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暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

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キーボードケース考5

どういうレベルの演奏者であれ、楽器を収納し運ぶケースは頑丈な方が良いという話の続きの続きの続きの続き。88鍵マスターキーボードを収納するケースに求められる理想とは何かを、シリーズラストでようやく考察する。

とは言えそれは非常にシンプルな結論で、軽くて頑丈の二語に尽きる。持ち運べる自分の限界値と堅牢さとの兼ねあいで後は各々選らんでいただきたい。ただしそれ以外のところで実は重要な点がいくつかあると思っている。

■グリップ(握り具)が最低3方向にあること
キャスターとは反対側にグリップがあることは当然だが、88鍵モデルを持ち歩くなら2名で任に当たることも考慮してキャスター側にもグリップがあることは重要である。それも両手で持てるくらいの大きさの方が良い。とにかく88鍵のシンセは重いのだ。数段の階段の乗り越えるなど、片手では負荷が大きい場合も多々ある。その点SKB 1R6218Wはちょっと惜しい。

また全ての方向、面にグリップが必要とは言わないが、指を楽にかけられる程度の突起がボディ外側に付いているとなお良い。ひとりで40kg超えのキーボードケースを運搬する時は、その突起の有無がけっこうモノを言う。

■天方向に空間的余裕があること
この余裕が無いとケーブルやペダル類を別梱包で運ぶことになる。もしくは外側に大容量ポケットがあっても良い。SKB 1R6218WにYAMAHA S90XSを収納すると実はけっこう余裕があり、同社のダンパーペダルFC4をそのまま入れておけるのだ。いや、ペダルどころではない、HAMMOND Pro44が純正ソフトケースに入った状態で楽々収納できてしまう。おかげでS90XS関係のケーブル、ペダル類は全部収納できて最高なのだが、キーボードスタンドだけは当然入らない。惜しい。

■緩衝材が充実していること
前項にも関係するが、いくらサイズに余裕があっても、スカスカで肝心の楽器やペダルが中で暴れては意味が無い。SKB 1R6218Wは強力なマジックテープ固定によるキーボードコーナー2つと、好きな場所に貼り付けられるウレタンパッドが5つ付いてくる。



88鍵キーボードを持ち歩くということは、それなりに重要なライヴや現場が多い人だと推測する。もしくは鍵盤のタッチを重要視する人か。88鍵という数にしてもピアノアクションの鍵盤にしても、そういうキーボードはどうしても20kgを超える。オーディオアンプと同じで「重い方が音が良い」のだ。そして頑丈なケースも材質や付加される金具も頑丈にせざるを得ないので重量がかさむ。ずばり言うと、私は88鍵キーボードを自分で持ち運ぶミュージシャンが運搬で苦労するのは避けられぬ宿命だと思う。演奏するのに88個の鍵盤が必要であり、あるいはその鍵盤のタッチが演奏に大きな影響を及ぼすことを知っている人は、その宿命を受け入れるしかないと思う。

筆者のように毎回43kgの荷物を運ぶのは愚かだろうか。積み込みを工夫してセミハードケース、ソフトケースで重量をそぎ落とす方が利口だろうか。私には判断できない。しかし私はありありと想像することができる。階段でよろけて段差に激しくソフトケースに入れたS90XSを打ち付ける自分の姿を。ひしゃげたりサイドウッドパネルが割れ、フロントパネルが凹み、スイッチ類がところどころ取れ、2〜3の鍵盤が抜け落ち歯欠けになったS90XSの姿を。どんなに重い思いをしても、自分のメインシンセが壊れるのは耐えられない。

毎回ため息をつくのだが、それでもSKB 1R6218WにS90XSを入れて運ぶのである。

このシリーズ終わり
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