2011.12.25 Sun
千賀ゆう子・朗読公演「白痴」に音楽で参加した!
女優・千賀ゆう子さんの朗読「白痴(坂口安吾)」に音楽で参加してきた。
表現者たちが東日本大震災の被災者、被災地を芸術で支援するためにゆるやかに立ち上がったアートリバイバルコネクション東北(略してARC>T。あるくと、と発音)。この活動には多くの知り合いの演劇人などが参加しているし、友人のミュージシャンも参加している。私は考えがあって今はその活動に名を連ねてはいないが、心の底から応援しているものなり。そのARC>T、活動をより多くの人に知ってもらい、また震災以来の活動を総括すべくショーケース的公演やパネルディスカッションを繰り広げる「来て、見て、あるくと。」を12月24日から27日まで開催している。詳しくはウェブサイトをぜひ見てほしい。
その中の公演として千賀さんの「白痴」があるのだが、その朗読に音楽を付けてほしいという依頼が突如やってきた。コーディネイターであり依頼者である渡部ギュウさんは「あの、即興でいいんです。好きなようにやってください」と言う。ホントかなぁ。ま、インプロビゼーションのまね事のようなものならできる。それに以前より千賀さんのご高名やお人柄についての話を聞かされてもいた。第一線で表現活動を続けておられる方とステージにあがるのは絶対にプラスになるはずだ。つまりこれは千載一遇のチャンス。YESを即答した。
しかし恥ずかしながら私は「白痴」という小説を読んだこともないのだった。で、読んでみた。正直楽しい話ではないけれど、主人公の置かれた境遇とその心情にはすごくシンクロできる。というか自分自身である。手がかりはあるわけだ。そこで腑に落ちた。つまり千賀さんが女優として「白痴」を読み表現するなら、自分は自分の解釈で音楽として「白痴」を表現すれば良いのだ。BGMでもなくSEでもなく。ステージで全く違う視点から「白痴」をぶつけあって、何かが生まれればそれで良いのだ。そんなわけで当日持ち込む機材をYAMAHA S90XSに決めていくつか音色を選定し、ハーモニーをいくつかとフレーズの断片みたいなものをひとつだけ用意して当日を迎えた。

会場、エル・パーク仙台が入居する仙台三越定禅寺通り館遠景
千賀さんとお話しするのは本番当日開演の3時間前という状態。あいさつもそこそこにおそばを食べながら千賀さんがどういう舞台にしたいのかを伺う。幸いなことにやっぱり私が考えていたとおりだった。つまり音楽家として好きなようにアプローチしてもらって良い。それに自分も反応するから、と。私はなるべく音楽で説明しないで、千賀さんの声にだけ反応するようにするから、と話した。千賀さんの華麗な交友関係と公演履歴を伺ってちょっとビビったけど(笑)。


セットも何も無いステージなので、ケーブルの取り回しに一工夫してみた。足元に溜めるのではなく演奏者の後ろに長く引き回してなるべく機材機材しないようにしてみた
さて会場に戻ると他の公演のタイムスケジュールの都合から場当たりもそこそこに、シンセとマイクの回線チェックだけ行って(それすら開場時間内に行ったのでお客様の目の前でのチェックである)すぐに本番になった。千賀さんの声と表現はやはりものすごく説得力のあるものだった。弾き続けるのではなく、緩急を付ける意味でも無音の状態もある「弾かない演奏」を心がけていたのだが、いざ弾くのを止めるとただただ千賀さんの朗読を聞き入りたくなってしまう(笑)。理想としては「同じ時間軸上の異なる次元」的なものになるようにと意識してはいたが、やはり「朗読」を音で補完するようなイメージに落ち着きそうになる。これはちょっとまずいな、と。
そこでいざ演奏を軌道修正しようときっかけを伺っていると、千賀さんの朗読は実にリズミカルなのに気が付く。リズミカルというか、声の強弱やその発音タイミングが一緒になって実にグルーヴしているのである。だから息継ぎや間を置く瞬間が、丁度音楽におけるフレーズの休符やブレスのように聞こえる。こうなればあまりあれこれ考えず反応しやすい。だっていつもどおりということだから。フレーズやハーモニーで冒険することよりも、千賀さんのグルーヴに乗ることだけを考えて弾き始めたら、ようやく2本のレールのようになれたように思った。
ただやっぱり演奏中度々「ホントにこれでいいのかなぁ」という思いはあった(笑)。楽しく演奏させてもらっているがお客様から「千賀さんは良かったけど音楽がうるさくてねぇ」とか言われないだろうかと考えていた。まぁお客様の声を直接聞くことは叶わなかったが、スタッフの何人かから良かった旨声をかけてもらえてやや安堵した。千賀さんご本人からも特にNGは出されなかったので、まぁ何とかなったということだろう。千賀さんありがとうございました。
余談:ARC>Tはそもそも表現者だけでなく舞台スタッフも大いに関わっているムーヴメントなので、今回の公演のスタッフも大層素晴しい仕事っぷりだった。かゆいところに手が届くとはこのことか、と。彼らのような一本立ちしている舞台関係者と知り合いである自分がちょっぴり誇らしい(笑)。本当にありがとうございました。
謝辞:千賀さんとのご縁を取り持ってくださった渡部ギュウさん、石川裕人さんにお礼申し上げます。

