2016.02.08 Mon
試奏記を振り返って
あまり楽器屋に出入りしないので、たまに訪れると嬉しくなって多くの機材に触ってしまう。結果的に特徴的な楽器、あるいは自分の生理に沿った楽器の印象が一番大きく残り、その他のものの印象はどんどん薄れていく。島村楽器仙台E-Beans店での2016年1月の試奏で出会った楽器は、そうやって忘れていくにはあまりにももったいないものばかりだった。可能な限り思い出しつつ備忘録的に起こしたのが今回の一連の試奏記である。試奏している時には気付かなかったが、あとから文章にまとめていく過程で、あることに気が付いた。それは自分がシンセサイザーに何を求めているか?ということだった。
あの日試奏したのは、(試奏した順番に)Roland JD-XA、studiologic Sledge2.0、DSI Prophet 6、YAMAHA reface CP、KORG KRONOS2である。色々な意味でもっとも衝撃の大きかったのがProphet 6であるが、その前に弾いたJDやSledgeの印象はPro6以前以後では微妙に異なる。残酷な書き方だが、それは本物と偽物の違いに由来する、としか書きようのない変化だった。
試奏記の段階で書いてきたが、この日の試奏のハイライトはProphet 6だった。その前に弾いたJD-XAもSledge2.0も、基本的に出てくる音は「いわゆるアナログシンセサイザー」の音なのだが、Prophet 6とJD-XA、Sledge2.0の間には高い山がそびえ立っている、深い渓谷が横たわっていると言わざるを得ない。あまりにも違うのだ。「合成機」の名に相応しい機能、音色のバリエーションを持っているのは明らかにProphet 6だった。いや、もしProphet 6に触れることなく帰っていたら、JD-XAにしてもSledge2.0にしても、「買って損なし!」と太鼓判を押しただろう。だがProphet 6を知ってしまった以上、それらはあまりにもインスタントで薄っぺらい。手っ取り早くアナログシンセっぽい音は出せるが、音色の自由度という意味ではとても狭い。Prophet 6は良質の素材とよく切れる包丁や調理器具、強い火力のガスコンロは提供してくれるが、おいしい料理を作れるかどうかは調理人次第というシンセである。対してJD-XAやSledge2.0は麺と粉末スープとお湯さえあれば、万人が食べられるカップラーメンができ上がるだけのものだ。カップラーメンが食べたい時には重宝するが、舌の肥えた客に供する料理を作るには、あまりにも心もとない。
人は最上級の料理だけを食べて生きていくわけではないが、ファストフードしか知らない人に高級料理は作れない。別に最上級の料理が尊いと言うつもりもないが、そういう味があることを知っていることは大事だとも思う。この世には使い手が成長すればするほど良い音で鳴る楽器がある、と知っていることはとても重要だ。
Prophet 6ほどの突き抜け具合でなくても、refaceやKRONOSを見ればわかる。インスタントの権化のようなPCMシンセ(と呼ばれる再生専用サンプラー)であっても、音質とプログラミングを極めれば相当な高級料理に匹敵する味わいを醸し出すことができるのである。
かと言ってJD-XAやSledge2.0を否定するものではない。およそシンセサイザーと呼ばれる楽器には、どんな機種にもその機種でしか出ない音がある。そんな基本的な話をせずとも、JD-XAもSledge2.0も基礎能力は充分高い。「よく聴くアナログシンセ音」が必要な音楽なら、どんどん使えば良い。使い込むことで、もっとも得意な音色傾向も理解できるだろう。居場所は多くないが、ハマれば強力なシンセではあるのだ。
Prophet 6は筆者にとってアナログシンセサイザーの理想形のひとつである。ユーザーインターフェイスの点からはいくつか注文が無いわけではないが、音質、音圧、エディットパラメーター、鍵盤アクションなどなど、技術者が丁寧にチューニングしたであろうことが明白にわかる。「合成機」の名のとおり、様々な要素を組み合わせながらナニモノかを作り出す機材である。Prophet 6には「この世に無い音を自分で作る喜び」が純粋にパッケージされている。私が小学生の頃に夢に見るほど憧れたシンセサイザーとは、これなのだ。
【試奏記】Roland JD-XA
【試奏記】studiologic Sledge2.0
【試奏記】Dave Smith Instruments Prophet 6
【試奏記】YAMAHA reface CP
【試奏記】KORG KRONOS(new)
試奏記の段階で書いてきたが、この日の試奏のハイライトはProphet 6だった。その前に弾いたJD-XAもSledge2.0も、基本的に出てくる音は「いわゆるアナログシンセサイザー」の音なのだが、Prophet 6とJD-XA、Sledge2.0の間には高い山がそびえ立っている、深い渓谷が横たわっていると言わざるを得ない。あまりにも違うのだ。「合成機」の名に相応しい機能、音色のバリエーションを持っているのは明らかにProphet 6だった。いや、もしProphet 6に触れることなく帰っていたら、JD-XAにしてもSledge2.0にしても、「買って損なし!」と太鼓判を押しただろう。だがProphet 6を知ってしまった以上、それらはあまりにもインスタントで薄っぺらい。手っ取り早くアナログシンセっぽい音は出せるが、音色の自由度という意味ではとても狭い。Prophet 6は良質の素材とよく切れる包丁や調理器具、強い火力のガスコンロは提供してくれるが、おいしい料理を作れるかどうかは調理人次第というシンセである。対してJD-XAやSledge2.0は麺と粉末スープとお湯さえあれば、万人が食べられるカップラーメンができ上がるだけのものだ。カップラーメンが食べたい時には重宝するが、舌の肥えた客に供する料理を作るには、あまりにも心もとない。
人は最上級の料理だけを食べて生きていくわけではないが、ファストフードしか知らない人に高級料理は作れない。別に最上級の料理が尊いと言うつもりもないが、そういう味があることを知っていることは大事だとも思う。この世には使い手が成長すればするほど良い音で鳴る楽器がある、と知っていることはとても重要だ。
Prophet 6ほどの突き抜け具合でなくても、refaceやKRONOSを見ればわかる。インスタントの権化のようなPCMシンセ(と呼ばれる再生専用サンプラー)であっても、音質とプログラミングを極めれば相当な高級料理に匹敵する味わいを醸し出すことができるのである。
かと言ってJD-XAやSledge2.0を否定するものではない。およそシンセサイザーと呼ばれる楽器には、どんな機種にもその機種でしか出ない音がある。そんな基本的な話をせずとも、JD-XAもSledge2.0も基礎能力は充分高い。「よく聴くアナログシンセ音」が必要な音楽なら、どんどん使えば良い。使い込むことで、もっとも得意な音色傾向も理解できるだろう。居場所は多くないが、ハマれば強力なシンセではあるのだ。
Prophet 6は筆者にとってアナログシンセサイザーの理想形のひとつである。ユーザーインターフェイスの点からはいくつか注文が無いわけではないが、音質、音圧、エディットパラメーター、鍵盤アクションなどなど、技術者が丁寧にチューニングしたであろうことが明白にわかる。「合成機」の名のとおり、様々な要素を組み合わせながらナニモノかを作り出す機材である。Prophet 6には「この世に無い音を自分で作る喜び」が純粋にパッケージされている。私が小学生の頃に夢に見るほど憧れたシンセサイザーとは、これなのだ。
【試奏記】Roland JD-XA
【試奏記】studiologic Sledge2.0
【試奏記】Dave Smith Instruments Prophet 6
【試奏記】YAMAHA reface CP
【試奏記】KORG KRONOS(new)
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