暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

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Keyboardist Union@仙台 Vol.6 Live終了

Keyboardist Union@仙台 Vol.6 Liveが終了した。出演鍵盤奏者8名はKeyUni史上初。秋田から遠征の宮崎悠さん(halos)の出演、YAMAHA D-DECK2台にエレクトーンSTAGEA1台、それらの合計だけで200万円という機材攻撃など、またもやトピックの多い一夜ではあった。

回を重ねるごとにクオリティが上がり…、というのは連続ものの創作物を褒める場合に使われる常套句であるが、KeyUniがまさにそれだ。いや、主宰のひとりがそういうことを言うのはあまり良くないことだと自覚はしている。しかし今回もそのことを感じずにいられなかった。主宰しておいてナンだが、一体このイベントはどこまで凄いことになっていくのか空恐ろしいとすら思った。

非常に重要なこととして、KeyUniの凄さやスケールなどを語る上で、各鍵盤奏者が表現する場として設定している編成の大小はあまり関係が無い。D-DECK2台のツインキーボードで多彩なオーケストレーションを披露しただけでなく、岩手の誇る珠玉のリズムセクション安ヶ平勇人さんと佐藤弘基さんを従えた玉造美奈子さんであれ、STAGEA+ケーナという必要最小限の演奏者数でものすごいパノラミックな音世界を創出した高橋督君であれ、シンプルなロックバンドの編成でゴキゴキと音が聞こえるような骨太のバンドサウンドを叩き出した宮崎悠さんであれ、そのインパクトや音楽が語りかけてくる物語の深さや広さに大きな差は無いと考える。

もちろん各鍵盤奏者が描き出す音楽の方向性や波の大小は同じものではない。むしろ同じものが無い。だがそれは表層的な差でしかない。重要なのは、KeyUniのステージに立つ鍵盤奏者が例外なく「表現者として嘘をついていない」ことであると今回も強く思った。残念ながらKeyUniは出演者にギャラが発生するようなレベルではなく、会場使用料から出演者のアガリまで、すべて自分たちで売るチケットの売り上げだけで賄われている。だからこそ出演する鍵盤奏者のみなさんには「内容にいっさいバイアスはかけません。自分が良いと思うこと、やりたいと思うことを思いっきりやってください」とお願いする。表現の自由を保証すること以外にお礼のしようが無いからだ(もちろん演奏者同士の縁や新しい出会いなどのお金には替えられない"特典"もあるのだが)。

自分名義でステージに立ち、音楽を発信する以上、嘘をつくことは自殺行為である。幸いKeyUniに参加してくれる(鍵盤奏者に限らず)ミュージシャンのみなさんはそのことを骨の髄まで理解してくれている。だからこそ演奏される音楽の多彩さを生むのであり、客席に突き刺さりつつどこまでも広がっていく力のこもった音が発せられるのだと思っている。

などとクドクドと書いたが、会場入りからリハ、本番、打ち上げに至るまで寸分の隙もなく楽しい時間だった。また個人的にはTOY'S Specialのリズムセクションのおふたり、ドラムの安ヶ平勇人さんと演奏できたことと、ベースの佐藤弘基ちゃんと久しぶりに濃いエロ話音楽の話ができたことが嬉しかった。

玉造美奈子(TOY'S Special)
演劇音楽など多彩な作曲活動と演奏活動を繰り広げる大御所玉造美奈子さんが初登場。ライヴハウスで演奏するのは10数年ぶりだとのことで、かなり気合いが入っていたのであろう。やぎゆかさん(漢字わからず。すみません)とふたりでフルセットのD-DECKを2台持ち込み。KeyUniのコピー「音の万華鏡」をあっさり実現。ジャズスタンダードからオリジナルまで、華麗なオーケストレーションは圧巻。ある意味Keyboardist Unionと聞いて一般の方が想像される音世界はきっとこういう感じなのかもしれない。前述の特濃リズムセクションのおふたりのグルーヴももはや反則の域。このふたりを連れて来るという一事を見ても、玉造さんの本気度が伝わってくる。そこまで手堅くやらなくても(笑)!みたいな(笑)。

高橋督(a2cism feat. Marine)
まりんちゃんと言えばSonido del Vientoであり、高橋督君の鍵盤とケーナという組み合わせはまさにソニドそのものなのだが、やはり高橋督の色にきちんと染まっていたのは流石としか言い様がない。電子鍵盤楽器奏者なら誰もが一度は写実的かつ叙情的な音楽を試行すると思うが、彼らの演奏は「電子楽器を使った叙情的なサウンド」のひとつの完璧な解答を見る思いだった。複雑な数学の問題を最小限の行数で解いた計算式とでも言おうか。実は当日午前中、督君といっしょにいて当然昼飯を誘ったのだが、「まだ仕込みが終わってないんで」と一刀両断。さっさと帰られてしまいひとりでさみしくラーメンをすすったのだが、これだけ緻密で美しい打ち込みサウンドを聴かされては、昼食時のつれない仕打ちも仕方ないと思えてくる。脱帽。

宮崎悠(halos/from 秋田)
シンプルな4人編成のロックバンドだが、ピアノ(Roland RD-600)+オルガン(HAMMOND XB-1)の組み合わせによるエッヂの立ったアプローチは、実は以外にロックらしくない、と思った。これまでの経歴を聞くとそれも少し納得(彼に無断でそれを書く訳にはいかないが)。効果的にテンションが含まれたコードバッキングと粗削りなストラトのディストーションサウンドが絡まり、骨太なのにコクがあるロックサウンドになっていた。でも実はトラディショナルなオルガンのアプローチもあったりして、こんな手札の多いロックキーボーディストとお知り合いになれたのは素直に嬉しい。「明日仕事なんで」と打ち上げに参加されず。残念。

