暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

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鈴木雅光アレンジのストリングスセクションをダビングする

音楽におけるアレンジメントというものは本当に奥が深い。メロディを作るということは方向が違うが、それと同じくらい深い。

今度の新作に収録する曲の中に「Requiem」という曲がある。何年前か前にSolid Chamber Orchestraで演奏したきり放置していた。というのもライヴ用に突貫工事で作ったという裏事情もともかく、あまりに定型の、紋切り型の、つまり特段目新しい要素の無い曲だったからである。きちんと完成させようとプリプロダクションに手を付けてはみたものの、打ち込みで完成させるにはあまりにも「素の要素」しかない曲だなぁと感じていたのだった。

今回収録曲を粗選びした際、久しぶりにこの曲を聴いたら突貫工事で作っていた時のことを思い出した。すごく単純な音の並びから始まって、どれくらいドラマティックに盛り上げることができるかチャレンジしてみようと企んだことを。幸いSCOのメンバー(秋保太郎Dr.、佐藤哲Bs.、工藤孝信Key.)にかかれば当然ドラマティックになるわけで、曲調と相まってそれはむしろ過剰なほどだった(笑)。

そこでひらめいた。紋切り型の曲を紋切り型としてきちんと完成させることはチャレンジではないだろうか。アニメ監督神山健治の「最低限のお約束事を具現化するという事の大事さ(この言葉についてはここの(1)の最下段数行を読んでほしい)」という言葉を実現させるチャンスではあろう。

ということでRequiem、紋切り型のお手本としてパッと閃いたのが「ポール・モーリア」であった。イージー・リスニング。あの華麗なストリングスが欲しい。ポール・モーリアと言えば鈴木雅光である。彼は服部の小学校からの友人であり同時に作曲家にして教育者である。ポール・モーリアの作品は彼の音楽人生の起動ボリュームの大きな割合を締めていることを服部は知っている(笑)。そこでストリングスアレンジをお願いしてみたら、あっさり引き受けてもらえた次第。9月8日に雅光君が暁スタジオに来訪。打ち込み作業を行うことになった。

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作業途中でかかってきた電話に出るマエストロ(後ろ)

実はこれを依頼したのは7月下旬のKeyboardist Union@仙台の準備が本格化した頃である。お盆明け頃には…みたいな話が随分後ろにずれてしまった。と言うのも雅光君、「他人の曲の一部にアレンジメントアイデアを注入する」ことが初めてなのだと言う。随分迷って研究してくれたらしい。結局秋保太郎君のドラム、佐藤哲君のベース、林"巨匠"宏樹君のフルートがダビングされた音源を聴くまでラインが具体化しなかった。逆に言うと彼らの生演奏によって曲のフォーカスが一挙に合ったということでもある。生演奏の説得力というのは計り知れないものがある。

打ち込みそのものは30分くらいで終了。結局ポール・モーリア風味というよりは本人いわくクラシック寄りなストリングスパートができ上がった。思っていた通り曲の表情が一変した。地味な女の子が念入りなメイクによって変身する現場に立ち会ってしまったような気がした(笑)。

フレーズのアーティキュレーションをあれこれと検討してこの日は終わり。具体的なフェーダー操作は服部に一任ということになった。「すごく楽しかった。勉強になった」と雅光君は言ってくれた。本当にありがとう。オレも勉強になりました。
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