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暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

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試奏の鬼~こなれたデジタル鍵盤楽器を弾きたおしてみた~

過日久しぶりに仙台駅前にある楽器屋に立ち寄った。このお店はS90XSを購入した際にも試奏で(一方的に)世話になったお店なのである。試奏用シンセ実機の数ではおそらく仙台市内随一であろう。弾いていたら「遅れて申し訳ありません。これをお使いください」とドラムスローンを持ってきてくれた。店内の雰囲気、推して知るべし。

あれこれ弾いてみたが、ランダムに印象を書いてみる。

Roland RD-700NX(耳の高さにあるYAMAHAのステージ用パワードSPでステレオでモニター)
結論。買って損無し。10年使えるかも。間違いなく5年はメインマシンで使える。明らかにピアノサウンドが上質になった。一言で言えば情報量が多い。クラシック方面を購買層にしている部門からのフィードバックが良い形で製品になっているように想像する。細かいことを言えば鍵盤のアクションは自分好みではない。これまでのRolandのタッチとは異質で、鍵盤を押し込むにあたり徐々にテンションが上がるタイプ。これまでは一番最初にちょっとテンションがかかり、あとはストンと落ちるタイプだった。要はRD-1000時代そのままだったのだから大きな変化と言える。で、その変化をまだ消化しきれていないように思えた。でもそれは慣れで解消できる範囲だろう。Rhodes系はさすがの一言。これだけでも買う動機になり得る。反面クラビ系はちょっとあざといプログラムが多く(これしかないんだからと割り切ればまったく問題ないレベルではあるが)、そこはちょっと残念。思わぬ拾い物だったのがPad、Strings系。これまでの資産からおいしいところだけをピックアップ!って感じで、どれもこれも使う場面を想像できるくらい即戦力感100%。あとホイールタイプじゃないベンドとモジュレーションが気になるが、これは個人の好き嫌いの範囲だろう。

評価
90点/100点中
クラビ波形と鍵盤タッチがもうちょっと!それ以外に文句のつけようが無い。


KORG StageVintagePiano SV-1(モニター環境はRDと同じ)
以前試奏した時の印象は「鍵盤タッチさえ良ければなぁ」というものだったが、RDの直後に弾いてみるとあんまり気にならなかった。ロータリースイッチのクリックが硬いのは相変わらずで、ステージ上で咄嗟の操作には硬すぎるように思う。カチカチではなくガチッガチッと回るのだ。もうひとつ難癖をつけるとしたら音色のキャラクターで、YAMAHAはピアノを自社製造しているプライドからかハイクオリティなピアノ波形だし、RolandならRhodesブランドを一時期所有していたからか、こちらもエレピ波形のクオリティが高い。だけどKORGは?そう考えるとステージピアノなる製品を出すには「売り」が無いのである。だからわざわざ「ヴィンテージ」なのだろうか。ただし劣っていると思われる部分は以上。飛びぬけてすばらしい波形があるわけではないが、出音は平均以上。パネルの視認性も優れいているし、何よりデザインが最高にイカしている。電源スイッチがトグル型なのもシビレるぜ。知らない間に88鍵モデルも出ていてラインナップ的にも文句なし。内臓しているアンプシミュレータがこれまたゴキゲン。R&Bやファンク系のピアノ音源と割り切れば、比較対象はスエーデンからやってきた一連の赤いシリーズくらいしか思いつかない。このジャンルの巨頭YAMAHAもRolandもそういう音楽を演奏するには優等生すぎるのだ。使われるシーンを具体的に想像できるということは、優れた電子楽器である証拠だと思う。70年代な曲をバンドで演奏するならこれ1台とオルガンがあればほぼOKだと思う。

評価
100点/100点中(ただしR&B、ファンク系限定)
ぜひこのまま突っ走ってほしい。


KORG RADIAS(足元に置いたDTM用パワードSPでモニター。片側のウーファーは死んでた)
ステージピアノ部門に「売り」が無いと書いたが、本来KORGの「売り」は図太いシンセサウンドだと思う。いまだに1台完結型のハードウェアシンセに固執しているようだが(そろそろ趣旨替えか?)、機能を特化した音の素性の良いシンセに魅力があるメーカーだと思っている。で、RADIAS。MONO/POLYが正当に進化するとこういう感じではないかと思う。MS2000は過渡期だ。テクノやエレクトロなんてジャンルと相性が良いと思うが、個性がある出音だからこそ汎用性が高いとも思う。例えばスガシカオ的なアレンジを施した歌モノなんかにもフィットしそうだ。尖った音だけじゃなくフンワリなPadなども実力高し。これは波形の素性というよりもD/Aのキャラクターで得をしているのではないかと思う。リズム系の波形も積んでいるので、自動演奏機能を使ったリズム込みプログラムでチェックすると実感できる。フンワリPadもただこもっているのではなく、ちゃんとエッジが立っているのである。普通に今現在のアンサンブルで使うとなれば、この辺はぜひ備えていて欲しいキャラクターだ。でも自分なら今はNordWaveを買うだろう。「一芸に秀でている感」がより強いからだ。