キリマル(キリマルカラー)
記念すべきVol.1に参加してくれたキリマル君。その時はVo.+Keyの打ち込みサウンドを軸としたユニットだったのだが、つい最近バンド編成に拡張。久しぶりに登場願った。過去に出演してくれた鍵盤奏者のその後の発展ぶりを見られることもKeyUniの醍醐味だと思う。打ち上げでも話していたが、キリマルカラーはごく普通のロックバンドでギターが担当することを鍵盤(主にピアノサウンド)が担当し、シンセサイザーが担当することをディストーションギターが担当している。実はこのスタイルは70年代には結構聴かれたバランスだと思うが、現代の音楽では多様化と細分化故にこのようなスタイルのアンサンブルは非常に珍しくなっている。でもこのざっくりしたバンドサウンドは文句なしに楽しいし、ステージで聴くと新鮮だ。まだライヴは2回目というのにちゃんとバンドになっているのも素晴しい。キリマル君、ますますがんばっている。

橋元成朋・服部暁典・水沼慎一郎(Harvelous)
今回過去出演者から加わってくれたのは水沼君。服部評して「仙台作曲界の隠し凶器」。彼の本業は作曲家なので、リハーサル中からリズムセクションのふたりに的確な指摘とアドヴァイスを送るし、音楽的なインプットも多大なものがあった。特に1曲目に演奏した「Comfortable Air」というフュージョンのパロディみたいな曲では、Aメロを服部が考案し聴かせ(この曲には譜面が無い。口伝である(笑))、それにBメロを加えてくれた。また2曲目の「Game Music」のアイデアも彼のものである。新関沙織(ドラム)と鈴木啓治(ベース)という若いふたりとの演奏も勉強になるものがあった。彼らの成長の助けにもなれば幸いである。

客席にはKeyUni名誉会長の北田了一さんも。岩手と秋田に占領されたかのようなKeyUni Vol.6ではあった。もちろん打ち上げは楽しかった。馬鹿話だけでなく大御所のふと漏らす本音もとても勉強になる。音楽を聴いたり演奏したりするだけが勉強ではない(話を聞くだけが勉強でもないが)。ご来場のお客様はトータル93名。お客様に感謝申し上げます。もしできれば、直接演奏者に感想を伝えてください。またイベント全体に関するご意見などいただけると嬉しいです。

最後に、制作全般を引き受けてくれているLivehouse ennのスタッフ星雅晴君、あり得ない量の機材転換や膨大に膨れ上がるオーディオアウトプットに対応してくれるennのスタッフ各位にも感謝。次回は1月28日!

keyuni6.jpg
左手前から時計回りに<キリマル、高橋督、水沼慎一郎、橋元成朋、服部暁典、玉造美奈子、北田了一(敬称略)

出演してくれたミュージシャンのみなさん、本当にありがとう。本当に本当に楽しかった!またぜひいっしょにやりましょう!
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| Keyboardist Union@仙台 | 23:38 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

いやもうありがとうございました。

今回もありがとうございました。
また一段と濃い一日になりましたね。

しかしながら収納場所に困る、このイベント(笑)
毎度なんとかなってるのがスゴイです。

その一つの理由にギタリストが少ないことがあると思います。
それも面白い特徴ですよね。

フルネーム、恥ずかしいです。ちなみに晴です。よう間違われますが。

| 星 雅晴 | 2010/08/22 00:44 | URL |

◇星雅晴様
すまん。確認してからタイプしたのに誤変換に気がつかなかった…。

今回も本当にお世話になりました。ありがとう。鍵盤奏者が自由に何かやろうと
思うと、同じ音域の(電子楽器よりも豊富に倍音を含む)ギターっていう楽器は
非常に気を使う存在なんですよね。バッキングとソロという、軽音楽という範囲
では似通った役割分担ですし。

| はっとり | 2010/08/22 07:40 | URL |

いつも刺激を頂いております。

ところでいつの間に名誉会長になっちゃんだろう…

玉造さんとはピアノが同じ師匠でした。次回終わったら連絡くださいませ!

| richard | 2010/08/22 08:02 | URL |

◇richard様
Vol.4でソロを弾いた時からです。

今回北田さんの(?)レギュラートリオが仙台で揃ったのも
非常に象徴的だなぁと思いました。「@仙台」の気概はこれからも
持っていきたいと思っていますが、今回のように生まれた縁が
どんどん仙台以外にも広がっていくのは素晴しい。

KeyUniを軽い気持ちで始めた時には、こんなに早くそういう輪が
生まれていくなんて想像もしていませんでした。以前「盛岡支部を…」
みたいな話をしましたが、もうなんか、場所なんかある意味どうでも
いいな、と。エネルギーの塊としてあっちこっちに移動すればいいや、と
思うようにもなりました。岩手でも楽しそうなイベントはたくさん
あるようですから、そちらのエネルギーとこちらのエネルギーが
化学反応を起こせばもっとすごいですよね。

来年、席を必ず開けておきますのでよろしくお願いいたします。

| はっとり | 2010/08/22 08:27 | URL |















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