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暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

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嘘のない世界

悲しいけれど日々の生活は流れていく。6月中旬からつい昨日までかかりきりだった「ノーチラス」公演の初日のステージを観てきた。初日だけに色々あったように見受けられる。特に音響のあゆ子さんは苦労したことだろう。今夜の公演を以て本公演のあれこれを言うのは早計だと思われるので、昨日の稽古場=会場で感じたことを記す。

手元にあるTheatreGroup OCT/PASS「ノーチラス~我らが深き水底の蒼穹~」公演のパンフレットを見ていると、色々考えるものがある。まず集まった役者陣、スタッフ陣の層の厚さである。主宰者石川裕人さんの活動歴を考えればこれは当然のことと言える。今現在仙台(やその他の地域)で活動するベテランも、実は裕人さんと盟友関係だったり芸名の名付け親だったりしているのだから。それほど裕人さんと所縁のある演劇人は多い。

役者を支えるスタッフ陣も、また錚々たるメンバーである。現在の仙台のパフォーミングアーツを裏から支えている面子が多数集まっている。そしてこれから育っていくであろう若手を多く起用していることも素晴らしい。むしろこの点がもっとも素晴らしいことかもしれない。

そんな舞台に自分が音楽作家として関われたことを素直に誇りに思う。芝居というのは(と自分が偉そうに書く資格は無いけれど)実にたくさんの才能とエネルギーを必要とする。役者は言うに及ばず、照明、舞台装置、音響、衣装などなど、その道の優れた感性と技術を必要とするシロモノだ。公演前日のゲネプロ終了後、ステージに集まる関係者の顔はとても良い顔だった。ただその場にいるだけで、心地よい空間になっていることを実感できた。

それはなぜかと考えると、技術のある人たちが集まり、全力で、手を抜かずひとつの舞台の完成に一心不乱になっているからだと思う。もっと言うと昨夜のあの場所に集まっていた誰もが嘘をついていない。言い訳をしていない。誰もが「やってやるぜ!」と心の中で思っていたはずだ。もちろん私もそのつもりで音源を制作した。

ノーチラスは計8回の公演である。毎日少しずつ成長していくだろう。それはただただ良い舞台を作りたいと真剣に自分の役割をまっとうする人たちだけが集まることによって生まれる「やる気と責任」の成長なのだ。

翻って、私の周囲にいるミュージシャン達からも同じ気を感じることができるのは本当に幸せだ。良い演奏をしたい、良い楽曲を作りたいと思うけれど、突き詰めれば表現活動の喜びとは、「嘘のない世界」に身を置き、このような人と人の縁をより深いレベルで実感できることではないのか。偶然にも今日、仙台の音楽界は貴重なひとりのドラマーを永遠に失った。だけど彼と彼の周りにあった「嘘のないやる気と責任」はこれからも仙台の音楽界を成長させていくだろうし、我々の記憶から失われることもない。オクトの芝居を見てそのことを実感できるのは嬉しいが、一ノ瀬健治を失うことでそれを感じるのはとても悲しい。

今、そしてこれからの自分にできることは、この「嘘のないやる気と責任」を全うすることだと考える。
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オクトパス初日

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