


基本的に足下に置かれたキーボードアンプにモノラル接続された状態で試奏した。ヘッドフォンやスタジオモニターでじっくり腰を据えて聞き取ったわけではないことを、ご了承いただきたい。

kronos2.jpg

Prophet 6を目当てに島村楽器を訪れ、その高い理念と高音質と複雑な音作りの考え方にノックアウトされた。一息入れようと手を伸ばしたrefaceに重ねてノックアウトされた。しかしKORG KRONOSはじわじわと身体をほぐすような「北風と太陽」で言えば太陽ような楽器だった。その実力にはシャッポならぬコートを脱ぐしかないのである。

そもそもKRONOSは、初代が発売された直後に数日借り受けてじっくり試奏し、レポートもエントリーした。

KORG KRONOSはKORGの集大成か(2011年5月30日)
KORG KRONOS本気リポート・鍵盤編(2012年1月10日)
KORG KRONOS本気リポート・音源編(2012年1月16日)
KORG KRONOS本気リポート・エディット編(2012年1月25日)

つまり「今さらジロー」である。それでも「まぁ置いてあるから…」と、帰り際に何となく音を出してみたにすぎない。すぎないのだが、やはりこいつには驚かされる。たかがPCMシンセの最新型と侮れないものがある。はっきり言ってKRONOSはPCM系シンセの最終到達点である。PCM音源にヴァーチャルアナログという組み合わせは、古くはYAMAHAのSY99がFMのオシレータにPCM(AWM)音源を流用できるという、ある意味究極のハイブリッド音源ではあったし、それこそJD-XAもハイブリッドという意味では同じなのだが、これらはFM音源や「ヴァーチャルアナログシンセ」というスタイルに固執しすぎていて、個性的という意味では満点だが、自らを枷にはめているという側面も免れない。KRONOSはワークステーションという立場を取る以上、収録波形の数、ソフトウェアの形で搭載するヴァーチャルアナログ音源の豊かさ、エフェクトの充実度、オールマイティに使える音質、鍵盤の弾き心地に至るまで全方位的にその達成点は高い。八方美人の究極形と言える。だからKRONOSを弾くと、S90XSなど完全に時代遅れであることを痛感する。ちなみに液晶タッチパネルの反応速度は激速で、音色切り替えのストレスも皆無。唯一RH鍵盤だけは慣れが必要だと思うが、これだけの全方位的にいい顔していると、もはやそれすら弾き手の責任に思えてくる。

KRONOSの、軍隊で言えばまるでグリーンベレーのような高性能ぶりにぼーっとしつつ、再びProphet 6を弾いてみた。アナログとデジタルの最高峰。どちらが優れているかという問いを発するのも馬鹿馬鹿しいほど、双方キャラクターが磨かれている。オシレータに変調をかけて音色を変化させ、聴いたことの無い音を合成するというシンセサイザーの本来の機能を考えれば、Prophetの目指すものは正しいし、その研ぎ澄まされ具合から言ってももはや貴重種の領域である。それでいて「楽器」であることを放棄していない。両者を例えるなら、人間そっくりの出来の良いロボット(KRONOS)と、匠の作る浄瑠璃人形(Prophet 6)と言えようか。大量生産工業製品を極限まで高めて生み出す精緻さと、職人が手塩にかけて磨き上げる精緻さの違いである。得られるものが違う以上優劣はつけ難い。そうやって見てみると当日Prophet 6のさらに上に置いてあったClavia Nordシリーズなど弾く気も起こらなかった。お疲れさまでしたと言う他無い。
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