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暁スタジオ レコーディング日記

ミュージシャン服部暁典によるレコーディング、ライヴ、機材のよもやま話

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新しいのか?どっちつかずなのか?

そろそろ本番が近づいてきた水戸黄門。公演の生演奏用にいつもの自分のライヴセットを持ち込むつもりでいたが、約半分の曲でカラオケもあることだし、いつものセットじゃ帯に短したすきに長しという感じがして決めかねていたのだが、高橋アツシ君の尽力とYAMAHAのご厚意で、発売からまだ2ヶ月足らずしか経っていないD-DECKというキーボードを貸していただけることになった。本日受領、早速弾いてみる。

さてこのD-DECK、リリース前からエンドースアーティストのステージなどで目撃されて一部では騒然となっていたのだが、実機を見たのは昨年12/1の大門雷舞のためのリハーサルでアツシ君が持ってきた時が最初である。同社のシンセと同じ波形を使いながらコンバータやその他の部品の差で数十万円台のシンセとは一線を画すエレクトーン(私の想像ですけどね)。その最高機種STAGEAをライヴキーボードとして足鍵盤や細かいコントローラー系を省いたものがD-DECKである(もちろんフットペダル類はオプションで追加でき、結局エレクトーン然として使用することも可能)。

最大の特徴はデフォルトで2段鍵盤ということだ。元がエレクトーンだから当然なのだが。実はこれはありそで無かったデザインである。ちょっと音色に凝ったインスト系のバンドで鍵盤楽器を担当する場合、正面2段の鍵盤は避けて通れない演奏スタイルである。が、昨今のマスターに成りうる大型鍵盤シンセはコントローラがパネル上面の割合大きな面積を専有しているため、筐体の上に筐体を乗せることが難しいものばかり。皆スタンドを工夫してなんとか2台の鍵盤を接近させるべく苦労しているのだが、D-DECKの場合それは心配ない。

とまぁこんなことはおそらくキーボードマガジンにさんざん書かれているだろうからこの辺にして、一ユーザーとして感想を書いてみる。まずやはり大きい。エレクトーンとしてはコンパクトな方なのだろうけど、ライヴ用に持ち出すとなると結構重いし容量もある。ケースに入れたりしたら一人で運ぶのはちとツライものがある。

20070118-D_DECK1.jpg
暁スタジオに到着。でかい

専用のスタンドが付いてくる。が、足鍵盤やペダル類を座ってコントロールすることが前提なのか、やたら高いのである。

20070118-D_DECK3.jpg
普通に立って私の腰くらい。立奏にはちょっと低く、座って弾くには高い

専用のイスを持って行くか数回確認された理由はこれか!と気が付いたが、普段使っているULTIMATE社のX型スタンドを最低高にしたら気にならない高さになった。

20070118-D_DECK2.jpg

鍵盤は完全にライトウェイト。ある意味弾きやすい。というかこと鍵盤と出音のタイミングに関しては流石ヤマハというのが正直なところ。世界的に見てもこのレスポンスは素晴らしい。

収録されている波形も素晴らしい。ちと優等生的な印象もあるが、要は広い範囲のプレイを受け入れるわけなので、むしろ演奏者の姿勢やセンスが問われるだろう。PCM(ヤマハではAWMだけど)系のプリセットキーボードという意味では間違いなく世界最高峰の音質だと思う。

では苦言を呈するとすれば?まずホイール系が全く無い!ピッチベンドもモジュレイションもホイールではコントロールできないのである。もうひとつは設定を含めた細かいエディット方法だが、重要なエディットは全てタッチセンス付き液晶画面で行う方法で、これははっきり言ってライヴ向けではない。しかもこのタッチセンスのレスポンスが遅い。エレクトーンという楽器のパフォーマンスは個人的には「仕込んでナンボ」だから、逆に入念に仕込むにはこの方法はわかりやすいと思う。しかしその場で音色を判断して有機的にインタープレイが絡まりあうような場面ではかなり足手まといなシステムになる。

エレクトーンは電子楽器としては相当に音が良い。だがアマチュアキーボーディストが気軽にライヴで使う楽器としてチョイスするか、というとそれはまずあり得ない。なぜならデカいし高価だからだ。ならばエレクトーンの高音質とプレイアビリティを重視した鍵盤の位置などのパッケージを廉価版で、しかも持ち運べるパッケージにすれば従来遠くて近い親戚みたいな関係だったアマチュアバンドキーボーディストという層を取り込めるかもしれない、という狙いはわかる。しかしこれではあまりにも中身がエレクトーン寄り過ぎるではないか。

な~んてことを思いながらしかし、かなり弾きまくってしまったぜ。何しろ今夜は全く取り扱い説明書を見ずに演奏してみただけでこんなに語りたくなってしまうのである。そんなわけでMIDIコントローラーとしての実力やリズム系の実力などはほとんど未検証だが、プリセットを一通り演奏してみるだけで、このキーボードの実力はイヤでもわかる。弾きたくなる音色満載でキーボーディストが弾きやすいように設計されている筐体。エレクトーンに向き合うなど実に30年ぶりだが、実に楽しい。

ということで明日は取説を読みつつ弾いてみよう。リズム系のサンプルもかなり良かった。無個性故の高汎用性みたいな音だが、クセのある個性的なリズムサンプルはサンプラーに任せた方が得策なので、これはこれで正しい音だ。このレポート、これからも続く!かもしんない!
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