暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

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「ほねの音・音のほね」

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ダンス幼稚園カウントダウン3,2,1!「ほねの音・音のほね」が終了した。普段会えない方と出会う場、普段挑戦しない音楽に挑戦できる場、普段意識しない脳のチャンネルにアクセスする場、であった。この日のメンバーは以下のとおり。

ダンス:渋谷裕子
パーカッション:齋藤寛
ウッドベース:佐藤弘基
シンセサイザー、鍵盤ハーモニカ:服部暁典

このパフォーマンスは、2017年2月7日に行われた向山こども園でのワークショップと対になっている。このワークショップ直前のリハーサルと当日の様子は以下をごらんいただきたい。

おもしろければそれでいい

向山こども園パフォーマンス・もやもやもやもや

あまりにも色々なものを得たので、文章がどうしても冗長になってしまう。せめて章立てしてみる。


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■この公演開催のきっかけ
鍵盤、ウッドベース、パーカッションの3名のミュージシャンとひとりのダンサーとで、こども園の園児たちとワークショップを開いたら、予想以上の人数の子どもたちが集まって、ひとつの目標だった「身体と音」へのトライが思ったように行かなかったことへの、今回はリベンジマッチである。つまり「園児とパフォーマー」「パフォーマー同士」というふたつのコミュニケーションチャンネルを達成しようと試みたが、前者を維持することにエネルギーの大半を傾けざるを得なかった…というのが本音である。大勢の子どもたちが素直に楽しんでくれたワークショップではあったが、後者のチャンネル、「身体と音」「音と身体」の化学反応はおあずけを喰らったような感触があったのだ。そのおあずけを補完すべく、ダンサーとミュージシャンでガチでやってみたい!という、言わば「わがまま」への挑戦であった。その結果冒頭に書いたように多くのものを得た。

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■普段会えない方と出会う場だった
まず会場だ。「Café 1un 2deux 3trois, soleil!」とは、こども園とのご縁がなければまず出会わなかっただろう。まさか向山にこんな野心的なカフェがあるとは思わなかった。お子さま連れOK、店内は土足禁止(靴をぬいであがる)。飲み物食べ物はオーガニック系。こども園でのワークショップ後、同じ敷地のこのカフェで振り返り中に今回のイベント枠のことを聞き付け、その場で名乗りを挙げた次第。ま、物事がするすると決まる時とはえてしてこういうものだし、そうやって決まった物事は多くの場合「アタリ」である。

会場は観客層の形成に影響力がある。加えてダンサー渋谷裕子が出演し、つまりミュージシャンだけのつながりによる観客層ではなかったため、普段の活動ではお会いできない方々に会えたことも印象的だった。この日ご挨拶できた方々といずれ何かできるのではないか。今から楽しみだ。

■普段挑戦しない音楽に挑戦
さて、演奏曲目を書いてみる。

2017年4月9日(日)『ほねの音・音のほね』演奏メニュー
1.Vent et Soleil(akinori hattori)
2.牧歌(宮沢賢治)
3.Duo1(Perc+Dance)
4.Duo2(W.Bass+Dance)
intermission
5.Duo3(Key+Dance)
6.Blue in Green(Miles Davis)
7.Dance with Sound Inprovisasion
8.Spring(hiroki sato)
encore
ふわり(水沼慎一郎)

変則的なアンサンブルなので、どんな曲をどうやってもチャレンジングではある(笑)。1.はこの日のために服部が書き下ろした。まずは名刺代わり。同じハーモニーの流れの上に異なるメロディを乗せて展開させるというアイデア。寛君と弘基ちゃんのあて書きなので作曲中からイメージが掴みやすかった。2.の宮沢賢治の書いた「牧歌」という曲は弘基ちゃんが持ってきた。弘基ちゃんが地元文化の勉強を思い立ち(彼は岩手県在住なのだ)、宮沢賢治の曲にリハーモナイズを施したもの。極めて個人的な感想だが(個人のブログだから許してちょ)「オレもこういう日本のトラディショナルな音階を、斜に構えず演奏できるようになったんだなぁ」としみじみしてしまう。何を言っているのかわからない方も多いと思うが、洋楽を根幹に持つ音楽ばかりを嗜好・指向してきた私としては、日本の土俗的な音楽とは数万光年の距離を感じる。そこに弘基ちゃんが切り込んでいったのも尊敬するが、それをポイッと放られてサクッと受け止められるようになった自分にもちょっと驚いた。単に年を取っただけかもしれない。

