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暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

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「どこか懐かしい…」にご用心

誰にでも原風景や心に残る風景、それらにまつわる思い出があるだろう。それらは言うまでも無くとても個人的なものだ。ひとりひとりがそれを大事に反芻しながら生きていけば良い。時折「郷愁を誘う○○」とか「どこか懐かしい感じの○○」などと作品や表現者を紹介して、そういう個人的な記憶を体よく利用するかのような文言を目にすることがある。

それはずるい手法だと思う。

誰でも懐かしい風景や思い出を大事に持っているに決まってる。きっかけはこっちが出すからあとはそっちが適当に思い出をオーバーラップさせて補っておいてね、と言っているかのようだ。ラクチンな方法だなぁと思う。そういう音楽って大体似たようなアプローチをしているので一部の人には「安心のブランド」なのかも知れないが、真剣に音楽を聴く方にしてみればたまったもんじゃない。うさんくさい音楽を事前に察知するには有効な基準なのだが。

念のため書くが、そういう曲調が嫌いなのではない。「聴き方を限定するような惹き句」を付けることで、聴き手の心に届く過程を歪曲させる態度が嫌なのだ。自分に正直に作った曲がそういう曲調なら黙って堂々とそれを発表すれば良い。作品制作の動機がどういうものであれ受け手には関係ないことだ。伝えたいなら作品で伝えれば良い。

まぁかく言う私もライヴにおけるMCで作曲のきっかけや制作秘話を語ることはあるが、それは表現者と受け手が1対1で向き合うライヴという現場だから許されることで、過剰な説明は表現者の首を絞めるような気がするのだ。私は音楽を作っている。ここに音の記録がある。それでいいじゃないか。
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