会場を後にしたら「仙台・光のページェント」で大混雑だった
表現者たちが東日本大震災の被災者、被災地を芸術で支援するためにゆるやかに立ち上がったアートリバイバルコネクション東北(略してARC>T。あるくと、と発音)。この活動には多くの知り合いの演劇人などが参加しているし、友人のミュージシャンも参加している。私は考えがあって今はその活動に名を連ねてはいないが、心の底から応援しているものなり。そのARC>T、活動をより多くの人に知ってもらい、また震災以来の活動を総括すべくショーケース的公演やパネルディスカッションを繰り広げる「来て、見て、あるくと。」を12月24日から27日まで開催している。詳しくはウェブサイトをぜひ見てほしい。
その中の公演として千賀さんの「白痴」があるのだが、その朗読に音楽を付けてほしいという依頼が突如やってきた。コーディネイターであり依頼者である渡部ギュウさんは「あの、即興でいいんです。好きなようにやってください」と言う。ホントかなぁ。ま、インプロビゼーションのまね事のようなものならできる。それに以前より千賀さんのご高名やお人柄についての話を聞かされてもいた。第一線で表現活動を続けておられる方とステージにあがるのは絶対にプラスになるはずだ。つまりこれは千載一遇のチャンス。YESを即答した。
しかし恥ずかしながら私は「白痴」という小説を読んだこともないのだった。で、読んでみた。正直楽しい話ではないけれど、主人公の置かれた境遇とその心情にはすごくシンクロできる。というか自分自身である。手がかりはあるわけだ。そこで腑に落ちた。つまり千賀さんが女優として「白痴」を読み表現するなら、自分は自分の解釈で音楽として「白痴」を表現すれば良いのだ。BGMでもなくSEでもなく。ステージで全く違う視点から「白痴」をぶつけあって、何かが生まれればそれで良いのだ。そんなわけで当日持ち込む機材をYAMAHA S90XSに決めていくつか音色を選定し、ハーモニーをいくつかとフレーズの断片みたいなものをひとつだけ用意して当日を迎えた。

会場、エル・パーク仙台が入居する仙台三越定禅寺通り館遠景
千賀さんとお話しするのは本番当日開演の3時間前という状態。あいさつもそこそこにおそばを食べながら千賀さんがどういう舞台にしたいのかを伺う。幸いなことにやっぱり私が考えていたとおりだった。つまり音楽家として好きなようにアプローチしてもらって良い。それに自分も反応するから、と。私はなるべく音楽で説明しないで、千賀さんの声にだけ反応するようにするから、と話した。千賀さんの華麗な交友関係と公演履歴を伺ってちょっとビビったけど(笑)。


セットも何も無いステージなので、ケーブルの取り回しに一工夫してみた。足元に溜めるのではなく演奏者の後ろに長く引き回してなるべく機材機材しないようにしてみた
さて会場に戻ると他の公演のタイムスケジュールの都合から場当たりもそこそこに、シンセとマイクの回線チェックだけ行って(それすら開場時間内に行ったのでお客様の目の前でのチェックである)すぐに本番になった。千賀さんの声と表現はやはりものすごく説得力のあるものだった。弾き続けるのではなく、緩急を付ける意味でも無音の状態もある「弾かない演奏」を心がけていたのだが、いざ弾くのを止めるとただただ千賀さんの朗読を聞き入りたくなってしまう(笑)。理想としては「同じ時間軸上の異なる次元」的なものになるようにと意識してはいたが、やはり「朗読」を音で補完するようなイメージに落ち着きそうになる。これはちょっとまずいな、と。
そこでいざ演奏を軌道修正しようときっかけを伺っていると、千賀さんの朗読は実にリズミカルなのに気が付く。リズミカルというか、声の強弱やその発音タイミングが一緒になって実にグルーヴしているのである。だから息継ぎや間を置く瞬間が、丁度音楽におけるフレーズの休符やブレスのように聞こえる。こうなればあまりあれこれ考えず反応しやすい。だっていつもどおりということだから。フレーズやハーモニーで冒険することよりも、千賀さんのグルーヴに乗ることだけを考えて弾き始めたら、ようやく2本のレールのようになれたように思った。
ただやっぱり演奏中度々「ホントにこれでいいのかなぁ」という思いはあった(笑)。楽しく演奏させてもらっているがお客様から「千賀さんは良かったけど音楽がうるさくてねぇ」とか言われないだろうかと考えていた。まぁお客様の声を直接聞くことは叶わなかったが、スタッフの何人かから良かった旨声をかけてもらえてやや安堵した。千賀さんご本人からも特にNGは出されなかったので、まぁ何とかなったということだろう。千賀さんありがとうございました。
余談:ARC>Tはそもそも表現者だけでなく舞台スタッフも大いに関わっているムーヴメントなので、今回の公演のスタッフも大層素晴しい仕事っぷりだった。かゆいところに手が届くとはこのことか、と。彼らのような一本立ちしている舞台関係者と知り合いである自分がちょっぴり誇らしい(笑)。本当にありがとうございました。
謝辞:千賀さんとのご縁を取り持ってくださった渡部ギュウさん、石川裕人さんにお礼申し上げます。

会場を後にしたら「仙台・光のページェント」で大混雑だった
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| ライヴ | 22:07 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