2011.02.18 Fri
朱に交われば…
10万円未満の価格レンジのオーディオインターフェイスに対して私が持つ偏見も根っこは同じである。音が悪いのだ。普段から悪い音に接していると耳が悪くなると思っているからである。
もう10年くらい前になるだろうか。東京のとあるマスタリングスタジオで初めて立会い作業をした時のことだ。そのスタジオの音は実に無色透明の素晴らしい音だった。業務レベルのあまりにクリアで雑味の無いその音に触れた瞬間にまず考えたことは、良い音を聴いた!という感動ではなく、「こりゃごまかしが効かない!」という焦りだった。そのスタジオで仮編集したMDを流した時は、あまりの音の解像度の低さに悶絶もした。つまり録音・再生素材の音があまりにもロス無く再生されるので、録音した音質が悪ければ悪いままマスタリングに乗っかってしまうのだ。それがなぜ焦りにつながるかと言うと、自分の再生環境では良い音だと思っていても、業務レベルの機材で作業すると「そのレベルに達していない」のが明らかになってしまうかも=耳の悪いダメエンジニアというレッテルを貼られてしまう!、という危機感から来る焦りである。
事実そのマスタリング作業の時は、自分がOKテイクに選んだある箇所に謎のノイズが乗っていることが判明した。しかもそれは何回かプレイバックしていて気が付く程度のものではなく、パッと聴いて明らかに気が付くレベルのものだった。
おめえの耳が悪いんじゃないの?と言うなかれ。
そのテイクの確認作業は、とあるオフィスで下の上クラスのオーディオインターフェイスに安いAVヘッドフォンをつないでモニターしながら行ったものだ。自分は耳が良いと主張するものではないが、いくら少々騒がしい環境だったとは言え、いくらなんでも素材の異音をヘッドフォンで聞き逃すとは…。自分の名誉のために書いてみるが、聞き逃したのは安いインターフェイスとヘッドフォンのせいである(その機材をチョイスするところからおまえの責任?はい、承知しております)。このノイズ聞き逃し事件は自分でもショックだったので鮮明に覚えている。結果的にそのノイズは演奏者が足踏みした音らしく、演奏自体が良いので「これはアリ!」という判断でそのままOKになった。データ汚損ではなかったので扱った私の面目も保たれた(のだろうか。書いてて不安になってきた)。その後何度かそのスタジオでマスタリングに立ち会ったが、そういう理由からいつも緊張したものだ。
普段性能の低い再生環境にいると、それに慣れてしまう。「おまえのレベルでそんなコト言ってもたかが知れてるだろ」と言う声があるのは承知だが、かと言って自分からレベルを落とす必要は無い。自分にできる努力(なるべく良い録音を心がけ、良い再生環境で聴くこと)はすべきだ。
「何を大げさな」と思う方は、試しに同じ曲をmp3と例えば.wavで聴き比べてみてほしい。
| 機材 | 23:46 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑
ほぼ
この辺は意見の分かれるところでしょうが、私も同意見すね。違うところは、自分の趣味で聞く既存の音楽は、lameエンコードのmp3/192kです。というのは、このlameエンコードの192kと、wavもしくはaiffとの音の違いが分かるカーオーディオや普段使いのポータブルデバイスが無いからです(笑) もちろん、レコーディング関係はaiffで、ネットでの受け渡しは可逆圧縮FLACをたまに使う位です。
| みい | 2011/02/19 00:21 | URL | ≫ EDIT