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暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

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存在証明

とある建物の書籍販売コーナー。場所が場所だけに建築関係の雑誌の取り扱いが多く、さらにはサブカルチャー系と言えば良いのか、知的好奇心を駆り立てる内容の雑誌、本、ムックがかなりの割合で置いてある。私はその中からアニメに関する雑誌を手に取り少し読んでみた。私ですら名前を聞いたことがある有名なアニメ監督や制作会社のインサイド記事やインタヴューが小奇麗なレイアウトで並んでいる。

最初非常に興味深く読んでいたのだが、なんだか途中で気持ちが悪くなって本を置いた。この気持ち悪さは何か。判然としないまま並んでいる雑誌や本の表紙を次々と見ていくと、ファッション誌や建築系雑誌の見出しに不思議な統一感があることに気が付いた。それは「今はこれが旬だが、次に来る、あるいは来るべき潮流・思想はこれだ!」という作家不在の単なる評論的思想の断片達であった。こういう雑誌を誰が読むのだろうか。何となく想像はつく。つまり身奇麗であまり太っていない、見た目も年齢不詳ないわゆる「センスが良い」と言われる人達であろう。しかしそういう人達にとって作家が身を削って送り出した作品は、単なる好奇心の対象でしかなく、従って容易に評論・批評が成立する。そして作家の作品は商品として扱われる。

あぁ、オレは絶対にそんな扱いをする人間にはなりたくない、と強く思った。そういう人達は確実に私よりも良い服を着ているだろうし話題も豊富だろうし自分を良く見せる術も知っているだろう。そういう人達(いや、世間一般)にとって、私の作る音楽など模造品や自己満足の産物にしか聞こえないだろう。だけど自分は身を削って「現物」を残す方が良い。それをやらずに人の作品に対して「いいね」とか「あまり良くないねぇ」と言うのは簡単だが、そんなことは自分の身体が動かなくなってからで良い。音楽を作り続けること、演奏し続けることが自分の存在証明なのだから、こいつを止めるわけにはいかない。
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