暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

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誰が何と言おうと「これは良い音だ」と言い張れる楽器

とあるイベントの「客入れBGM」を作った。「宇宙っぽいイメージ」でいきたかったので、縦にイメージを結びつけるリズムの類いは一切なく、アトモスフェア系とでも言うか、ふわ〜っとした音色をいくつか重ねると言うか。

特に2012年になってから、個人的にソフトウェアシンセがつまらない。別にバンバン買い足してありとあらゆるソフトウェアシンセを知っているわけではないし、道具なんだから「使いよう」なのだが。ソフトウェアシンセに慣れてくると、ハードウェアシンセを弾いた時の、指先の延長上に回路があるような、何かが実際に発振しているかのような感覚は新鮮だ。もちろんその感覚は錯覚だろうし、そもそも目の前の鍵盤と音を出す回路が直結している感覚は以前は当たり前だったものだ。また常に鍵盤を弾く環境にあるとこの新鮮さは薄まるかもしれない。

そんなわけで誰でもこの新鮮さを味わえるかと言うと、そうとは言い切れない面があるのだが、それでも実際にハードウェアシンセを回路を通してDAWに録音すれば、「味わい」とか「ムード」などというもの以上の「必然性」みたいなものは大方の人が理解してくれると思う。それは音色のキャラクターとは別の、回路を通すことによる元信号の変化という純粋に物理的な効果である。シンセ本体のアナログアウトからオーディオインターフェイスに入り、コンバータによってデジタルデータに変換されるまでの変化は、ソフトウェアシンセにはあり得ない効果である。昨今このアナログ回路の信号変化そのものをシミュレート、あるいは演算によって得るプログラムもあるが、そんな手間やお金をかけるなら、実物を鳴らした方がよほど早い。何よりその変化は「本物」だ。

今回作った曲ではRolandシンセしか使わなかった。JUNO-106、JV-880、JP-8000。結果的にアナログ、デジタル、シミュレートものと見事に全方位的に揃うことになった。これらにディレイとリバーブがあれば、とにかくゴキゲンだ。何も心配いらない。前述した回路による変化は、当然劣化や欠落という意味にも読み替えられる。しかしシンセサイザーとはそもそも合成器である。元音を持たない合成器が出すべき本来の本当の音なんて、誰が知っているのか。この世には数多の楽器が存在するが、シンセサイザーは「弾く人が良い音だと思えば、それは良い音」という理屈が通用する、数少ない楽器なのである。
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