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暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

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中学生とタイマン(ただし音楽で)

私の古くからの友人、名取牧人君。山形の中学校で音楽の先生をしているのだが、三年生の選択授業としての「音楽」で生徒に作詞作曲させて一曲完成させるという授業をもう何年も前から展開している。約半年かけてのシリーズ授業だそうだが、今まで曲を作ったこともない14,5歳の生徒に曲を仕上げさせるという授業は、生徒の達成感はものすごいものがある反面、指導する側としての労力はこれまたすごいらしい。それは容易に想像できるというものだ。この手のアプローチはここ最近の教育界では特に珍しいものではなくなってきているらしいが、名取君がすごいのはこのごく普通の中学生が作った作品(当然最近のJ-Popなどと呼ばれる音楽と酷似している)をちゃんとアレンジし、レコーディング(宅録の範囲ですけど)し、CD-Rの作品「Now and Then」として渡邉馨氏主宰のLabel I.O.S.からリリースしてしまっているの点である(私の作品もこのレーベルから出している)。こんなことやってる中学の音楽教師がいるだろうか。

この「Now and Then」と名づけられた音楽の授業、今回は二日間の特別授業として実施された。今までは半年かけてやってきた内容を二日間でやるのである。しかも二日目の午後には今回の授業で出来上がるであろう生徒のオリジナル曲を生演奏するのだ。つまりライヴである。わ~お。さすがにひとりじゃ無理だ、とばかりにLabel I.O.S.主宰にして名取君の大学の先輩にあたる渡邉馨氏、同じく名取君の大学の同期で現高校の音楽教師にして音楽集団I.O.S.のメンバー細井大成氏、某大学在籍の打楽器奏者・佐藤祐也君、そしてミュージシャンとして服部が呼び出された。つまり音楽科特別授業講師として派遣依頼が来たのである。中学生とマジでタイマンだぜ。

さて初日の9月7日。朝8時過ぎに会場の某大学に到着。懐かしい友人、否、本日の講師陣と顔合わせ。しかし平日の朝仙台から山形市内までっていうのは結構時間が読めないものですな。山形道を利用して遅刻を免れた。

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8:50から授業スタートである。全員中学三年生。選択科目として「音楽」を選択した生徒たち約30名である。今回の授業は何人かでグループを作り、グループで1曲仕上げるのだ。ざっと見ると圧倒的に女子が多い。

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彼らはこの前段階の授業ですでに曲の歌詞をつくってきている。が、当然「作文」と混同しており、そのままメロディが乗っかる状態のものはひとつも無い。初日の午前中はこのひとりひとり作ってきた歌詞から、実際にメロディを付けられる1曲分の歌詞になるように推敲することが課題である。大学なので個人練習用ブースが豊富にあり、そこにグループごとに散って行く。我々講師の役目はそのナビゲーション。煮詰まってる子供たちに「こうするといいんじゃない?」とかアドヴァイスするのである。

こう聞くと「なんだ、子供たちが作った歌詞やメロディに『いいじゃん』とか『もっとがんばれ』とか言うだけでしょ」と思われるだろう。いや、告白しよう。私もそう思っていたのだ(笑)!しかし始まって彼らと話してみればすぐにわかるが、彼らは誰一人例外無く真剣なのだ。しかも14,5歳と言えば自意識過剰の二乗みたいな時期である。そしてある意味自信満々なのである。彼らのやる気と自信をスポイルさせずに、しかし音楽として体裁の整ったものに如何に「仕上げさせる」か。実に難しいものである。なるべく本人達の思うとおりにさせてやりたいが、いつまでたっても最初の一行から進まないグループだとか、二行でAメロとBメロがまかなえてしまうくらい文字数の多いグループだとか、講師陣が入れ替わり立ち代りハッパをかけて進行させる。

午前中はあっという間に終わってしまい、メシタイム。服部、人生初の大学の学食デビューである。いやぁ、学食って楽しいね!おいしいかどうかはともかく…(笑)。

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トリの唐揚げ、チーズインコロッケ、冷や奴、ご飯、豚汁、スウィートポテト。メインディッシュが二つあるのが敗因か

午後はもうメロディ作りである。歌詞だってまとまってないところがほとんどだが、とにかく加速させる。メロディを作ると言ったって楽譜を書ける生徒はほんの少しなので、主に細井君と名取君が生徒の口ずさむメロディを採譜しまくる。

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でもこれがものすごくてさ。彼らのブースに赴きメロディできた?と聞くと「できましたぁ」とか言うから、じゃあ譜面に書いちゃうから歌ってみて、と言うじゃない?で、ふふふ~ん、とか彼らが歌うんだけど、毎回毎回メロディが違うの(笑)!しかも一度として同じメロディが出てこないとか、5小節、3小節なんていう奇数フレーズもばんばん出てくる。「Now and Then」シリーズのCDで聞いていたとは言え、あまりにも定石を無視したメロディを連発されて面食らう。