評価
80点/100点中
優等生くんだががんばっている。Nordじゃないんだよな~となると選択肢はこれしかない。


Clavia NordLead2X(右側に置かれたRolandのKC-110でモニター。これイイね)
あれ?まだ市場にあるの?と思って弾いてみたのだが、あまりの出音の素っ気無さに軽く驚き。もっと太くて「オラオラ!どけどけ!」的なキャラクターだと思い込んでいたからだ。ある程度モニター環境との相性もあると思うが、意外とペラペラした音なのは間違いない。ただシンプルで王道に則ったエディットパラメータとパネルデザインのおかげで、エディットが楽しい。エディットと言えば、特にEVPのロータリーコントローラーの変化カーブがちょっと生理的に馴染めなかった。アタックやリリースと言った非常に繊細なパラメータの場合、回し始めや回し終わりのあたりのカーブは、できるだけリニアにしていただきたい。あの急に変化する感じは、もしかするとプログラムか、処理するCPU速度の問題かもしれないのだが(この辺、バイワイア方式のクルマの挙動に似ているなぁ)。NordLeadの魅力は何か?と尋ねられたら、今なら私は即答できる。それはフィルターとピッチベンドインターフェイスだ。フィルターの効きは強力で、かつ音楽的な変化をする。操作子は割り切っている感があるが、どれもこれもツボを心得ているので不満を感じない。またピッチベンドは「オレの中指の先のサイズを測ったのか?」と思うくらいフィット感高し。テンションや変化カーブも自然で音楽的。これでせめてモジュレーション系とディレイを別系統で搭載してくれれば、数時間立ったままで試奏し続けられるね、オレは。

評価
100点/100点中 もしくは0点/100点中(まったくフィットしない音楽もあると思う)
やはり孤高の存在だった。使い手を選ぶシンセ。


少し考えると、どうやら2010年の年末はデジタルシンセ新製品の谷間なのかもしれない。逆に言うと今市場に出ているシンセは熟成が進んだモデルだと言える。実際RDも700になってから3代目(?)だし、RADIASやNordLeadも十分に耳慣れた。弾き手のこっちも「新鮮さ」を排除してチェックできるので、この時期の試奏ってのは実は有効なのではないかと思えてきた。月並みな総論だが、これだけ「キャラを生かしたシンセ」「高機能なシンセ」が日常的に買えるようになった今こそ、弾き手の腕やアレンジのセンスが求められることを痛感。そして今回書いた機種がソフトウェアシンセに駆逐されるということも当面無かろう。結局「音が良いか?」「音楽的か?」という基準で鳴らすシンセを選んでいくと、2010年現在でソフトウェアシンセが優れている点は「利便性」だけだと思うのだ。
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| 機材 | 18:08 | comments:6 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

Alan pasquaのNordの使い方は久しぶりにぶっ飛んだ!あれこそ密かに目指していたエフェクトの掛け方でした。

歪みにフィルター、モジュレーション系全て楽しそうだったなあ。

| richard | 2010/11/19 18:39 | URL |

◇richard様
これ見たんですけど。
http://www.dailymotion.com/video/x222xa_allan-holdsworth-alan-pasqua_music

なにこの人。理想的!すげ。

最近フットイフェクタ熱がぶり返してきているのでした。

| はっとり | 2010/11/20 18:25 | URL |

そうそう!これ!!
まさにこれです!!!

ひそかに好きなピアニストです。

| richard | 2010/11/21 19:13 | URL |

◇richard様
う~ん。まだまだ色々やることがあるなぁ。

| はっとり | 2010/11/21 22:43 | URL |

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このコメントは管理人のみ閲覧できます

| | 2010/12/07 00:36 | |

Re: おひさしぶりです

◇線文字B様

ニフティサーブFMIDIKB、2番会議室「頑固親父の会」会員服部です。お久しぶりぶりぶり!!

いやぁそうですか。激動ですねぇ。ニフティサーブではいろいろなことを学びました。いやほんと。

Bionさん、ぶぅさんは私の親友となぜかダイビング友達なようで、意外なつながりとともにしぶとく
ご縁が続いております。このブログもぶぅさんがたまにコメントを残してくださいます。いやいや。

了解しました!掲示板にもお邪魔しますね。いやぁびっくり。興奮しちゃうな(笑)。

※懐かしい方から「管理人のみ読める」コメントを頂戴しました。

| 「頑固親父の会」服部暁典 | 2010/12/07 23:28 | URL |















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