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暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

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公共性の高いレコーディングシステムの構築

仙台市某施設のレコーディング関係施設の管理を担当しているE氏より相談を受ける。レコーダーとして使用しているMACKIE.SRD24/96が危篤状態だと言う。以前からこの機材の耐久性の低さと日本現地法人及び法人が日本を撤退した後の代理店のサポート体制の劣悪さに嫌気が差していたE氏は、スタンドアローンのハードディスクレコーダーとはすっぱり縁を切ろうと思い立った。

相談の内容はそれをリプレイスするレコーダーを何にするか、という件である。

はっきり言って、この現状でdegidesign protoolsを導入しないという選択には余程の理由が必要だろう。利用状況から考えてLEが現実的な選択であることには服部もE氏も異論は無い。問題はプラットフォームになるMac本体と周辺環境である。

Mac本体はMacPro買えばそれで解決のように思えるが、アマチュアミュージシャンが自ら卓前に座るような規模のレコーディングケースが多いその施設では、むしろiMacの方が便利か?とも思えるとE氏は言う。私は熱対策の問題と、万一のトラブル時に根こそぎ修理に旅立ってしまう一体型を待ったなしの現場に使用することには抵抗を感じる。またiMacでは入出力インターフェイスの絶対数が足りない場面があるのではないかとも危惧する。

周辺機器の問題はもっと複雑である。2010年現在のLE導入の稼ぎ頭003では、バンドの同時録音を行うことがあるその施設には少々役不足である。具体的に言うと003の入力数は16だが、その内の8つがアナログ(003本体のA/D)であり、残り半分の8つがadatオプティカルである。すなわち8chごとにA/Dが違ってしまうのである。ドラマーやエンジニア次第だが、ごく普通に考えてドラムセットだけでも12chくらいは消費してしまう。つまり例えばタイコ単体に立てるマイクを収録するA/Dとトップやアンビエントを収録するA/Dの音質が違うことになる。

私は割りとこういうのを気にする方である。

かと言ってでは16ch以上を同時処理できる、あるいは8ch単位のA/Dは高価だし、その施設の利用率を直視すれば費用対効果の面でオーバースペックという指摘に的確な反論ができない。またPCそのものを持ち込むケースも少なくなく、その際はむしろUSB接続によるインターフェイスの方が重宝することすらあるという。

いやぁ、公共性を考慮した機材選定は難しいなぁ。おそらく8ch単位のA/D音質の差など軽微なものとして無視し、003を導入することで決着がつくのだろう。重要なのはユーザーがHDDドライヴを持ち込み(すでに録音済みのファイルをミックスダウン目的で持ち込むこともそれなりに多いらしい)、最大公約数的protools LEで持ち込みHDDに録音し、トラブルなく持ち帰れるということなのだ。

でもせっかくあれだけの卓とマイクがある環境で録るのに、A/Dでコケるのはオレはヤだなぁ。最後の最後でストレスを感じたくない…。もっとも003とa-dat、あるいはMACKIE.のA/Dの音質差について、的確な指摘ができるかと問われれば、それも自信はないが。
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| 機材 | 00:27 | comments:7 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

駅裏の公共ホールには一応レコーディングできる設備があり、それこそprotoolsが入っているのだが、それを使えるスタッフがホールにいない。
これが○岡です。

| richard | 2010/04/20 06:30 | URL |

◇richard様
結論は結局いつも「人」ということになるんですよね。こないだのGlaysky Rhodesさんの日記と似たような話です。

幸い今回の件ではスタッフにはスキルはあります。しかし「小屋管理」という名目で契約している関係上オペレートは業務範囲外になってしまうというジレンマが実はあります。

これはちょっと突っ込んだ使い方をしようと思うと、全国のほとんどの公共ホールで直面する問題だと思うんですよ。プロのお仕事だから義理人情だけで手を貸すと返って事態を悪化させる可能性もゼロではないですから、経験のあるスタッフであればあるほど慎重になってしまう。

でもやっぱり困っている人(多くはアーティスト)がいて、スタッフにスキルがあれば何とかしてやりたいと思うのが普通です。だからナイショで手を貸す人もいるし、ヨソの施設との差別化のために積極的にオペレートに手を貸す方針の施設もぼちぼち増えてきてます(それはそれでまた新たな問題が生まれますが)。

これはエンジニアに限った話じゃないですが、お金を取る以上きちんとした結果を求められるけど、提供する技術に見合う報酬が手当てされているかというと、残念ながらまだきちんとしていないところが多い。これは公共ホール(と言うよりも管理している自治体)がこの「管理と操作」という切り分けをいつまでもグレーゾーンにしてしまっているからです。仙台だけかな。

でもでも、やっぱりモノを創る現場ではみんながいっしょに力を出したいし、ハッピーでいたいじゃないですか。だから心あるスタッフはやっぱり最終的には手伝ってしまうんですよね。ユーザーだって結局は施設ではなく「人」に惹かれて使う施設を選ぶはずですし。で、結局は「人」の問題。

自治体でも外郭団体でも、スキルある人材こそが財産なのだということに早く気が付いて欲しいと、とある外郭団体に籍を置く私でも思います。

| はっとり | 2010/04/20 09:17 | URL |

この話は、最近私も痛感してまして…。
私のmixi日記のレコーディングは、ベーシックトラックは仙台で作業してまして!
はい!SCAで収録しました。
http://www.sendai-com.ac.jp/
ここは充実してて、卓はSSL、DAWはprotoolsとスペックも素晴らしい!
キューボックスも6aux+2mixで返せるので商用スタジオクラス。
また、生徒さんが研修としてアシストしてくれるので完璧です!(っていうか生徒さんが素晴らしい!)