6.のBlue in Greenはあまりに有名なジャズスタンダード。なんと弘基ちゃんが歌詞付きで歌うという変化球にして豪速球。曲はもちろん知っていたが、弾くのは初めてでこんなハーモニーだと今回初めて知った。超絶美しい。そうとしか言いようがない。一生取り組むべき曲になるだろう。8.のSpringは弘基ちゃんオリジナル。もともとはベースソロ曲らしい。シンプルだが美しい曲だった。もっともっと口数少なく演奏できれば良かったなぁ。

■普段意識しない脳のチャンネルにアクセスする
さて「身体と音」の関係はどうだったのか。2月のこども園ワークショップのために1度リハーサルを行ったきりで、この公演のためにリハーサルは行わなかった。つまり音と身体を合わせてみたのは2度だけだった。裕子ちゃんは事前打合せの席どころか、当日直前のサウンドチェックでもどんな動きをするのか説明はしてくれなかった。実際に音が鳴ってみなければ(曲を把握してみなければ)どう動くのか測りかねるところがあったのだろう。裕子ちゃんはまず会場のカフェを下見したり、空間からアクティングエリアを想像したりして、場の空気を確かめることに時間を費やした。今回の演奏候補曲が具体的に決まり始めたのは本番の数日前でもあった。具体的な演奏曲を聴かずに動きを組み立てたることはできない、ということだったのかもしれない。

これを「ぶっつけ本番」と言うことは簡単だが、表現手段の異なる人同士が人前で場の空気を大切にして何かを作り出す(あるいは削り出す)場合、これはひとつの正直なやり方だと思う。特にコンテンポラリー系のダンサーにはこの「場の空気を読む」ことを重視している方が多いと思う。それはジャズミュージシャンが相手の音を聴いて自身の演奏内容を組み立てていく行為とごくごく近しい。ジャズの演奏では「合わせにいく」とよく言う。誰かの演奏に意図的に(時には)大げさに反応することを言うのだが、実際には身体の動きに反応して音を出すというのは、普段使わない脳のチャンネルを使う作業だった。表出するものは近しいかもしれないが、やはり普段しゃべっていない言語同士ではあるので、お互い言いたいことだけ言うが会話にはなってないなんてことになるかもしれないわけで。寛君も弘基ちゃんもオープンマインドなミュージシャンだから、おそらく会話は成立していたと思う。終演後にお話しできた数人の方の言葉では、ちゃんと会話になっていたようだ。

ちなみにDuo1〜3は、裕子ちゃんとミュージシャンひとりひとりが1対1でがっつり向き合う時間としてみた。今回のハイライトはやっぱりこの時間だったと思う。寛君のビリンバウやスリットドラムは、完全に裕子ちゃんの動きと会話になっていた。テクニシャンが口数少なくフレージングするとやはり音の重みが違う。その流れを引き継ぎつつ、見事に流れを変えた弘基ちゃんの導入部(なんと手拍子だぜ。やられた!)も、ボウイングによるロングトーンも、リフレインを繰り出す後半も、まるで弘基ちゃんが普段話している口調と同じ…感じがした。優れたパフォーマーになればなるほど、内面心理と直結なのかもしれない。

■最後に。自分はどうだったのか??
服部個人のプレイについて書くと、もっと鍵盤ハーモニカを吹けばよかったような気がする。ハーモニーを担当する楽器がキーボードしかなく、そこをどう判断するか、だった。ハーモニーを鳴らすことにこだわらず、もっと自由に、鍵盤ハーモニカの単音で突き進んでも良かったんじゃないかとも終わった今なら思うが、あんな重い楽器(YAMAHA S90XS)を持って行ってあんまり弾かないというのも釈然としない(笑)。少人数のアンサンブルは自由度が高いが故に、常に心を自由に保っていないと自分で自分の首を絞めることにもなるのだなぁ、と明るい大きな月を見上げつつ思い至る向山の春であった。ご来場いただいたお客様に感謝申し上げる。

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身体ひとつだけで動きを作りだし、骨の音が聴こえるような。極限まで音を削ぎ落とし骨だけの音を奏でるような。そのコンセプトは達成できた、と。言ってもいいんでしょうか(笑)。自信ありませんけど(笑)。裕子ちゃん、寛君、弘基ちゃん、どうもありがとう。またやろうね。

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カフェ3、2,1,soleil!は土足禁止。
終演後に確かめてみたらおはよう靴下になっていた…。
ずこー
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