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暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

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音がふたつ以上あったら作曲です

水沼慎一郎、高橋督、服部暁典の3人による音楽勉強会のようなもの「オレたちの旅プロジェクト」。高橋督の言う「大人の部活動」という表現が一番しっくりくるのかもしれない。課題を決めて作品を作ってくる+相互評価+音楽談義という内容なのだが、これが実におもしろくためになる。その「旅プロ(命名鈴木雅光)」、昨夜3回目の会合が暁スタジオにて実施された。

今回の課題は「デートの時に聴かせる音楽」。われわれは音楽を作る立場なので、「デートの時に聴きたい音楽」ではないところに注目。あくまで「聴け!」という立場なのだ。前回の課題で明らかになったが、やはりおもしろいほどに三者三様だった。

水沼の作品はピアノソロ曲だった。かわいらしい小品といった趣。個人的には水沼のこういう曲を聴きたかったんだよ!という思いだ。フレーズが有機的にどんどん展開していって、景色を定点に立って360度ゆっくりぐるっと見回しているような印象。

高橋の作品は、敢えて汚したリズムセクション(ビットクラッシャー的な汚し方。もはやメトロノームに近い)と深いリヴァーブがたっぷりかかった抒情的なメロディの対比が「プライヴェート感」を想起させる非常にロマンティックな曲だった。

ふたりとも理屈よりも気持ちを優先して作ったという。おもしろいのは水沼はそのような作り方が久しぶりなのに対し、高橋はやはり自分にはこういう作り方の方がしっくりくることを確認したということだろう。旅プロはわれわれにとって自己確認の機会でもあるのだ。

服部はどうなのかって?自分の曲はやはり甘い曲になった。基本的には現代的なブラックコンテンポラリーっぽい打ち込み+甘茶メロディもの。BPM86と言えばもうニヤッとする人もいるのではないだろうか。想定される場面としては彼女とドライヴに行き(行くよな?)、どこかおいしいお店で飯を食い(食うよな?)、ホテルに入り(入るよな?)、そろそろ帰らなくちゃなぁとホテルを出て、直行ではないけど彼女の家まで送っていくという場面でカーオーディオから流れているべき曲として作曲したので、根本にあるのは「やるせなさ」である。まぁそういう場面でやるせなさを感じるかどうかは人それぞれだが、オレはやるせなくなるんだよ!<だんだん恥ずかしくなってきた

ちなみに水沼、高橋両氏の根本にあるのは「まだ相思相愛になる前」という条件である。それに対して服部だけ「すでに関係ができあがっている」ことが前提だった。こういう差異もおもしろいねぇ。作曲にあたってどういう場面を切り取るかというところから作家の個性なんだよなぁという至極当たり前のことを確認することにもなった。

「服部だけエロい」という話からどうやってメロディを生み出すかという話になり、アレンジと作曲の関係に関する話になり、その流れでYouTubeやiTunesのライブラリを使ってJ-POPの最近のヒット曲を片っ端から聴いて分析してみた。これも三者三様の切り口でおもしろく、また心に残る言葉もあった。いろんな考え方はあるけれど、よい歌詞とよいメロディを聴きたいものだ。

次回の課題がまたすごい。まずハーモナイズすらされていなメロディ(というかフレーズというかモティーフというか)を各人考える。これは何小節でも何音でもかまわない。これを仕上げるのは別の誰かである。今回は高橋のモティーフを服部が、服部のモティーフを水沼が、水沼のモティーフを高橋が、ハーモナイズし曲として聴ける状態に持っていくのである。大冒険だし作曲の根源に抵触するような行為でもある。その話が出た時に服部が疑問に思ったのは「モティーフと言えば体裁は良いが、未ハーモナイズの音の並びを作曲と言っていいのか?」ということである。これに対して水沼が明快に一言。「音が二つ以上になったら作曲です」。高橋、服部、深く納得。高橋曰く「し~ずか~ぁなぁ し~ずかなぁ(つまり『里の夜』のメロディ)」という音の並びがあったとして、やはりそれはハーモニーを想起させるし、力のあるメロディたり得る」。

咄嗟にこういう返事ができる人は中々いないと思う。少なくとも普段から曲を作る行為について深く考えていなければ出てくる言葉じゃない。

それにしてもこの課題、それだけ力のある音形になってなければならないし、また同時に余白のあるものの方がおもしろくなるのは自明である。ちきしょ~アツシめぇ、なんて難しい課題を提案するんだ。モティーフの締め切りが11月18日。曲として仕上げる締め切り=次回ミーティングが12月2日。ひょえ~。
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