で、そのベーシックトラックを各トラック1本化してもらって、スタジオ ハピネスでオーバーダブという感じでした。
こちらは、O2R96、NUENDOです。
モニター返しは2mixを返してあげる感じでした。オーバーダブなら問題ないですよね。

で、私の環境といえばdigital performerだと。

今回の場合の問題点としては…。
各トラックを1本化して書き出してもらえれば、問題なくできるが、できれば保険でセッションファイルでのやりとりができるとなお良し!

digital performer、nuendo、logicなどはAAF、OMFの読み書きが出来るのですが、protoolsはオプションソフトを導入してないと出来ない。
これは公共性から考えれば、導入すべきでしょう。
http://www.digidesign.com/index.cfm?langid=5&itemid=4873
この辺がprottolsは殿様的でちょっとねぇ…。

あと、>具体的に言うと003の入力数は16だが、その内の8つがアナログ(003本体のA/D)であり、残り半分の8つがadatオプティカルである。すなわち8chごとにA/Dが違ってしまうのである。

私も気にする方です。
であれば、LEではなくM-Poweredを選択して、インターフェイスはProFire 2626を選ぶと思います。
そうすれば、ADATプロトコルでデジミキを使えば良いかなと。(もしくはmotu 2408か8preを2台購入してDA変換に使うとか。音質良いし。これで16ch確保!)

そんな感じでしょうか。

| SAKASHITA | 2010/04/20 10:56 | URL |

◇SAKASHITA様
あ、なるほど!M-Poweredというテもあるのですね。ソフトウェアそのものがCPUベースでもオーディオインターフェイスの機能的なカテゴリーが若干上に伸びますね。

SCAはまだ足を踏み入れたことがないのですが、たしかSSLのAWSだったかデュエリティだったか、とにかく新世代ハイブリッド卓ですよね。卓も重要だけどキューに6aux返せるのはいいな~。件の施設は4mono aux(+1Stereo)です。ちょっとハラハラする時があります。

基本的に異なるDAWをまたいで作業する場合、現実的にはセッションファイルに含まれるような情報はあきらめちゃいますね、オレなら。とにかくアタマとケツ揃えて一本ずつ書き出してくれ、と。あとはこっちでやるわ、と。SAKASHITAさんに比べてそれほどシビアな現場ではないという事情もありますが、それで致命的に困ることは無いと思ってます。

で、やっぱりLEだろうがM-Poweredだろうが、結局ハードウェアの上限で悩むことになるわけですね。理想を言えばオレはApogeeのAD-16Xがど~んと2台ってプランなのですが、仕様を見るとPTHDじゃないと認識されないみたいで…。まぁPTの仕様がオレは良くわかっていないので、単体で追加して認識されるのかわからんですが、もしLEがiLok的なドングル起動が可能ならSSLのAlpha-Link AX(MADIはいらんでしょう)があればこれでごきげんなはずなんですが…。

残念ながら件の施設にデジタル卓(例えO1Vでも)を導入する機運は今のところないので、まずはインターフェイス単体で16chA/Dを解決したいな、と。

| はっとり | 2010/04/20 14:47 | URL |

追加でオーディオインターフェイス方面について。

同時変換可能なチャンネル数も重要は重要なのですが、卓をはじめとした周辺機材とのバランスも考えて、PC直前のインターフェイス、いくらa-dat変換後のデジタル受けだとしても、数万円台の製品でお茶を濁すという選択は無しにしてほしいなぁと。

SAKASHITAさんのコメントを読んでからE氏とも話してみたのですが、

1.a-dat受け多チャンネルI/FとA/D単体製品との組み合わせ
2.a-dat受け多チャンネルI/Fとデジタルミキサーの組み合わせ
3.あくまで多チャンネルA/D変換が可能な単体I/F

の3パターンかな、と。

1.については先のコメントのとおりですが、PC直前の受け担当I/FはFireWire接続のProFire 2626で。A/DはApogee AD-16XとかSSL Alpha-Link AXとか業務レベルの中でもハイエンドな感じで。

2.については、そもそも備え付けの卓がSSL Eシリーズなので、可能性としてはこの2.プランを採用する可能性は低いかなぁ…と。A/Dとしてデジタル卓を導入するとしてもSSL Eの横にA/D変換のためのデジタル卓が置いてあるのは違和感ですし(笑)、DAWのフィジカルコントローラーとして使用するにはデカイし、そもそも置き場所確保がツライ。