しかしこの「定石からはずれているところ」こそが「Now and Then」のおもしろいところ。はっきり言って、もう四半世紀も多重録音で自作曲を作り続けてきた自分や、アカデミックな知識として「作曲」を勉強してきた名取君を初めとする講師陣には、もう絶対にこんな定型を無視したメロディは作れない。「まさかこうくるとは!」の連続で、実にスリリングで面白い。しかし中学生達は今作っている自分たちの曲は、普段自分たちが聴いている「売り物としての音楽=定石だらけの音楽」と同等だと思っている。このギャップに気付かせることなく、「ちゃんとした曲を作った!」という達成感をきちんと味わわせるということも授業の目的のひとつだから、「こんなのダメだよ」は禁句である。なんとか「良く耳にするようなスタイル」に彼らの破天荒なメロディを乗っけてあげなければならない。ここが難しい。

結局初日中に詞とメロディが完成したのは3~4グループで、残りは明日の午前中に勝負となった。

授業終了後、明日のライヴ会場(笑)である中学校へ行き軽く機材をセッティング。もうこの段階でメンバーへとへとである。が!まだ終わらないのである。何しろ明日の作品発表の時にバックで演奏するのは我々講師陣である。考えてみて欲しい。よくある音楽専門チャンネルの「ジャパニーズトップ30」みたいな番組の7位から1位までの曲を想像してみてほしい。バンドサウンドあり、偽ヒップホップあり、アイドルものあり、である。今回生徒が作ってきた曲はまさにこれと同じ状況なのである。これらを一気に演奏するわけだ。あ~あ(笑)。

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実に珍しい、学校教材の机の上に乗っかっているRoland VSシリーズの図

本日の宿泊場所は名取先生のご自宅。移動する前にとりあえず晩飯を食わねばならない。渡邉馨氏は知る人ぞ知る蕎麦好き。人呼んで(ってオレが言ってるんだけど)「蕎麦クレイジー」なのである。名取宅に向かう前に山形市内の「梅そば」で腹ごしらえ。

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板そば。こいつを馨さんと細井君が頼んだせいで、オレの頼んだせいろは「すみません…、もうそばが無いんです」ということで田舎そばに変更されたのだった…。もっともそばの皮から轢いた田舎そばも絶品。災い転じて福と成すを地で行く展開

ここの蕎麦がうまいのはもちろんなのだが、試みに頼んだ厚焼き玉子がまた絶品だったのである。しかも閉店間際だったため蕎麦湯はそば粉をたっぷり含んだどろりとしたもの。こいつがまた絶品!蕎麦なんて普段は食べない私も夢中になって飲んでしまった。

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この後のリハさえ無ければマジでお酒を頼んでいたのに…

ようやく名取邸へ移動。この時ものすごい雷雨。あんなにたくさんの稲妻を見るのは初めてだ。名取邸は山沿いの新しい住宅地にできてまだ半年というバリバリの新居。名取君の奥様はやはり音楽科出身で、リヴィングにはど~んとグランドピアノが置いてある。しかも今回のセッション用に名取君秘蔵の逸品、オーバーハイムのOB-8も置かれている。私の世代の鍵盤奏者には夢のような環境である。

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これは狂乱のリハーサルの夜が明けて翌朝の図。ね?理想的でしょ?

もっとも今回服部はギタリスト、ベーシストとしての参加なのである。音大でピアノ弾いてた名取君や細井君の前でオレが鍵盤を弾く余地は無いのだった(大笑)。とにもかくにもリハーサル開始。

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瀟洒なリヴィングに機材をセッティングする、の図

コンクリート打ちっぱなしのモダンなリヴィングでのバンドのリハーサル音は、住宅地だというのに意外にも近隣の迷惑にはならないそうだ。折からの豪雨も幸いしたと言える(機材の搬入は大変だったけどな!)。

早速リハーサルスタート。さて何から手をつけたら良いものか。ビートルズ風味はあるはグ○イやラル○風味のニセロック風味はあるは、ジャニーズ風味はあるはで、リハーサルが進むにつれあたまがぼーっとしてくる。

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そろそろメンバー、壊れてきた、の図

それでも21時くらいに何となく始まったリハーサルは24時過ぎには終了。前日は「Keyboardist Union@仙台」のCDマスタリングのため午前2時就寝だった私としてはさっさと寝てしまいたかったのだが、十四代の蔵出吟醸とか生ハムとクラッカーとか白謙のかまぼこなどがテーブルに並んでいるのを見て「おやすみなさい」なんて言えるもんじゃない(笑)。

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結局寝たのはやはり2時過ぎで、マジで明日大丈夫なのか、と不安になりましたとさ。

この項つづく
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