暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

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修行のやりなおし

ある程度以上の規模(多分お客様が50名以上集まるくらい)の会場で生楽器を演奏しようとすると、「拡声」という作業が必要になる。楽器や歌い手の出す音をマイクで収音し、アンプとスピーカーを使って電気的に音量を増幅することである。そしてその結果各音の音質や音量を調整したり、場合によってはエコーなどの効果を付け足すこともまた必須の作業となる。これら一連の電気的音響補正のことを、一般的にPA=Public Addressという。音響補正することでもっと深くその演奏に関わっている場合、自負を込めてSR=Sound Reinforcementと言うこともある。例えばホールやアリーナクラスではミュージシャンの演奏と同等に非常に重要な作業になる。私が主に演奏するシンセサイザーや、音量的にひ弱な鍵盤ハーモニカなどは、この電気的音響補正無しには大きな会場での演奏はできないと言っても過言ではない。

ということで普段は補正「されている」立場なのだが、どういうわけか補正「する」立場になってしまった。コトが決まった経緯は省略するが、小規模会場でライヴSRのオペレートをすることになった。スキルの有無はやってみないとわからないのだが、ことオペレートの経験ときたらほぼ皆無である(誰かが仕込んだ機材を操作する羽目に陥ったことは何度かある)。仕込みの段階からお祭り騒ぎである。

まず会場には機材がほとんど無いという話だった。だからそれを貸してくれる人を探さねばならない。今回はKIWI Sound Worksさんにご協力をいただけた。ただ今回はレコーディングもせねばならず(と言うか最初はレコーディングのオペレートという話だった)、ライヴだけでなくそちらも睨みつつ機材を用意しなければならない。未経験者がひとりでプロミュージシャンのライヴSRってどうなの??と胃が痛くなる日々であった。

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だが見方を変えると、こんな楽しい現場は無い。演奏する人は皆優秀なのでマイク回線さえきちんと生きていれば、フェーダーを揃えてやるだけで音楽になるだろう。また今年になってようやく手に入れたMetric Halo Mobile I/O 2882とMacBook Proによる初のモバイルレコーディング現場でもある。以前秋保太郎君のドラムをこの組み合わせで収録したことはあったが、あの時は借り物だし今ほどこのシステムのことを理解していなかった。シンプルに録音できれば良いのだが。

その他にも楽器に立てるマイクをどれにするか考えるのも楽しい。もとよりプロクオリティのスタジオのようなコレクションは無いが、保有する(あるいは手配可能な)機材の中からベストな選択を考えるのはレコーディングでもライヴSRでも同じことだ。楽しい楽しい。

と現場に入ったのだが、現実はそう甘くは無かった。録音は割りとスムースに行った。しかしSRオペレートはさんざんだった。ミュージシャン諸氏には心労をかけてしまって本当に申し訳ない。言い訳はすまい。

反省点としては(次はあるのか?という話だが)「回線状況があやふやな現場には一式持ち込んだ方が楽」と言うことに尽きる。まぁアンプとスピーカーがあるならそれはお借りしたいが。しかしそうなるとやはり必要十分以上の機材が必要であり、機材とオペレータを別発注するよほどの理由が無い限り、「音響業者」さんに依頼するのがベストですよと言うありきたりな結論になってしまう。

一番難しい問題は、ミュージシャン自身の生音(楽器用アンプで鳴らすケースも含む)とヴォーカル用拡声だけ的な「簡易PAで済むレベル」と全部の楽器とボーカルをいったんミキサーに集める「モニター管理と外音管理が必要なレベル」の切り分けである。個人的な分水嶺は「マルチボックスとケーブルが必要になる会場と演奏規模」と言えると思う。だがなぜ切り分けが難しいかというと、ここに最も大きな要素「費用」が絡むからだ。こればかりは如何ともしがたい。そして費用面からの圧迫でもっとも効果に差がでるのが音響さん、と言うことが言えよう。
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