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暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

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こうしちゃいられない

今日はアブナイ話題を書いてみる。

久しぶりに人様のライヴを見に行った。Sonido del VientoのCD発売記念ツアーの最終日とて、地元仙台のLivehouse ennでのコンサート。

この出演者がすごい。

もりきむ
Meg Music BAND
FOUR STEPS
Sonido del Viento

自分は所用にてMeg Music BANDから鑑賞。何がアブナイのかと言って、正直に感想を書いてみるからである。

Meg Music BAND
齋藤めぐむ君という奏者は今もっとも注目しているミュージシャンのひとり。お仕事(エレクトーンのデモンストレータなどしていらっしゃる)で弾いている人だからテクニックに関しては(少なくとも観客として聴いている分には)何ら不安は無い。精力的に曲も書いているし、演奏活動もまたしかり。正直に書くと自分にとって同志というよりもライバルである。

斎藤君のオリジナル曲を演奏。どれも耳なじみの良いきれいなメロディとあまりの隙のないリズム。想像するに、彼はメンバーに対して曲を提示する際にエレクトーンの演奏を聞かせるのではないか。リズムセクションのおふたりはそれを忠実に再現する方向で演奏しているように聴こえる。するとどうなるか。

基本的にダイナミクスが均等に近い。ON/OFFはあってもうねりはない。彼の作る曲はどれもドラマティックなメロディが多いのだが、ドラムもベースもヴェロシティ127で演奏される感があり、結果的に平面的な演奏に聴こえる瞬間が一度ならずあった。

キーボードトリオというのは彼のように過不足無く弾ける鍵盤奏者には最適なセットだと思う。が、エレクトーン奏者ゆえか、曲調をメロディやアレンジではなく、音色チェンジによって演出する傾向が見られる。しかしダイナミクスの演出がもっと大きく実現していたら、それはむしろ彼の強みになる要素だと思う(ちなみに彼が演奏していたのはYAMAHA S70XS。スプリット機能やレイヤリングなど、見事に使いこなしているようにお見受けする)。とても完成度の高い演奏は、裏を返せば完璧に打ち込みで構築された原曲を再現する作業の結果だったのかもしれない。だとしたらぜひリズムセクションのお二人のインプットをもっと大きくして、バンドとしての可能性を探って欲しい。そうしたらもっと凄いことになると思う。敵に塩を送るってこういうことか。

FOUR STEPS
いわゆるジャズファンク、コンテンポラリージャズというジャンルで、前述の「バンドとしての可能性」を真摯に追求するとどうなるか。それがFOUR STEPSの示す音楽である。ドラム、ベース、キーボード、サックス。オリジナル曲。

メンバー個人の技量が高いゆえに、往々にしてこの手のジャンルの音楽は確認のためのリハを1~2回、そしてすぐに本番という事態になりがちである。実際そういう現場でミュージシャンとしての技量が磨かれるという側面はある。「実はそうではない。ロックバンドのように黙々と同じことを繰り返すリハーサルを積み重ねてこその表現もあるのではないか(例えばブレッカーブラザーズみたいな)」というドラマー秋保太郎君の仮説の実証するバンドなのである。

そういう側面を知らずに聴いても、このバンドの曲はどれも素晴らしい。地団太を踏むとはこういうことだと思うが、演奏中はもうただ聞き惚れるのみ。そしてバンドとしてバランスが最高である。演奏後にメンバーに送ったメールには「4視点のレーダーチャートが正方形になっている演奏」と書いた。秋保太郎君とはよく演奏する仲なので、正直どうして自分に声がかけられなかったのか悩んだ時期もあったのだが(こうやって書くといやらしい、不遜な考えだが)、もっと早く演奏を聴いてみればよかった。FOUR STEPSに服部が入る余地は無いのである。鍵盤走者太田ひろみさんの淡々とした、しかし指先は情熱的な演奏は服部には全く無い要素であり、FOUR STEPSに必須の要素である。早くレコーディングしてください。

Sonido del Viento
すでに大勢の固定ファンもいる。とにかくいろいろなオンリーワンをもっているユニットだと思う。随分初期からその演奏に触れているが、新しいアルバムのレコーディングも経て音楽性が確立された反面、新しい要素の取り込みが希薄になってきたように思う。もっともそれは観客としての無いものねだりなのかも知れないのだが。だが鍵盤とケーナという演奏コアでどういうことがやれるのかという音楽的追求はまだ可能だと思う。パーカッションがいるとかベースがいるとか、それは付帯的な要素に過ぎない。別の言い方をすればソニドの曲を例えばマリンバ奏者が演奏したらどうなるか。そういう普遍性というか耐久性を曲が持っているか。乱暴だがそういう視点での校正も時には必要なのではないか。オーディエンスが求めるソニド像をどれくらい裏切るのか。これは非常に高度な判断だと思うが、結束の固いユニットだからこそできる冒険があると思う。最初のゴールには到達したのだから、財産の利息で食べていくようなことはしないで欲しいなぁと控えめに希望する。

脇を固めるミュージシャンもみな凄腕。って言うかさぁ、あの晩ennのステージに出ていた人たち、みんなすげえよ。歯軋りしましたよ。こうしちゃいられない感120%って感じでした。良い演奏を聴かせてもらいました。ありがとうございます。

こんな不遜な文章をアップしたからと言って、服部をほさないでほしい。演奏で恩返しします。がんばります。
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| 音楽雑感 | 07:35 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

次のライブ、楽しみにしてます!

ところで、ネットに出てた
「KORG iELECTRIBE」
は、凄いんですか。
これの為にiPadを買う、くらいの人がいるとか?

| としゆき | 2010/04/05 11:05 | URL | ≫ EDIT

◇としゆき殿
ぜひまたお越しください。

iElectribe、見てみましたよ。う~ん。確かにiPodTouch/iPhoneではこいつはつっこめないなぁ…。KORGは任天堂DSソフトとしてシンセをリリースしてたりして、なるほど、こういうことにも力を入れてるんだな、と言う感じですね。

iPadとの相性はとても良いと思いますが、iElectribeじゃないと出来ない音楽があるか?と問われればそれはちょっと疑問。このElectribeシリーズはぜひハードウェアで持っておきたい「飛び道具」という認識です。iPad、キーボードを増設するだけで飛躍的に使い勝手が向上する、という最速リポートを読みました。さもありなん。

| はっとり | 2010/04/05 18:15 | URL |

ありがとうございます!
「飛び道具」という言葉でイメージすることができました。
このようなソフトが幾つか出てくる事があればハードウエアとしてのIpadの必要性が上がってくるでしょうか。
取りあえず、様子見ですね。

| としゆき | 2010/04/06 06:34 | URL | ≫ EDIT

◇としゆき様
iPod Touchを使い始めてけっこうな時間が過ぎましたが、アプリを追加するのは楽しいものの、このアプリがあるので手放せない!ってのは正直iCalだけですね。つまるところ、オレはアプリケーションに惚れてハードウェアを買うのではなく、まずハードウェアに魅力を感じてから買う性質なんだと思います。

iPadって、たぶんパソコンに詳しくない人のほうがより必要性が高いような気がします。日常生活で使うPCだって、ブラウザとメーラーとワードとエクセル以外にあと何が必要?という人が半分以上だと思うんですよ。

これまでPCに依存してこなかった人の方が、すんなりiPadを使いこなすような気がしますね~。

オレとかとしゆき君は、あきらめてMacBook Proとかを買うしかないのです。

| はっとり | 2010/04/06 08:51 | URL |















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