とは言えこの考え自体がオーバースペックかもしれないという疑惑もあります。そんなに予算が無いという単純な足かせが今後発覚するかもしれません。フィジコンを兼ねて003のコンソールタイプでいいじゃんとか一気に割り切ってしまう可能性もあります(笑)。

3.これは仕方ないからM-Audio ProFire 2626かな…。これを2台買えばなんとかなるか…と思います。にしても4000万円の卓の出音を8万円のインターフェイスで変換かよ~(泣)。

すごく簡単な話、ユーザーが192I/Oを持ち込んだ時に、こそこそ隠したりしたくなる機材は置いて欲しくない、という(笑)。

それにしてもdegiの殿様っぷりには少々腹が立ちますね(笑)。「積極的に使わない」くらいしか反抗のしようがないのも腹立たしい。結局HD買うしかないじゃん、みたいな。

| はっとり | 2010/04/21 17:12 | URL |

ああ!ひょっとして青◯文化かな?
であれば、プラン1でしょうかね。
とりあえずEuphonix MC controlがあると便利かもですね。

といいつつ…。
先日SCAの講師の先生とも話したのですが、CPUの処理が上がってきている現在、prottolsにアドバンテージはあるのかな?なんて話をしてました。
motuは正直言って音は良いが、いつかアブナいような気もするし(苦笑!)

となるとNUENDOかな?とも思ったりします。(操作は好きじゃないけど…。)

でも最近これも気になる!
http://www.electroharmonix.co.jp/presonus/studioone.htm

| SAKASHITA | 2010/04/22 13:33 | URL |

◇SAKASHITA様
さすがのご明察。SSBセンターです。かつては私も管理担当者だったわけです。その頃はa-dat xtを4台(1台はバックアップ)で回してました。

ですよね?そう思われますよね。プラン1ですよね。EuphonixとSSLなんて、米英の雄ががちんこバトル!ってかんじですね。極東の東北地方で(笑)。件の施設のSSLはオートメーションがいっさい付いていないので(笑)、せめてフェーダーポートでもアルファトラックでもいいから、フィジカルコントローラーが欲しいところです(最優先じゃないけど)。

おっしゃるとおり、CPUベースの機能的な底上げは非常に早く進んでいると思いますが、逆にProtoolsHDで、再生中にdspのパワー不足で止まっちゃうなんてことはないんですかね。私ごときのプロジェクトではせいぜい使ってもオーディオトラックが20~28トラックくらいに、プラグインインストが4~6コって感じですが、G5(2.5GHz DUAL)では稀に止まります。これがプロの現場では下手したら50~60トラックは当たり前ってことになるようですから、いくらCore i5とか7でも大丈夫なの?と老婆心ながら思います。

今このエントリーで話題にしている施設のコンセプトは「アマチュアにもプロクオリティの機材と環境を」というものですが、SSLを備えているからハイエンドコンバータが欲しい!と思うのはSAKASHITAさんのようなプロと私のような機材マニアなわけで、利用者層の実態を考えるとそんなに金をかけなくても満足してもらえるのかもなぁとも思います。こだわる人は結局持ち込みますしね。で、NUENDOも検討のまな板に上げましたし、いっそ…ということでPyramixも考えました。でもやはりアマチュアミュージシャンがなけなしのお金を出して、ちょっと良い環境でオレ達の音を録るぜ~!と意気込んでくるわけで、ユーザーインターフェイスたるDAWをあまり特殊なものにしたくない、という気がします。ヨーロッパでは日本のようなPT一色ではなく、NUENDOもそれなりのシェアがあると聞いたことがありますが、日本の現状ではPTが無難でしょう。さもなければDP、Logic、Cubase、Liveなど主要な複数のDAWを揃えるくらいの覚悟が必要かと。となると管理側の人的負担やアップデートなど手間と費用もそれなりに増えます(すいません、そこを無視できないので)。その割に利用率はそんなに高くないというジレンマが…。

でもSAKASHITAさんとのコメントのやりとりで、けっこうピントがあってきたと思います。その後E氏がどんなプランニングと見積もりを取ったのかまだ聞いてないですが、決着したら改めてエントリーしようと思います。ありがとうございます。

それにしてもPresonusがDAWをリリース…。MACKIE.のTraktionがけっこう気になってはいたんです、オレ(笑)。PTのテープレコーダーを徹底的にデジタルに置き換えるって発想は良いと思うんですよ。実際だから浸透したんだと思いますし。Traktionは一度デモをインストールしてみましたけど、MTRライクな発想でしたね。音楽制作(プリプロ)にはちょっとツライ感じがしましたが。Studiooneはどうでしょうね。最近こういうことを考える時、いっそMIDI(プラグインインスト含む)作業とオーディオ編集メインのミックスダウン作業ではソフトウェアを分けちゃおうかなと思ったりします。両方優等生になろうとするから無理がくるような気が…。

そういえばdegi(Avidだったかな)がギブソンからopcodeの権利を買い取ったって話はどうなったんだ??そしたらPTのMIDI機能がまんまvisionになってすごい良いソフトになっちゃうのか?と一瞬期待したんですが。

| はっとり | 2010/04/22 20:01 | URL |















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