暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

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OCT/PASS「方丈の海」音楽解説 「レコーディング後の再構築と音響処理」

劇団Theatre Group OCT/PASSの作品「方丈の海」。音楽について解説する。今回は曲の元になったセッションの詳細とレコーディング後の再構築、そしてミックスダウンについて。

■再構築
何度か書いているように、今回の音楽は基本的にDJ Korterとのインプロヴィゼイション・セッションが元になっている。10分程度のセッションを4テイクほど録音し、フレーズとして生かせる部分を曲として独立するように再構築していった。再構築とは言っても服部とKorterの時間軸がばらばらにならないように気をつけた。つまり、Korterが発するノイズと服部が演奏したフレーズには関係性があるのであって、部分的に切り取るにしても、両者の音は同時に鳴っていないといけない、という確信のようなものがあった。だってピアノはピアノ、ノイズはノイズというスタンスで編集し始めたら、音楽そのものが空中分解してしまうようで…。

ただしカーテンコール後のお客様の退場時間に流れている曲だけは、むしろこの縛りを積極的に無視した。終演後に作品を俯瞰しつつ振り返るための音楽なので、作品の中を流れる時間をカットアップするような意味で、一旦ピアノとノイズをばらばらにしてからまとめてみている。

■音響処理について
津波に飲み込まれていく人の見た光景とはどんなものか。魂となって海の底から見る地上はどう見えるか。本作の音楽の演奏はYAMAHA S90XSによる生ピアノ(と一部フェンダーローヅピアノ)のサンプルだけで行ったが、どれもこれもミックスダウンの段階でディストーション、オーバードライブ、ビットクラッシャー、フィルターで汚し、原音は留めていない。イコライザーも極端な処理をしたし、曲によってはオーバーにコンプレッサーもかけている。

インプロビゼーションセッションを終えて編集・ミックスダウンをしながら思った。今回の音楽はすべて「津波に呑まれゆく瞬間」に聞こえる音なのだ。耳に泥や海水が詰まった状態で聞こえる音とはどんなものか考えなければならなかった。それは決して耳に心地よい訳が無い。今回音響オペレートを担当された藤田さんにも訴えたのだが、心地良くない音をできるだけ「心地良くないまんま」に客席に聞こえるようリクエストした。幸いそれは達成されたと思う。その上で、舞台上では時折吹く風のように空気を揺らしていたと思う(それは藤田さんの功績だ)。
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