暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

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KORG KRONOS本気リポート・鍵盤編

旅プロ同道者である高橋督所有のKORG KRONOS。長期借用がかない今現在暁スタジオにある。楽器屋さんでの立奏、しかもパワードスモールモニターでの音だったので、いざ腰を据えて弾く機会は貴重だ。「鍵盤」「音源」「エディット」の3回に分けてインプレッションを書いてみたい(予定)。正直言って2012年初頭にオールマイティなシンセを1台買おうと思っている人に対して、このKRONOS以外は買うなとすら言いたい。本当にKORGの力作だ。

さて今回は借用のきっかけそのものとなった「鍵盤」について書く。オーナー高橋督は「音は素晴らしいものの鍵盤アクションにどうも馴染めない」とこぼしている。第三者の印象も知りたくなったのだろう。ダメもとで借用を願い出たらあっさりOKをもらった次第。今回は比較対象として私が所有しているYAMAHA S90XS以下(Sと表記)の鍵盤とKRONOSの鍵盤(以下Kと表記)を比較しつつ書いてみたい。

改めて暁スタジオにKRONOSを設置していつもの演奏姿勢(ドラムスローンにて座奏)で弾いてみると、鍵盤のアクションが重いことを再認識させられる。文章では説明しづらいが、押下げ時から底に付くまで均一なテンションであるような感触だ。対してSの鍵盤は、押下げ時にまず抵抗があり、その抵抗を超えると大したテンションは無く、底までストンと落ちる。鍵盤そのものの物理的な重さを利用してシーソーのような動きで落ちているという感触がある。

Sに限らずヤマハシンセ特有のこのピアノタッチについては、きちんとピアノを習得した人に言わせると「底を打つ感触が強くてなんかやだ」というものらしい。私はひとりのプロ鍵盤奏者のインタヴューと、ピアノ歴何十年という友人の作曲家から同じ要旨の感想を聞いたことがある。実際ピアノはフェルト付きのハンマーで弦を叩くわけだから、鍵盤が落ちきった時にゴツッという感触は本来無いはずだ。同時に複雑な機構を持つピアノのアクション全体が動き始める瞬間に抵抗があるのも自然な話だ。Sの鍵盤は「底打ち感」を除けば基本的にアコースティックピアノのアクションを良くシミュレートできていると言える。Kの鍵盤は落ち始めの抵抗感という意味ではSに一歩譲るが、押下げ切った時の感触では(確かに底打ちの感触はあるが)ヤマハに一歩リードしていると言えなくも無い。むしろ均一なテンションで鍵盤が落ちていく高級グランドピアノに似せようとしていると考えることもできる。

まとめるとKは「押下げ始めたら最後、常にテンションのコントロールが必要」。Sは「押下げ始めにだけ抵抗があって、あとは自重でスッと落ちる」。言い換えるとKは「弾き始めに力を抜き、底打ちまで力をかけてやる必要があり」、Sは「弾き始めに力をかけてさえやれば後は自重に頼って良い」ということになる。

この違いは離鍵後の鍵盤の戻り方の違いにもなっていて、常にテンションがかかっているKの方が余計な遊びが無い分戻りがやや早く感じられる。古くからのヤマハ鍵盤オーナーたる高橋督がのKRONOSの鍵盤アクションに馴染めないのは、こう考えてみれば至極当然と言える。特に彼は「鍵盤の返り(本文では戻りと表現)が早くて違和感がある」と言っている。私は30分くらい弾いていたら楽に弾ける力のかけ方がわかってきた。わかるとこれはこれで良い鍵盤のアクションである。もちろんオーナー高橋督もそんなことはわかっているのだろうが、特に強弱記号で言うところのピアノ~メゾピアノあたりで演奏する時この問題は切実であり、弾き慣れたタッチから変わってしまうと実にコントロールに気を使う。

別の見方をしてみる。KRONOSやS90XSをピアノの代用品ではなく、PCMシンセという本来の役目で使う場合だ。例えばKやS1台だけでライヴをやるとする(と言うかこれだけ重いシンセを持ち運ぶとなると、もう他にも持っていくのヤだ!コイツ1台で全部やるわ、となりがち)。するとオルガンのプログラムを鳴らすことも当然あるわけだ。ピアノタッチ鍵盤でオルガンプログラムを演奏するのは、古今東西多くの鍵盤奏者が苦しんできたケースだと思うが、あくまで私の好みの問題だがどちらかといえばKの方がまだ弾く気になる。S90XSオーナーの自分は、今本気でオルガン(KORG CX-3とかROLAND VK-8)を購入しようかと思っている。S90XS鍵盤では特にグリッサンドがぜんぜん盛り上がらないのである。腕の未熟さはさて置いて…。

個人的には生ピアノを作るスキルが無いKORGが、よくここまでピアノに似た鍵盤タッチにチューニングできたものだ、と感心している。好き嫌いを超えて、人工ピアノタッチとしての良回答だと思う。
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