暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

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向山こども園パフォーマンス・もやもやもやもや

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向山こども園での渋谷裕子、佐藤弘基、齋藤寛とのセッションは終了した。予定していたことはある程度できたが、それが正解かというと、一概にそうも言えない面がある。





向山こども園は、ずいぶん先進的な園経営をしているように私には見える。限りなく園児の自由・発想は優先され、先生方は日々(カッコよく言えば)そのファシリテーションと安全管理に全力を挙げている。簡単に言えば子どもたちは園にいる間は基本的に自由で、給食などの本当に全員で行動するような場面以外は好きなことをしていていいらしい。マジか。うらやましい。私が通いたかったくらいだ。だから今回のセッションも参加したい子はすればいいし、興味のない子はいつもどおりに好きなことをしていればいい。そもそも我々への園からの依頼は「子どもたちに身体を動かすことは楽しいということ、音楽を演奏したり聴くことは楽しいということを体感させてあげてほしい」という要望だった。先のエントリーに書いたとおり、根源的かつ普遍的な問いで、私など怯んでしまうレベルである。もっともこの自由な雰囲気の園からでなければ発想されないような依頼ではある。いつも生活している環境で、突然ダンサーとミュージシャンが子どもたちを巻き込んでパフォームして、「楽しい!!」と思ってもらうのが取りあえずのゴールではある。しかし、ということは、興味を引けるかどうかは100%こっちの責任で、いざ楽器を携えて乗り込み、踊ってみせても、我々の周りにはひとりの園児もいない…という事態が起こり得るのだ。思えば我々は「どうする?ひとりだけとか、ふたりだけだったりしたら…」と言いあって引きつった笑いを浮かべているばかりだった。まぁゼロじゃないにしても、数人とか10人の少人数ってことは充分あり得るし、約90分その子たちの興味を惹き続けなければならない。人数のことよりも彼らの気まぐれな興味にどうやって我々が反応していくべきか、どうやって興味を持続させるかということにばかり気を配っていた。

40人、50人の園児がいっきに押し寄せるとはほとんど考えていなかったのである。

予め全員で訪れた下見の結果、当初予定していた園のホールではなく、「アトリエ」と呼ばれる教室に隣接する吹き抜けの開放的なスペースに会場を変更し、当日朝は楽器を準備をするところからがパフォーマンスであるとした。齋藤君の持ち込む太鼓には興味を惹かれる子はきっといるだろう…なんて言っていたのだが、フタを開けてみたら楽器を運ぶ我々に何人もの園児が興味津々にまとわりつき、手伝ってくれたり話しかけたり園は大騒ぎになったのである。

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いざ楽器をセッティングし終わっても、放っておいてくれるどころか子どもたちはどんどん増えていき、それぞれの楽器に手を出したり質問したり大騒ぎである。サウンドチェックのようなことを始めると裕子さんも小物の準備するようなウォーミングアップするような、それとは気付かれないように身体を暖めているようだ。この辺で「誰も参加しない」という恐怖は胡散霧消し、この大騒ぎをどう設計図に沿ってリードするのか?が問題になってきた。

でもみんな良い子なの!これは触っちゃだめ!と言えば両手を背中に回して身体を引くし(笑)、質問もちゃんとこっちの様子を伺って、邪魔しないように気をつけてくれる。こういうのを「子柄が良い」というのだろうか。元気で自由で。これが保育参観だとしたら私は始終ニコニコしていられるだろう。しかし彼らと楽器で対峙するとなるとまったく話は別で(笑)、このリトルモンスターたちとどう渡り合うのか、具体策は不明なれど、とにかく目の前のことに本腰を入れなければならなかった。この段階でもダンサーとどうコミュニケーションするのかという、根本的な言語獲得、あるいは学習の段階で、その辺の不確定要素もあった。

今回一番印象的だったのは、それぞれの教室で朝の会を終えた子どもたちが再び集まってきた時だった。音が出ていて(曲が始まっていて)、ダンスも始まっている状態で子どもたちを迎えたいという裕子さんの考えで、誰もいないがらんとしたアトリエで、我々だけのパフォーマンスが始まった。すると、あれだけ我々にまとわりついていた子どもたちが、誰一人としてアトリエに入ってこられなかったのである。みんな目をキラキラ、廊下に鈴なりになって我々を凝視しているのだが、入れないのだ。彼らのことを良い子だなーと思ったのは、この時の彼らの顔と、ちゃんと演者に敬意や畏れの気持ちを持っていることが伝わってきたからでもある。

