暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

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石川裕人さんのこと

Theatre Group OCT/PASS主宰者の石川裕人さんが亡くなった。2012年10月11日。私個人としては9月5日に「方丈の海」公演を拝見して、公演後の打ち上げの席で言葉を交わしたのが最後になった。

言葉の使い方が鋭いことはもちろん、その切れ味の良い文章や言動で「違う」と思ったことには正直に違うと言える人だった。私の音楽を気に入ってくださり自作の芝居の中で使っていただくようになって、時間をかけて作り手同士の話ができるようになったと思う。裕人さんの脚本に音楽を提供するという行為は、演出家(裕人さん)のオーダーに従って音を構築する作業ではなく、同じテーマについて芝居と音楽という異なる手法で表現する競技者同士になる、ということだった。同じテーマを表から見て脚本を書くのが裕人さんなら、裏から見て音楽を作るのが私だった。音楽を作る立場としては自由であり、だからこそ責任が重かった。

私はあまり多くの劇作家や演出家を知るわけではないが、そういう「ほったらかし」のアプローチを許してくれる人は珍しいのではないか。おかげでOCT/PASSの芝居に音楽を作るのは、やりがいのある制作現場だった。前述の「方丈の海」はそのような制作スタイルの、ひとつのピークに達したことを秘かに感じていた。つまりあまりにもこのスタイルがぴったりしすぎて、もし次があるなら一体どういうアプローチを取れば良いのか、漠然と不安に感じるくらいだった。

志半ば、という表現は好きではないが、「方丈の海」で達した部分と新たに挑戦したい世界を同時に見つけたことだろう。前者に対してはただただ敬服。後者については無念過ぎて発する言葉も無い。私だけではなく、そのあまりにも急な去り際に誰もが言葉を失っている。ベテランにしてご意見番、しかしそういう権威付けをもっとも嫌っていたのが裕人さんだった。そしてやはり、最前線で創作し続ける現場の人だった。

今は残された我々が、少しでも恥じぬよう創作し続けるしかない。

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