暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

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The Future Formers Bigbandのライヴで思ったこと

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林宏樹君が率いるThe Future Formers Bigbandのライヴを見てきた。演奏が素晴らしかったのは言うまでもないことだが、でも言わないと伝わらないので書いておく。素晴らしい演奏だった。このエントリーでは演奏云々の他に、地方在住のミュージシャンが音楽を届ける工夫とは?という観点でも書いてみたい。


ビッグバンドのライヴはほぼ初体験なのだが、音圧に驚いた。音圧というよりも、もはや「気」だな、あれは。そもそもステージの上に乗っているのは自身のリーダーバンドやソロ名義で単独のライヴをやるような人が多数含まれていて、音そのもののクオリティが高いのは当然ではある。だが数曲聴き進めるうちに、それらの手練れ・クセモノたちがバンドの「パーツ」として恐ろしく高次元で機能していることの方に、大げさに言えばちょっと感動してしまった。これらの手練れたちを率いる林君の覚悟みたいなものに、あるいはその心意気にミュージシャンズが共鳴していることに。

林君のオリジナル曲は1曲だけで、あとはほぼ全てがジャズの"どスタンダードナンバー"ばかり。しかし目眩くばかりのアレンジが施されていて、最後の1曲までハラハラドキドキ。フレーズの再構築やリハーモナイズ、新しいフレーズやブリッヂの挿入など、聴いてるだけでアレンジの勉強になる。全て人力による演奏だからこそ、普段はやり過ぎないように気をつけている「けれん味」的なフレーズや手法が本当に生きる。ベースとバリトンサックスとバストロンボーンのユニゾンによるドローンなんて、大げさでなく鳥肌が立った。我が心の師匠である榊原光裕師も出演していたのだが、コンポーザー気質の師によるけれん味たっぷりのソロなんてなかなか聴けない。もうけたもうけた。

PAを通した音ではあったが、ものすごいダイナミクスは充分に味わうことができた(音響さんの良い仕事)。逆に言えば、商品として流通する、普段我々が耳にする音楽にダイナミクスがほとんど無いことがよくわかる。こんな部分にも手練れミュージシャンズのプライドを伺い知ることができる。

とまぁ演奏を褒める言葉はいくらでも出てくるのだが、どうせSNS上に同じような賛辞が並んでいるだろうからこれくらいにする。私が演奏と同じくらい関心を持ったのが、今回のコンサートの制作の仕方だ。

まずポスター・チラシのクオリティが高い。どういう風に作ったのか聞きそびれているが、デザイナーさんが入っているようだ。チケットもメンバーの手売りではなくチケットぴあの取り扱いだった。実はこれだけでコンサートの格が上がる(ように観客に錯覚させる)のだ。とっても大事。よくよく見ればメンバーひとりひとりにオリジナルスタンプ柄がデザインされている。凝ってるなーと思っていたら、なんと当日はスタンプの現物をメンバーが終演後押印してくれるというサービスまであった。このビッグバンドライヴは今後も続けていくんだそうで、3年分スタンプを集めるとプレゼントをもらえるという。林君とラジオ番組でご一緒しているパーソナリティによるナレーションまで加え、とてもフレンドリーな進行だったことも特筆すべきである。ジャズのライヴでこういうのは珍しいけど、取っつきやすくするという意味ではどんどんやった方が良いと思った。客席で感じる限り、特にこの夜は「普段はジャズなんか聴かない人たち」が多かったようなので、そういう気配りというか、平たく言うと慣れない観客へのホスピタリティみたいなものが胸に染みたのかもしれない。

何と言うか、極端な言い方だけど、もはや「良い演奏を聴かせるだけではお客は来ない」と思うのだ。いや、2〜30人ならコアな音楽好きは集まるとは思う。仙台という地で、コンサートをそれ以上の規模にするのは容易ではない。当夜の入場者数は130名を超えていたそうだが、その人数は明らかにチラシデザインを含めた「ホスピタリティ」の勝利だと思う。(音楽に限らないが)普段愛好しない人を集めてこそヒットなので、「とっかかり」とか「関わり代」は広く多めに取ってあげた方がいい。それも間違いない。

それにしても、ビッグバンドの演奏に適した会場とはどういう場所だろうか。仙台には意外にそれが無いことに気がつく。あの人数であの音量なら、会場さえ整っていればほぼPAレスで行けるんじゃないだろうか。もしそれが実現したらこれほど贅沢な体験はない。良質な会場の創出まで林君に期待してしまう…と言ったらおんぶに抱っこに過ぎるだろう。しかし"巨匠"にはつい求めてしまう。

がんばれ!林宏樹!!

※Journey to JAZZというタイトルとその丁寧な進行から、ライヴの最後はヒップホップで終わるんじゃないかと思っていたが、デキシーランドジャズあたりで終わってしまった。これはフュージョンとかヒップホップを聴きたきゃ来年再来年も来いよ!ということに違いない。遠大な計画であることだなぁ。
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