パフォームの途中で裕子さんが床に倒れ、「起きるの手伝ってー」と声を掛けたら、雪崩のごとく子どもたちがアトリエにわーーーーっ!と(笑)。その後からはカオスで(笑)。用意していたネタを裕子さんとのアイコンタクトで次々に演奏していくが、時々裕子さんが行方不明になる(子どもたちに紛れて見失う)くらいの大騒ぎ。結果的に

子どもたち<裕子さん>ミュージシャン

という図式が強固なものになっていき、それが最後まで崩れなかった。これが今回のキーポイントで、良かったのか悪かったのか。実は全てが終わって、園の先生、コーディネーターの千田優太君(一般社団法人アーツグラウンド東北)も含めた振り返りをした時も、大勢の子どもたちとパフォーマンス側の関係が難しかった…という話になった。あの人数と対峙するにはファシリテーターが裕子さんひとりではやはり無理だ、と。また子どもたちといっしょに参加していた園の先生方も、裕子さんの動きに沿うことに集中してしまい、アシスタント的な振舞いではなかったのも、もったいなかった点であり次につながる点でもあった。つまり先生方にも我々の側、すなわちパフォーマンスする側に寄り添ってもらうように、事前にワークショップなり話し合いをしておけば、大勢の子どもたちにももっときめ細かく対応ができたのではないかということだ。これは一気に場をひっくり返す可能性があると思った。もし機会があればぜひやってみたい。

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齋藤君は自身が百戦錬磨のワークショップファシリテーターなので、ずいぶんもどかしい思いもしたようだ。パフォーマンス中に、裕子さんではなくミュージシャンに興味を持つ子もそれなりにいて、特に太鼓というプリミティヴな楽器に興味を示す子は多かった。本当はそういう子どもたちにも一対一で対応したいのだけど、裕子さんのサインを見逃すわけにもいかないし、ミュージシャン同士もリアルタイムで音楽を作っている以上、集中しないわけにはいかない。「あー!もったいない!」と思いつつ叩いていたという。

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弘基ちゃんはもっと「そもそも論」的な指摘をしていて、「楽器の選択自体を間違っているんじゃないかと思う」と言っていた。つまり今回のパフォーマンスにウッドベース奏者が最適だったのか?という意味だ。ウッドベースは楽器の特質(音域も音量も低い)から言って、場面をガラッと変える力は無い。でもあれだけ大勢の子どもたちと向き合うには、そういう力技が求められる場面も多い。「ベースはホリゾント幕の色がじんわり変わるような変化は生み出せるけど、ピンスポットで一ヶ所だけ抜く(明るく照らす)ことはできないんだ」とも。これはみなさん、メモですよ、メモ。優秀なベーシストじゃないとこんなこと言えない。

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今回とても印象的だったのがこの子。
齋藤君の隣で最初から最後までシロフォンを叩いていたのだが、
きちんと我々の音を聴いて反応していた。
きっといいミュージシャンになる(笑)

私自身は、もっと手前の部分で反省点があった。あれだけの人数の園児と、4人のパフォーマーがきめ細かく対峙しようとすることには、繰り返すが無理がある。あの人数が集まった段階で、もっと観賞型のパフォームに切り替えるという大胆な決断があっても良かったんじゃないかということだ。もっともそういう準備はしていなかったので決断しようにもできなかったのだが。そして園の先生がおっしゃる、先生方もファシリテーションに加わってもらうプランはぜひ挑戦してみたい。

裕子さん自身はそういった諸々を飲み込んだ上で、「もっと音楽と絡みたかった…!」と。ちゃんと演奏は聴いていたから身体がそっちに反応しそうになるけど、子どもたちから気を削ぐわけにもいかず、とてももどかしかったという。「そんじゃ、逆にこの4人でもう一回やろうよ。踊りと音楽のガチで」という話をした。齋藤君はその振り返りをしていたカフェの店内の響きがとても良いから、ここでやれたら最高じゃん!みたいなことを言う。するとそのカフェで企画する店内でのパフォーマンスシリーズを3、4、5月に予定していて、4月と5月の演者が未定なのだという。私たちでよろしければ…ということで4月初旬、再びこの4名が組むライヴを行うことになった。いろいろともどかしくモヤモヤしたものを味わった幼稚園でのパフォーマンスだったが、4月は表現者としての試行錯誤をたっぷり味わいたい。そこできっと4人の言語が得られるだろう。その上でもう一度子どもたちと相対してみたい。先生方も巻き込んで…。


このイベントの4月版です
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